EP.4-9 Unrequited 9
「あ、そういえば」
緑さんが思いついたように、僕の方へ振り返った。
「何ですか?」
「さっき、敬語じゃなかった」
「え?」
さっきは麻由美さんと奈々さんの手前、「設定」を守るために
わざと敬語を使わなかったのだが……
……やはり気分を害してしまったのだろうか。
「マユとナナがいるとき、敬語じゃなかったよね?」
心持ち、緑さんの表情が重い。やはりそうか……
「す、すみません……」
こんなに優しい緑さんを、怒らせたくなかった。
「一応、あのお二方には、僕は緑さんの“お兄さん”ってことに
なってますよね」
「そうだね」
「だから、お兄さんが妹に敬語なのは、おかしいかなって思って……
すみません」
一応、僕なりに考えた結果だったのだが。
「…………………………。」
緑さんはしばらく言葉を発せず、ずっと僕を見つめていた。