EP.4-8 Unrequited 8
「……あ、もしかして、電車見たことないの?」
緑さんは何故、こんなに僕の考えていることが分かるんだろう。
「ええ……あの場所には、なかったので」
「この家、駅からも結構近いから、電車の音聞こえるよ。
聞いてみて」
部屋の外に、耳を澄ませる。
微かに電車?の揺れる音が聞こえた。ガタンガタン……ガタン…
「聞こえた?」
「はい、なんとなく」
音の小ささを考えると、近いといっても結構な距離はあるように思う。
こんな遠くの音まで聞き取ることが出来る耳は、やっぱりすごい。
「じゃあ、今度、一緒に電車旅行しようよ!」
「え?」
「電車に乗ると、すごい遠くへ行けるの。目的地はそうだなぁ、……」
緑さんと一緒に旅行に行けるなんて、嬉しいけど……
……今から緊張してしまう。どこへ行こうか。
何なら僕のいた、あの畑を探しに行こうか。
きっとすごく遠いだろうけど、距離が長ければ長いほど、
緑さんと一緒にいられるということだから―――――――――
「……縁くん?聞いてるの?」
「えっ、ああ、すみません」
しまった。どうにも考え込むと、緑さんの話が聞けなくなってしまう。
悪い癖だ。
「まあ、今はまだ私も学校あるし、行くなら9月くらいかな。
楽しみにしてて!」
そんな僕を責めるでもなく、緑さんが僕に笑いかける。
いつものことだけど、この人はなんて優しいんだ。