あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: 麻疹騙り/投稿日時: 2015/08/01(土) 12:30:32
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果てで思いをり
EP.4-8 Unrequited 8
「……あ、もしかして、電車見たことないの?」

緑さんは何故、こんなに僕の考えていることが分かるんだろう。

「ええ……あの場所には、なかったので」


「この家、駅からも結構近いから、電車の音聞こえるよ。
聞いてみて」


部屋の外に、耳を澄ませる。

微かに電車?の揺れる音が聞こえた。ガタンガタン……ガタン…


「聞こえた?」

「はい、なんとなく」

音の小ささを考えると、近いといっても結構な距離はあるように思う。

こんな遠くの音まで聞き取ることが出来る耳は、やっぱりすごい。


「じゃあ、今度、一緒に電車旅行しようよ!」

「え?」

「電車に乗ると、すごい遠くへ行けるの。目的地はそうだなぁ、……」


緑さんと一緒に旅行に行けるなんて、嬉しいけど……

……今から緊張してしまう。どこへ行こうか。

何なら僕のいた、あの畑を探しに行こうか。

きっとすごく遠いだろうけど、距離が長ければ長いほど、
緑さんと一緒にいられるということだから―――――――――



「……縁くん?聞いてるの?」

「えっ、ああ、すみません」


しまった。どうにも考え込むと、緑さんの話が聞けなくなってしまう。
悪い癖だ。


「まあ、今はまだ私も学校あるし、行くなら9月くらいかな。
楽しみにしてて!」


そんな僕を責めるでもなく、緑さんが僕に笑いかける。

いつものことだけど、この人はなんて優しいんだ。
 

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