EP.4-7 Unrequited 7
「あ!マユ!電車!」
突然、奈々さんが腕時計を見て、急ぎ始めた。
「本当だ!行かなきゃ!緑、ありがとう!」
奈々さんが急ぎ始めると同時に、麻由美さんも慌てて身支度を始めた。
「そっか、もう帰るんだ。来てくれてありがとう!」
緑さんは、2人を笑顔で送り出す。
笑っていたが、その顔は少し寂しげだった。
「「おじゃましましたー!」」
2人は急ぎ足で出て行ってしまった。バタン、と大きな音で
ドアが閉まる。
「あの……お2人、なにかあったんですか?」
率直に気になった。
あんなに楽しそうだったのに、すぐに帰ってしまうなんて……
「ああ。家に帰ったんだよ、2人とも」
「家?その割には、急ぎ過ぎじゃないですか?」
2人の表情は、凄いくらいに急を要するようなものだった。
「あの2人、県外の大学行ってるから。電車の時間もあるからね」
「電車……」
畑のあったあの場所には、電車、というものが通っていなかった。
交通手段といえば車と自転車ぐらい。
だから、どんなものなのかが想像できなかった。