第29話:ちょうしんせい
星の夢「そのもの」は...もう戦える状態でなかった。
――ナゼ...だ...ドコデ私の計算ガ狂ッタノダ...
ソウダ!コレモ:生命体という存在ノ/せいデハナイカ!
カンパニーの永久なるハンエイのタメ...目障りでアル...∴シカシ、アンナにも抵抗ヲ...
生命体ノ分際デ...生命体ノ分際デ...ッ!!
コ ザ カ シ イ ワ
《BGM:Fatal Error》
星の夢は急に、アクシスアークスの元へ加速していく。
「何をする気だ...!?」
銀色の球体の天辺で、星の夢は静止する。
[マージ・マザー...>3,2,1...GO!!]
星の夢は、なんと銀色の巨大な方舟と合体したのだ。
「あ...ぁ......」
最大、最凶の敵は、脚のような支柱をひとつひとつ切り離し、宙に浮かび上がる。
大地に向け、大口径のレーザーを3発放つ。フレンズたちは、間一髪でかわした。
「嘘だろ!?あんなデカブツに...」「最強すぎるだろ...」
「...カービィを、信じるしかないのです」
ロボボアーマーは星の夢を追い、高度を上げた。
「きゃっ!?」
母艦内部にいた面々は、突然の揺れに驚いた。
「アクシスアークスが...浮上している!?」
「ほ、星の夢が...アクシスアークスとドッキングし、新たな星...そのものとォォ...」
その時、社長室だった場所の中央に、巨大なハート形のコアが現れた。
「これ...あいつの心臓なのか!?」
それを守るように、無機質な柱と宝石のようなパーツが。
「あれを壊して...これを止めますわよ!」
《BGM:主のいないインテルメッツォ》
雲よりもずっと高い場所で、カービィは巨大母艦と対峙する。
(今まで戦ってきた敵よりも、ずっとおおきい...でも、いや、だからこそぼくが止めなきゃ!)
スターロッドを遮二無二振るい、表面の一点を狙って攻撃する。
[バイナリー・ツリー...]
対して星の夢は、枝分かれする光線から光球を作り出し、炸裂させる。ロボボアーマーは光球のひとつをスキャンした。
「エスパーモード!“サイコサンダー...フラッシュ”!!」
紫のボディとなったロボボは、掌からの鋭い電撃で星の夢を狙う。
と、その時、アクシスアークスの装甲が、少しだけはがれた。その下に少しだけ、純白が見える。
「あの下...どうなっているんだろ」
《BGM:『SDX』銀河にねがいを:SHT》
「おりゃぁ!」「えいっ!」
上下の柱に挟まれたコアを、フレンズたちは次々破壊していく。
しかし、いくら壊しても柱の間のコアは再び現れる。巨大なハートも、トクントクンと音を立てるのみだ。彼女らにも少しずつ、疲れの表情が見えはじめた。
「これ...いくつあるんですの!?」
そう言ってカバが赤いコアを壊した時――。
[ううぅぅっっ......!]
『!?』それは確かに、ハルトマンの呻き声だった。
「もしかして...これって社長さんの...記憶......」
「...皆。発着場にアタシの専用機があるから、それで逃げましょう」
その言葉を聞いたみなが、スージーにとってそれが大事なものであることを悟った。
「こいつは...カービィが何とかしてくれることを、祈ろう」
全員で、エレベーターの元へと走る――ただひとりを除いて。
星の夢の装甲は、もう殆どはがれ落ちていた。
その時。カービィは飛んでくる装甲の破片に、誰かがしがみついているのに気がついた。
「カービィィ〜っ!」
「サーバル!?どうして...」
「あいつのてっぺんに、大きな心臓があるよ!それを壊せば...」
「...!よし、じゃあまず装甲を全部はがそう!」
サーバルはカービィの後ろに飛び乗った。
[ペタバイト・ロケット>]
巨大なミサイルが迫る。カービィはスターロッドでそれを破壊し、高火力のプラネットバスターにして撃ち返した。
バキィィ... 表の装甲が、全て壊れた。
「ぇ...うそ......だ...」
露わになったその顔を見て、カービィはこれ以上ない程戦慄した。
「カー...ビィ...?」
大きな青い眼の、気味悪いほど純粋なまなざし。猫のような、ω形に結んだ口。そして、流れ星のモチーフ。
「オミャアアアアアアアッッッ!!」
“銀河の果ての大彗星”のレプリカは、産声を上げた。