EP.4-1 Unrequited 1
人間としてこの世界にやってきてから、しばらく経った日の事。
「縁くん、今日は何を作ってくれるの?」
すっかり人間としての生活にも慣れて、
今では緑さんのお手伝いが出来るまでになった。
「今日は、トマトクリームパスタでも作ろうかと」
「わあ、美味しそう!縁くんのお料理、いつも美味しいからな〜。
今日も期待してる!」
「そ、そんなに褒めないでくださいよ……」
緑さんともすっかり打ち解けて、敬語を使わずに話してくれるように
なっていた。
僕はというとまだ……何となく、後ろめたくて……
「ん〜…美味しそうな匂い!」
クリームのいい香り。こんなに良い気持ちになれるのも、
鼻のおかげだろう。
人間の生活に慣れたとはいえ、まだまだ、人間のすごさには
驚かされることばかりだ。
「縁くんって、どこでお料理覚えたの?
人間になったばっかりなのに……」
「え?えっと……」
僕ら、キャベツが、唯一人間の手に触れる機会である「料理」。
昔から僕は、人間がどんな風に僕らを「料理」するのかが、
気になっていた。
「……せっかく、手が使えるので、何か役立つことに使いたくて」
その手を使って、いろいろなレシピを調べたりして……
本当はすべて、緑さんの役に立ちたかったから……