あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: ヒガシノ/投稿日時: 2023/11/05(日) 22:45:18
投稿者コメント:
腹痛が痛いです。
第三章。
面白いかどうか知りたいので、面白かったらぜひコメントください。
つまらなくともコメントくださって構いません。
アドバイスでも大歓迎です!!
号笑 第三章 「夏野陽毬の希望の光」
「あっ!いた。夏野さん!!」
突然後ろから声をかけられて驚き、びくりと体を震わす。
「あ…は、い…?なんでしょう…」
ぎこちなく返事をしながら恐る恐る振り向くと、そこにはお手本のような無表情の男子生徒がいた。
「ちょっと話したいことがあって。」
「…え…?」
何々?というか誰?見たことあるような気もするけど…。ところで私何かしたっけ…?話って…?
困惑しながらも、私はなんとかこくりと頷いた。
放課後の、誰もいなくなった二年三組の教室。2人だけでいると、不思議といつもよりいささか広く感じられる。
「話というのはね」
相変わらずの無表情で、男子生徒は話を始めた。
「昨日夏野さんが廊下で笑っていたことについてなんだけど…」
それを聞いて、どこかで見たことがあると思ったら、昨日笑いながらすれ違ったあの男子か、と勝手に納得した。
「え…?あ、ごめんなさい…迷惑でしたよね…ごめんなさい…」
あの大声は迷惑だったという話がしたいのだろうか。とにかく申し訳ない。謝っておこう。
「いや、そうじゃなくて…。いじめられてるんじゃないかなって思って…」
…予想外の答えが返ってきた。どうしよう。
答えられないまま間抜けヅラを晒してぽかーんとしていると、
「こんな聞き方でいいわけがなかったよな。ごめん。」
すごく無表情で謝られた。まるで口だけが動く人形のようだ。短く切られた前髪一本すら動かない。どこ見てるの?その目…。全てを見通すような目をしている。いじめのことを知っているのも、全てこの目で見通されていたからだろうか?
「いじめじゃなくても、何か辛いことがあったんじゃない?聞かせてくれないかな。」
隠そうとしても無駄だと、感情の読めない黒い目が言っているような気がした。
「…え、と…その…いじめ、られてる…んです。」
小さな声で呟くようにして言った。相変わらず人とはうまく話せない。だから友達がいないのだ。詰まってばかりで、ぼそぼそとしたこんな声、ちゃんと聞き取ってくれただろうか。
しかし、彼はしっかり聞き取ってくれたらしく、開口一番
「なるほど。俺の読みは当たってたわけだ。」
と言い放った。
やはり読まれていたらしい。恐ろしい人だ…。
「えっ…なん…で、わかっ…たの…?」
「だって友達いなさそうだし。こういう人が学校生活で悩むことって大体いじめとかでしょ」
「あ…そ…うですか…」
なんと友達がいないことまで見通されていた。
私は少し恥ずかしくなって頰を赤らめる。
「…ところで、誰にいじめられてるの?」
「…!」
この質問には答えるのに少し躊躇った。
これを言ってしまったら、もっといじめが激しくなるのではないだろうか?

「ちくりやがって!」
「このドブス!」

罵詈雑言を吐くあいつらの姿が目に浮かぶ。
想像するだけで恐ろしい。
「ごめん、なさい…言えない…です…」
「う〜ん。そっか。まあ、いきなり声かけてきた人に話せることじゃないよな。ごめん。」
またしても無表情で謝っている。よくわからない人だ…。
「今日は付き合わせてごめんよ。これも生徒会の仕事だからさあ」
椅子を直して、立ち上がりながら彼が言った。
「生徒会…?」
「うん。ああ、まだ名前言ってなかったや…。俺、猫井。よろしく。」
「猫井さん…あ!」
思い出した。確か、2年生の学年代表だったはず…。一学期の生徒会選挙の時にちらりと見かけた。珍しい苗字だからなんとなく覚えていたのだ。
「ん?どした?」
「いやっ…な…んでもない…です。」
「そう。…ところで、また話聞いてもいいかな?夏野さん。」
「…えっと…はい…」
「そっか。ありがとう。」
「あの…今回話したことって、先生に言ったりするんですか…?」
私はずっと気になっていたことを口にした。もし、先生に言うのならば、あいつらにチクったことがバレてしまう可能性がある。
「いや、言わないよ。」
「…え?」
「先生の力を借りなくても解決する方法はあるからね。」
「そう…なの?」
「うん。それに、下手に先生に伝えて、いじめが悪化したら怖いだろ?」
まさに私が思っていたことだ。また見通されているのだろうか。
「そう…ですね」
「じゃあ、夏野さんが一番傷つかない方法で助けるから。また話そう。」
相変わらず無表情だけど、言葉には暖かさがこもっていた。顔が全く変わらないのが少し不気味だけど、きっといい人なんだろう。
『また話そう。』
友達も恋人も、きょうだいもいない私は、この一言に少しドキドキした。今までは話す約束をする人なんて全くいなかったから。

今まで、いじめは終わることはないと思っていた。きっと中学を卒業するまでずっと続くのだと絶望して、毎日枕を濡らす日々を過ごしていた。
しかし、やっと今、光が、希望が見えてきた。
猫井くんも出ていって、1人だけになった教室に、窓から夕陽がさしていた。
今は何もかもが美しく見える。

続く

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