あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: 白蝶/投稿日時: 2012/10/30(火) 00:56:56
投稿者コメント:
設定上は通常風音が書いてることにしてますが、今回は特別で白蝶が描いてる設定です。しかも無断(
あと、どうにも人形っぽいですがこれは球体としてかいてます((

流血・暴力的な表現など、年齢制限はない程度ですがあります。苦手な方は見ないでください。
何より超駄文です。

…おk?避難しましたか?無論中傷は受け付けませんよ?
【風音】の過去編
――興味本位でした。
――何も言わない風音の過去が気になっていたのはあります。でも、それも興味です。何も言わないから、もっと気になったんです。どんなに聞いても困ったように苦笑する風音は何も教えてくれなかったんです。
――…風音が過去見鏡なんて持ってきたのが悪い、なんていいわけでしかありません。でも、見てしまったのなら書くべきです、そう思ったんです。
――これは、私が垣間見た風音の過去。――


風音「ママ!ママ!?」

赤いリボンがなくて一瞬わからなかったその幼い子供は、赤渕の眼鏡をかけて痙攣する母を見て悲鳴を上げていた。風音だとわかったときにはその幼子は遠くを見てびくびくと体をはねかす母から視線を離すと逃げるようにその部屋を出た。
その部屋から父らしき声が聞こえる中、子供用の部屋で風音はうずくまって泣いていた。急な母の変化についていけなかったのかもしれない。
母の病気で風音の家族は急に都会に越すことになった。別れの言葉を誰かに告げる間もないまま、長期休みの間に決まり、その長期休みの間に越した。

――けれど、風音の母はその長期休みが明ける前に、病院で病死した。白い部屋に白い服を着た人たちが母の目を閉ざさせるのを目を見開いて見つめた後泣き叫ぶ風音の様子が頭から離れない。

沈み込んだ風音は転校した小学校に登校する。少し時が流れたのか、秋ごろのようだ。ランドセルをしょって、学校へ向かう風音はずっと下を向いていた。
学校についても皆風音を避ける。まるであたりまえのようにくすくすと笑う。

「風音ちゃん♪」

そんな風音に声をかける女の子は、優しい笑顔ではない。にやにやとしてる。風音も明らかに表情が変わった。恐怖と悲しみ。そして潜む怒りと憎しみ。

風音「…おはよう」
「おはよ♪…またきたんだね、空気が穢れちゃう」
風音「ッ…!!」

ぎり、と絶えるように歯を食いしばると、風音はその子を無視して自分の席に荷物を置いた。席について本を読み始める。無視されたその子はつまらなそうに女の子たちの輪の中に戻っていった。
それから、普通に授業を終えた。…いや、正確には先生以外には”存在していない”ように扱われていたが。

その出来事は、お昼が終わって5時間目の授業になったときだった。家庭科なのか、裁縫箱を持っている子供たちは教室の後ろで遊んでいた。風音は家庭科室に移動する時の列に並んでいたが、男子も女子も半数以上は一向に並ばない。しばらくいらだたしげにしていたが、不意に風音は顔を上げた。

風音「ちょっと、ちゃんと並んでよ!!」

誰も上げなかったその声を上げた瞬間、異常なほどに静寂が訪れ、全ての視線が風音に向いた。まったく臆せずにそれを睨んだ風音に、静寂が消え、代わりにひどい言葉が飛び交い始める。

「ふざけてんのか!?」
「ありえねぇわ、ほんとうに死ねよ」
「しんじらんない、風音ちゃんおかしいよ」
風音「…なんで…さっさと並ばないのが悪いんじゃない!!」

責め、批判する言葉の中にもっていた裁縫箱を持つ力をこめた風音は叫んだ。そして、その裁縫箱を振り上げたかと思うと、自分を囲む男子を思い切りそれで殴ったのだ。
当たったのはたった一人だったが、それは絶好のチャンス。ほかの男子たちがわめきながら、風音を突き飛ばした。風音の頭が机の角に強く当たる。

風音「…ッ!!つゥ…!!なによなによなによ!!死んじゃえ、皆死んじゃえぇー!!!!」

風音は流れる血が床に滴るのも気にせず叫んだ。立ち上がって殴りかかる。泣きながら暴れ始めたのだ。
そこにようやくといっていいタイミングで現れた先生は風音を押さえ込み、暴れたり噛み付いたり蹴ったりする風音を引きずって教室から連れ出した。
そして、傷の手当をされながら風音はしばらく、一方的に悪いと決め付けられしかられ続けた。

「私は悪くないもん…ねぇ、そうでしょ?星華…」

たった一人、誰もいない学校の屋上の隅、風に吹かれながら風音は誰かに言った。”たった一人”なのに、まるで誰かいるように。
言いながら、風音は高いフェンスをよじ登り、フェンスを乗り越えていた。屋上から校庭で遊び笑ってる人々を見下ろす。

「そうだよね。…どうせ皆死ねばいいって思ってるんだし、死んじゃおっか…。…、もし私が死んだら、星華は悲しんでくれる?……。そっか…そうだよね…まだやることもあるもんね…」

呟き続ける風音の発言の間は、まるで本当に誰かと会話しているようだった。そんな中、先生が屋上に現れた。説得するような言葉に従うフリをして再びフェンスの中に戻る風音。その瞳はどこまでも暗く深い、闇だった。
”妄想癖””暗示””多重人格””キチガイ”
さまざまな言葉で風音を言い表せることができる気がした。妻を失った父は風音にキチガイだと繰り返す。人間じゃないと繰り返す。
いつしか、風音は何年もの間、自分は人間じゃないんだと暗示をかけ続けるようになった。そして、存在しない存在と話す。暗示をかけてキチガイになった多重人格で妄想癖のある、まだ幼い、少女。

風音が変わるのは、12の頃のこと。
私と出合ったときは喧嘩ばかりして泣き虫で病弱で荒れやすく、手にはいつも、赤い切り傷がいっぱいあった。


 白蝶「いま思えば、風音はひとりで耐えて、誰も傷つけないように自分を犠牲にして、一人でいようとしてたんだよね…」

 白蝶が流したしずくは誰にも知られずに消えていった。

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