EP.3-8 Days To Live 8
苗字も決まったことだ。
僕がこれから1年間住まうことになる部屋を、案内してもらった。
「縁さんのお部屋は、こちらです」
緑さんの部屋は淡いピンクで統一されていたが、
この部屋は黒を基調にした、大人っぽい部屋だった。
「へえ、ここが僕の部屋ですか。随分綺麗ですね」
「今は誰も使っていないんですが、
一応掃除だけはしてるので」
確かに、小綺麗な部屋だ。
人がいないという割には、塵一つ見受けられない。
きっと緑さんが、こまめに掃除をしているのだろう。
「クローゼットとかタンスの中には、
服もまだ少し残ってます。
自由に着ていいですよ……あ、一度、着てみましょうか」
そう言うと彼女は、タンスから何着もの服を取り出してきた。
実際の名称は分からなかったが、かなり現代的で、
お洒落だった。
畑にいるとき、こんな服を着た人は見たことが無かった。
僕が服に袖を通す前に、彼女は僕の肩にシャツをあてがい、
側に置かれた全身鏡に目をやった。
「……うん、肩幅は問題なさそう。多分大丈夫!」
彼女は僕の肩をぽんと叩いて、部屋から出て行った。
「着れたら、呼んでくださいねー!」
扉越しに、彼女の明るい声が聞こえた。