クラスの人気者、マルク
いつの間にか夏は終わり、あっという間に秋が来た。
あかねは、休み時間の学校の窓の外から外を眺めていた。
「あーあ、することねぇなぁ〜…なんか楽しいことないかな…」
そう呟いたその時、後ろから誰かに肩を叩かれた。
「わっ!?誰だよ!びっくりし……、、あ、お前は!!」
そこに立っていたのは、道化師のアイツ。
マルクだ。
「久しぶりなのサっ!」
「わわわっ!?びっくりさせんじゃねぇよ!ん……?マルク、なんでお前がここにいるんだ?」
マルクは期待していたかのように言った。
「あかね〜、今のあかねにいい知らせだぜ〜」
愛想のよいマルクの声だ。
「いい知らせ?なんだそれ」
マルクは言った。
「こんど、1996年の方で遊園地にフードコートが新設されるんだってサ。食べるのが好きなあかねなら嬉しいよな?」
「もちろんだぜ!!って、メモしとかなきゃ忘れるじゃないか!……ネームペンどこだ!手にメモしなきゃ!」
相変わらず慌ただしいやんちゃなあかねを見て、
「仕方ないやつだなぁ…」
と呟くようにマルクはニコッと笑うのだった。
休み時間のチャイムが鳴った。
階段から、外で遊んでいた子たちが駆け上がってくる音がする。
「マ、マルク!!誤解招かれると嫌だからな、、ここにでも隠れとけ!!」
あかねは自分のランドセルに強引にマルクを突っ込んだ。
「うわぁぁぁ!狭いのサぁぁ!」
「静かにしてくれ、授業が終われば出してやるからな!」
「あーぁ、わかったのサ〜…」
かなり乗り気でないようだ。
やがて、先程の子たちが教室に入ってきた。
あかねの素速い対応で、マルクの存在はバレていない。
あかねは安心したように息を吐き、次の授業の準備をした。
給食の時間。
クラスの子たちが流しへ行って手を洗っている間に、あかねはランドセルからマルクを出した。
「とりあえず、窓から逃げ……」
「あかねちゃん、何してるんだ?」
クラスメイトの声がして、あかねはドキッとした。
とっさにマルクを抱いていた手を緩めてしまい、マルクが床に落ちた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!落とされたら痛いのサァァァァ!!!!!
何すんのサあかね!」
「え、、、?今の声何?」
クラスの子たちが一瞬にしてざわついた。
あかねは、気まずくなって顔は真っ青だ。
「マルクの存在がバレた…やばいな、面倒なことになる…」
しばらく沈黙が続いた。
クラスメイトのひとりが、あかねのすぐ横からマルクを覗いてきた。
その子の顔がぱっと明るくなった。
「え!?何こいつ!可愛い〜!!」
あかねは、「え…?」
と呟いたが、次第にクラスメイトのみんなもマルクに目をうばわれている。
「可愛い!どこかで見たことある!」
「友達なりたい!マルクだっけ?」
「おーい、マルクこっちきてよー!」
マルクはもうあっという間にクラスの人気者だ。
「ちょ、ちょっとまってなのサーーー!」
「マルク、大人気でよかったなぁ!」
あかねは、そう言ってマルクの頭を撫でてあげるのだった。
マルクの人気はいつまで経っても切れなかった。