第20話 2人の過去 part1
「イ、イシスと友達…それ本当!?」
「…はい」
「だけど、どうしてあんなことに…?」
「…私のせいです。私が…あんなことさえしなければ…」
*
「これは、私とイシスが幼い時にあったことです…」
『私は将来、魔法使いになるんだ!』
『はぁ?魔法使い? そんなのお前がなれる訳がねぇんだよ!』
『きゃあっ!』
男子がイシスを馬鹿にし、そして押し倒した。このときのイシスは無力な存在だった。男子達は笑いながら去って行った。
『くっ……』
__馬鹿にしたこと…後悔させてやる…!
イシスは心の中で男子を恨んでいた。その一方、少女がイシスに声を掛ける。
『イシスさん…』
『あ、秋桜さん……』
秋桜はイシスに『あなたはなれるはず』とそっと囁いた。彼女にとっては、そう信じてくれる人がいてくれて嬉しかったそうだ。彼女は友達が1人もいない。秋桜だけは救いの手のような存在だった。
『ありがとね…秋桜』
『良かった元気になって。イシスは意外とポジティブな人ですから暗くなってほしくないです』
『『あ……』』
『私達、気が合いそうね』
『そうですね。しかも呼び捨てしているというのに否定しないなんて…』
『そりゃあ、そっちの方が見苦しいよ』
イシスは苦笑していた。それを秋桜も同感し、笑っていた。
『私も秋桜さんなんて、なんかあれですから…』
『…こんな私と話してくれてありがとう、秋桜。』
『お礼を言うのはこっちです。イシスって努力家だということを改めて知れましたし』
『え、もしかして見てたの? 私が本を読んで勉強してたこと』
『はい。だって、私も魔法使いになりたいって思っていました!』
『良かった、仲間がいて(秋桜といて本当に幸せ…)』
イシスは本当に秋桜と会話したことが偶然とは思えていなかった。彼女にとって秋桜だけが話し相手だった。
*
「結構いい人じゃないですか…」
バンワドは過去のことを聞いて今のイシスが本当にイシスとは思えていなかった。
「確かにそうだな…。そこから何が起きたが分からないが、何故…そなたのせいだと言い切れるのだ?」
「…それは、この続きに分かります……。私がイシスにちゃんとした気持ちを届けられなかったせいで……」
*
何年間もイシスは秋桜と会話をし続けていた。しかし、とある夜にとんでもないことが起こってしまう。イシスは1日でも早く魔法使いになる為に本を持ってきていた。自分の部屋に行こうとした時、父母が何か会話していたのを耳を傾けて聞いてみることにした。
『イシスは魔法使いになりたいとか言っていたがあれでいいのか? あいつは…なれる訳などないというのに』
『どんなに努力をしたとしても………に願わない限り不可能なのに』
『えっ………』
イシスはショックを受けて本をドサッと落としてしまう。本を落とした音に気付き、開ける親だった。
『イシス、今の話聞いてたのか?』
『えっ、なんのこと?』
外見はすっとぼけているようにしていたが心の中ではもやもやしていた。今まで行ったことが全て無駄だったというのか、そんなことしか考えていなかった。
『そうか。それよりも、早く寝なさい。明日は早いだろ』
『あっ…明日、遠足か。準備していないっ!』
イシスは慌てて自分の部屋へと駆け込もった。理由としては準備ではない…さっき聞いた話だった……。
__努力をしても無駄だって言うの?!
__私のやってきたことは全て無駄だったというの!!
イシスは感情を抑えきれないほど怒りに満ちていた。そして…怒りに満ちたとき……声が聞こえたような感じがした。
『誰…? 誰かいるの……?』
『どこにいるの! 返事をしてよっ!!』
イシスは叫ぶが、声は彼女にしか聞こえていなかった。そう、それが…彼女の憎しみから始まったのだ……。