サタン
地下。それは人の目も光も行き届かない場所。
私はそこにいる。私の名はサタン、ベガの国王だった。八年前までは。
八年前、八方十字軍の手によって、ベガは滅ぼされた。
国王だった私は捕らえられ、地下牢の雑居房に入れられた。
自分の国の牢屋に入れられるほど屈辱的なものはない。
ある日私が独房に移される時、同じ雑居房に居た兵士に声をかけられた。
「いつか脱獄して、必ずここにいる兵士、そしてあなたを助けに来ます」と。
彼はアイン。最後までベガの為に戦ってくれた勇敢な兵士。
信じるほかなかった。
八年の間に、地下に蔓延る気に飲まれ、体が突然変異した。変色もした。
独房の格子さえも埋められ、光はどこからも入らない。完全な孤立。
もはや虚無感に浸かるしかなかった。
「私は・・・誰なのだ・・・?
」
今になると私の行方を知るは、ごく少数な国民と、地下牢にいる兵士のみだろう。
だが久しく名前を呼ばれておらず、体も元のものではない。
暗闇のなか、「自分」という存在がとても曖昧なものになっていく。
今、私は誰なのだろうか?
今信じられるのは彼しかいない。
私は生き延びなければならない。
彼にその名を呼ばれるまでは。