図書館は静かである。
「ふーん。人間共はこんな書物を作って自己満足してるのか。」
パラパラとページをめくる音が響く。
図書館は静かである。
遥か天空、神の住まう宮殿ヴァルハラ。
宮殿内にある図書館の掃除をしていた少年は、たまたま見つけた本にケチをつけていた。
「人間は神を信じてる愚か者。」
小さく呟いたつもりだった。
しかし図書館には人もいなく、とても静かだったため外に聞こえている事に少年は気づかない。
「…まあいいや。仕事しなきゃ。」
図書館は長い間掃除していなかったのか、埃の山ができるほど。
せっせと少年が掃除をしていた時、図書館の重い扉が鈍い音と共に開かれた。
「おっ?仕事にせいが出てるじゃないか。ユベロも大人になったな。」
扉を開けた青年は、ユベロと呼ばれた少年の作った埃の山を見て驚く。
「こ、こりゃあすげぇな…。どんだけ掃除してなかったんだ…。」
ユベロは埃の山に驚く青年に呆れる。
「どんだけって…当番なのにフウが掃除してないからじゃん。」
「あ、そうだな!俺が掃除してなかったからな!はっはっは!」
フウと呼ばれた少年の開き直りを見てユベロは神様変えた方がいいんじゃね?と思ってしまった。
このフウという男、相当なサボり魔なのだ。
掃除の時は知らん間にエスケープされているし。
朝食、昼食、夕食の当番を守ったためしがない。
なにより風という四元素の内の1つを司る為、捕まえようとして追いかけても向かい風が邪魔して追い付けないなんてこともしょっちゅうだ。
しかし、ただ1つ弱点がある…それは
…。
「こちょこちょ。」
「あっ!?ちょ!?や、やめ、はははは!!」
そう、彼はこちょこちょに弱いのだ。
神様なのにこちょこちょが苦手な神などいるわけ…。
「いるわけ…なによ?」
居た。オーディンだ。雷神族を司る神オーディンもこちょこちょに弱いのだ。
「ユベロ!ちゃんと仕事しなさい!フウも邪魔すんな!」
雷神族全体の特徴として全員キレやすい。
それはオーディンも含まれる。
「フウ!食料の調達頼んだじゃない!行ってきたの?」
フウは目をそらしながらこっそり風をコントロールしていた。
「あ、ああ!行ってきたぜ!ほら!」
と言うとフウの目の前に食料がずらりと並んでいるではないか!
「ほらどうよ!俺様だってやれば出来る子だぜ!」
カッコつけているのが見え見えの台詞をオーディンは華麗にスルーをし、食料からじっと目を離さないでいた。
「こ、これ…この食料は…!?」
何やらとんでもなく驚いてるようだ。
「だろ!最高だろ!」
フウが指でバッチグーをする。指…?
「うん!確かに最「その食料見たことある。」え?」
最高ねと言おうとした時、ユベロが口を挟んできた。
そしてユベロは、毒舌と憎たらしさをあわせもち、言って良いことと悪いことの区別が分からない子供。次にとる行動は…。
「それ、この前僕が調達してきたやつだ。」
その言葉を最後まで聞くや否やフウは全身に風をまといエスケープを試みた…が。
「ライジングボルト!」
オーディンが放った魔法は見事フウに直撃。バランスを崩して転んでしまった。
「おお…やべぇぜ。死亡フラグ立ちまくりだ。」
オーディンから出る殺気に気付かないものなど居るわけがない。
「フウ!貴様に罰を与える!覚悟はいい?」
オーディンは笑顔を浮かべているが目が笑っていない。
そんな雷神は逃げようとするフウにもう一度魔法を当てて気絶させてから、フウを引きずって図書館を後にした。
「ふぅ。」
ため息が図書館に響く。
やっとうるさい奴等がいなくなった。
「いけない…仕事やらなきゃ。」
ホウキで床をはく音が図書館内に響く。
今日も図書館は静かである。