最強の武器を作りたい!
プププランドの平和を取り戻す四人の勇者がいた。
その名は、「カービィハンターズ」
攻守に長けた剣士、ヒーローソード。
最強パワーの重戦士、ヘビーハンマー。
回復サポートの学士、ヒールドクター。
時間を止める魔法使い、マジックビーム。
どれもカービィだが、それぞれ異なった力を持つ。
強さは多くの住民に知れわたっているらしいが、カービィハンターズは今、苦戦しているようで・・・
「強い攻撃が来そうだよ!みんな、気を付けて!」
そう声を上げたのは、ヒーローソードだった。
みんなはその言葉に、返事をするように頷いて、また攻撃を始めた。
しかし、それも束の間だった。
「あれは・・・!」
ヒーローソードが、思わず声にしたものだったから、みんなには聞こえていない。だが、みんなもきっと、同じだろう。
「敵が目玉のような見た目に・・・!」
マジックビームがつぶやいた。
そしてその目玉は、ものすごいスピードで、カービィハンターズを襲った。
その速度に逆らうことができず、ヘビーハンマーが倒れてしまった。
その後、回復薬をためていたヒールドクターも、逃げる前に、倒されてしまった。
マジックビームが蘇生しに行く。だが、その最中に、倒されてしまった。
一人残ったヒーローソード。
正直、絶望していた。
でも、諦めたらそこで終わり。
そんな気持ちで、ヒーローソードは、敵に襲いかかった。
ーーだが、普通にやられた。
カービィハンターズは、広場に戻ってきた。
みんなはもうクタクタだ。
「何度戦っても勝てない・・・」
ヒールドクターが、弱気な発言をした。
多分、リーダーであろうヒーローソードは、みんなを元気づけようと、なにか励ましの言葉を考えた。
「でも、今回が一番いい結果を残せたじゃん!ちょっとずつでいいから、相手の弱点とかを探して・・・」
ヒーローソードの言葉を聞いてる勇者は、だれもいなかった。
静かな時間が流れる。
「あのさ」
静かな空間に、一つの声が響いた。
「他の敵を倒したりするのもいいんじゃない?ヒーローソードの考えも、とってもいいと思う。あとぉ・・・」
いつも寝てるのに。どうして今は起きてるのかーー
でも、決して嫌な思いなんてなかった。
静かな空間の中、一人で喋ってるのは、バンダナワドルディだ。
バンワドは、少しためた、言葉の続きを声に出した。
「みんなの欠点とかを見つけるのはどう?ジョブを変えたり・・・は流石に良くないよね」
ヒーローソード以外は、バンワドの話を聞いていなかったが、この言葉になぜか三人の勇者が食いついた。
「ヒールドクターの力が弱すぎるのは、結構あると思うんだけど!」
ヘビーハンマーがそう言った。
「なっ・・・!というか、ヘビーハンマーはすぐ攻撃くらって倒れちゃうよね!僕の回復薬に届く前に倒れちゃうんだもん!救いようがないよ!」
対抗するように、ヒールドクターが言った。
「まあまあ・・・ヘビーハンマーの力に勝ることはできないし、ヒールドクターがいないと、すぐに戦いが終わっちゃうし、二人ともとっても強いと思うよ・・・」
喧嘩を止めるように、マジックビームが言った。
「みんなの欠点を見つける時間なんでしょ?どうして止められなきゃいけないの!」
「君はヒーローソードの欠点でも探していてよ!」
喧嘩のテンションは、マジックビームにもとった。
マジックビームの様子を見るに、欠点を見つけるのは、反対派のように見えた。でも、何か言いたそうな気がした。
「ジョブを変えるっていうのを聞いて思いついたんだけどさ、みんなの武器を合体させたものとかは、作れないのかなぁ?」
マジックビームの言葉に、ちょっと驚いた。
喧嘩を止めるとか、真面目だと思ってたのに、一番ありえない考えが出てきた。
でもみんなは乗り気だ。
「たしかに!」
「その案があったね!」
ヒーローソードは、気づいたら空気になっていた。
ちょっとぶっ飛んだ発送に、追いつけていないようだった。あと、お腹が減ってたのもあるだろう。
「え?武器を合体?流石にそれは・・・」
ヒーローソードが発言する前に、バンワドがそう言った。
ヒーローソードは、首を動かし、同意を示した。あれ?でもカービィに首って・・・細かいことは考えなくていい。
「えぇー!いやぁでも、大丈夫だよ!だってあのマホロアだよ!?僕、信頼してるもん!」
マジックビームが、明るい声でそう言った。気づいたら、マジックビームも人が変わったかのようになっていた。
「うーん、じゃあ一旦マホロアに相談する?」
みんなに存在を忘れられる前に、この一言を発した。
正直、相談なんて無駄な気がする。
早く再戦したいと思ってる。ジェムリンゴを食べてからーー
みんなは一ミリも否定することなく、店主マホロア二相談した。
「あのーすみません!新しい武器を作ってください!」
いつもより、比べ物にならないぐらい瞳がキラキラしてるマジックビームが、大きな声で言った。
「エット・・・主語が足りないのカモ」
戸惑いながらマホロアが言った。
「あーごめんなさい!あの!新しい!種類!の!武k」
「チョット待って!この時点で理解が追いついてないカラ、一旦黙って!」
マジックビームの言葉を遮り、マホロアがそういう。
「この四人のジョブの力をすべてまとめた一つの武器がほしいということだよ」
ヒーローソードは、あくびをしながら言った。
どうでもいいんだろうということが伝わってくる。
「あー、ナルホドね・・・オモシロそうだネェ!やってみようヨ!」
「・・・え?」
バンワドとヒーローソードの声をかき消すかのように、
「やったぁぁ!!さっすがぁ!」
三人の喜ぶ声。
あのとき漏れた声は、呆れたわけではなく、とにかく衝撃的だったからだ。
でも、改めて考えてみよう。
ここはプププランド。
みんな、いつもこんな感じだ。
だから、ここは成り立ってる。
勇者になって、重い荷物を背負っているのに、少し考え方が固くなってしまっていたのだろうか?
そう考えたヒーローソードは、笑顔を作り、この話のおかしいところを忘れることにした。
「ソレで、どうするノォ?どんなトコロから始める?」
「まずは、形となるものを作ろう!一つの武器を作って、そこから能力をいい感じに入れていけば・・・」
積極的なマジックビームに尊敬するヒーローソード。
バンワドは、ヒーローソードを見てびっくりしてたが、それなのに、笑顔を浮かばせたーー
「そうだネェ、まず、ハンマーは重いから形にするノハよくないカモ!」
「となれば、ビーカーとかはどう?とっても軽いよ!」
「ビーカーは、どうしても攻撃力が低くなっチャッて・・・」
「じゃあ、杖になるということだね!」
「ウーン、それがいいと思う!」
「あれ?剣も強いよ?」
「剣は遠距離がナイから失格!」
ガーン、とヒーローソードから聞こえるような気がしてきた。
「それじゃあ、ジョブを合体させていくヨ!」
「地味な作業になりそうだね・・・」
こう言ったのはーー別に関係ない。
ヘビーハンマー、ヒールドクター、マジックビームは、突然広場で鬼ごっこを始めた。
「僕たちには関係ないことでしょ!僕たちがいたって、どうすることもできないんだから!ってうわあ!ヒールドクター、早すぎるよ!」
ヘビーハンマーは、まるでリーダーのようにこう言った。
そして、ヘビーハンマーはヒーローソードに向かってくる。
何も持ってないから、足は遅くなかった。
ヘビーハンマーは、ヒーローソードに触れた。
「はい、次は君が鬼だよ!」
唐突すぎて、何にも追いつけない。
しかし、この感覚、何度も感じたことのあるような・・・
「あはは」
バンワドがクスッと笑った。
あのとき、声を出したときは静かだったのに、今はとても賑やかだった。
「僕はね、キングD・マイントに勝てない理由は、なかよし度が足りなかったんだと思ってたの。フレンドメテオでエクセレントを取っただけで、あんなに叫んでいたのを見てさ・・・喧嘩だって、よくするし。でも、今は違うね。もしかして、ずっと仲良しだったりした?喧嘩してたのは、仲が良かったから?・・・あはは」
途中で、誰も聞いてないことを知ってた。それでもつぶやき続けた。
「ヒーローソード、そろそろ目を覚ましなよ」
自分の名前を呼ばれて、ヒーローソードはバンワドの方を見た。
「きっと、ジェムリンゴがたくさん食べれるよ。あと、マキシマムトマトとか。変だったかもしれないね。でも、これは昔にあった出来事なんだよ。あはは、覚えてないかな?結局、マホロアは武器作りを失敗したんだよ。面白いよね。あ、ヒーローソード!ちょっと待って!あとちょっとだけこの世界にいて!・・・この景色、覚えておいてよ。もう永遠に出会うことなんて、ないんだからさ。この夢を見れたのは、君が誕生日だから。32周年の、永遠に訪れない日だから。ヒーローソード!ヒーローソード!待っ・・・ううん。短い時間だったけど、楽しかったよ、とっても」
バンワドの言葉を、一つも聞き逃さず聞いていたが、理解できたことはなかった。
そもそも、バンワドは、こんな性格じゃなかったはず。
バンワド、これは夢なんだっけ?
どうなの、教えてよ。
この世界は、何なの?
ーーーーーー
「う、うーん・・・」
さっきまで寝ていたのかーーいつも目がさめたときの感覚と同じだ。
「カービィ!」
さっきまで聞いてた声がする。
周りを見渡す。
目に写ったのは、さっきまでのように、装備をしていない、仲間の姿が写っていた。
やっぱり、さっきのは夢だったのだ。
何故か認めたくなかった。
たとえ同じことを現実世界でしたって、あんな幸福感を得られることはないと、心のなかで確信していたからだ。
……現実世界ーー
「お誕生日おめでとう!」
ボーっとしてきたときに、仲間の声が聞こえる。
遠くから、ジェムリンゴをたくさん持ったバンワドが近づいてくる。
そして、この小説の最後の言葉を放った。
「お誕生日おめでとう。32周年の君の誕生日は、永遠に訪れない。だから、今日を思う存分楽しもう」