エリーシャ編
エリス「じゃあ頼みますわよ、エリーシャ」
片手でペンを動かしながら、書類に目を向けたままもう片手でエリーシャにカゴを渡すエリス。
今やっている仕事がまだ時間がかかりそうだったので、果物をエリーシャに取ってきてもらおうと思ったのだ。
エリーシャ「分かりましたわ、エリスお母様」
リースと同様に母想いのエリーシャ。
エリスの手伝いをすれば週1回の楽しみの時間が更に増える。
それはエリーシャにとってなによりの褒美であり、嬉しいものである。
外に出ると回り一面が暗く、炎魔法を出しながら進まないとろくに前にも進めない。
エリーシャが住む場所は1年中暗く、陽が射すことはない。
そのため、夏冬関係なしに寒い。
しばらく進んでいくと目の前になにかが現れる。
「お前は…!!」
目の前にいるのは魔物。
エリーシャの2倍ぐらいの身体の大きさがあり、右手にはこんぼうを持っている。
ここいらにいる魔物は人狩をすることで良く知られている。
エリーシャ「邪魔ですわ」
しかし、そんな魔物でも一切ひるまず逆に睨み付ける。
当然、魔物の怒りを買ったのは言うまでもない。
「王女如きが…っ!」
魔物は手に持っていたこんぼうを勢いよく振り下ろす。
こんぼうはエリーシャの頭を捉え…
エリーシャ「ふん、その程度ですの」
片手で防御魔法を出して受け止める。
こんな芸当が出来るのは極数人である。
そして、仕返しと言わんばかりに魔法を1,2発放つ。
「くそ、覚えてろ!」
勝てないと悟ったのか逃げていく魔物。
それを追うことも追撃することもせず、ただ先を進んでいった。
エリーシャ「ありましたわ、これですわね」
30分かけてエリーシャが探して見つけたのはプラントンベリー。
食べると口全体に柔らかい甘みが広がる、ここの地方では高級食材として扱われるものだ。
それを食べる分だけカゴに入れ、再びエリスの元へと戻っていく。
エリーシャ「戻ってきましたわ、エリスお母様」
戻ってくると既に仕事を終えたエリスが昼食を作って待っていた。
テーブルの上には焼きたてのパンにスープ、サラダにステーキが置かれていた。
エリス「助かりましたわ、エリーシャ。やはり食後のデザートにはこれですわ」
エリスがエリーシャにプラントンベリーを差し出す。
一粒食べると、柔らかな甘みが口に広がっていったのだった。