イマジカントの臨時ニュース
「ただいま〜っ!飯にしようぜ、コッタン!」
古ぼけたドアを勢いよく開け、家主が帰ってきた。
「いつも思うけどよ、それでドア壊すの止めろよ?オレ脱走するからな」
飼い猫は冷淡にテレパシーで返す。
「さーてと、今日のお昼御飯は野菜担々麺かなー♪担々の冒険、なんつって」
「...そんなギャグより飯を寄越せ」
家主の名はテーリィ。
自身の創った小宇宙「イマジカント」の平和を保つために暗躍する、自称“空前絶後の天災”だ。
その飼い猫がコッタン。
かつてテーリィに命を救われ、以来彼について来ている魔法猫。
一人と一匹は、マグナムキラー砲台を改造した家でひっそりと、でも楽しく暮らしていた。
「あ、今朝英語やってなかった。今再放送してるかしら」
ふと思い出し、テーリィはラジオを取り出す。
「待ってる間に麺伸びないかな...」
「んな心配してないで、やるなら早くやれ」
しかしラジオから流れた音声に、テーリィとコッタンは耳を疑った。
『「ラジオでイングリッシュ」が滅びたのに伴い、臨時ニュースをお伝えします』
「あ、そう......
...はあぁぁ!?滅びた!?番組が滅びたってどゆことー!?」
『申し訳ございませんが、ラジオに問いかけてもお答えは出来ません』
「...兎に角、ニュースを聞こうぜ」
臨時ニュースは、さらに驚くべき情報を発した。
『“猫の目銀河”をはじめとするこの宇宙の惑星群で、天変地異が起こっているとのことです』
「まじか」
「リアクション薄いな。にしても何故ここは大丈夫なんだ?」
『ラジオに問いかけてもお答えは出来ません』
「お前には訊いてないっつの」
『失礼致しました』
「ここら一帯は、僕が聖域に設定してるんだよ。創造主がやられたら元も子もないからね」
『なお、この異変について、専門家は空間のホコロビによるものとしております』
「...空間のホコロビ、って何よ」
『ラジオに問いかけてもお答えは出来ません』
「何なんだこのラジオは...」
『またこの天変地異に“奇跡のピース”が関係している可能性があり、専門家はご都合主義として研究を続ける方針です』
「なるほど...ちょっと待て、ご都合主義言うなや」
『それでは皆様楽しい終末を...』
大きな地響きの音が鳴ったかと思うと、ラジオからは砂嵐の音しか聞こえなくなった。
「どうするよ、テーリィ」
意味もなく周囲をキョロキョロしながら、コッタンは主に問う。
「......この際のびのびの担々麺はどうでもいい。せっかく創った小宇宙を守りたいよ」
テーリィはトレードマークのシルクハットを整えた。
「ふっ、そう言うと思ったぜ...オレも行くよ。で、その奇跡のピースだかの場所は?」
「ひとつだけ、知ってる」
「ここは...?」
家の地下室。頑丈な金属製の扉が、その先にある物を厳重に守っている。
「僕の秘密のコレクションルーム。大事な本とかフィギュアとか、ストラップにゲーム、ガチャガチャの景品とかを保管してるんだよ」
「んなもの大事に保管し過ぎだろ...」
「それで前、鍋敷きに使えそうだな〜って拾ってきたアレも、こ↑こ↓にあると思う」
「成る程な......
.............ちょっと待て、鍋敷きだと!?」
「うん、大きさもちょうどよかったし」
(こいつが鍋を食うせいで小宇宙が破滅するかもしれないって...)
「いや、その辺僕だって反省しるよ?あと反省しるは誤植じゃないよ?」
「ここで心読むなや!あと死語やめろや!」
「まァ、とりま中に入るべ」そう言ってテーリィは、脇にあったレバーを引いた。
「ザル警備未満かよ...」
...何も起こらない。
「失礼、コネクターを繋ぐの忘れてた」
「こいつは...」
しかし、ここでもまた予想外のことが発生した。
「あれ!?コネクターない!」
「はぁ!?誰かに中身盗まれて、切られたんじゃねえの?」
「いや、切られた形跡もない...無くなってるんだよ!」
テーリィは完全にパニック状態。それが『空間のホコロビ』によるものだと、考えも出来なかった。
イマジカントの運命とは!?
2Yさんにバトンタッチ!