プロローグ side:A(7/27大規模修正)
空の雲も大きな木も、まだまだ寝ぼけ眼のプププランドの朝...
「春風の旅人」ことカービィは、柔らかな日射しで目を覚ました。
(もう朝かぁ...朝ゴハンたべようかな...)
いつものように、あきれ返るほど平和な1日が始まるかと思われた...その時だった。
ゴゴゴゴゴゴ...
突然、大きな空間の揺れがプププランドを襲った。
「わ!?な、何!?じしん!?」
カービィはバランスを崩し、ベッドから落ちた。
幸い、揺れはすぐに収まり、彼の家には傷一つつかなかった。
家の外に飛び出て、様子を見る。ふいにカービィは、バリバリという嫌な音に気付いた。
「異空間ロード...?」
確かにそれは異空間ロード――空間の虫食い穴だった。しかし形が歪で、明らかにおかしい。
丘の向こうから、誰かが走ってくる。カービィの親友、ワドルディだ。
「カービィ!大丈夫だった?」
「ぼくはだいじょーぶ。でも...」
ワドルディは「でも...?」と言いかけ、友達がじっと見つめている物に気付いた。
「それって...」
「なんだか、不吉なよかんがするんだ」
カービィは一歩、穴のほうに踏み込んだ。
「カービィ!?まさか...ダメだよ!」
「みんなには、しばらく留守にするってつたえて!」
ワドルディの制止もむなしく、カービィは異空間ロードに飛び込んでいく。
「どうしよう...大王さまに伝えなきゃ!」
ワドルディは来た道をわたわたと戻っていった。その様子を、木に隠れてしっかりと見ていた影があった。
「クックック...第一段階、成功だヨォ!」
カービィがたどり着いたのは、黄色い草原だった。草たけが高く、彼の小さな体はすっぽりと隠れてしまう。
(ここは...どこ?ポップスターじゃないよね...)
カービィは精一杯背伸びをして、辺りを見回した。
近くから、話し声が聞こえる。そこには2つの人影があった。
「アド、みたいな...『ひと』だっけ。何かきけるかな」
カービィは草をかき分けながら、人影の方に向かった。
「さっきの揺れ、何だったんだろう...」
「...ねぇ、見て!なんかこっちに来るよ!」
しかし...彼は重大なことに気づいてしまった。
――朝ゴハンをまだ食べていなかったのだ。
カービィは空腹で、その場にぱたりと倒れた。
「あれ?動かなくなったよ」
「人影」の正体であった二人――サーバルとかばんちゃん――は、顔を見合わせた。やがて、好奇心が勝ったサーバルがそのピンク玉の様子を見に行く。
「サーバルちゃん、危ないよ。セルリアンだったら...」
「へーきへーき!ピンク色のセルリアンなんて見たことないよ!」そう言うと彼女は、ピンクのセルリアン(?)を拾い上げてみせた。
「ほら、目が2つあるし、石も見当たらないよ?」
テーリィ(小説の途中ですが、臨時注釈を入れさせていただきます。アプリ版の『けもフレ』のセルリアンは目が複数ある個体も存在しますが、アニメでの二人が遭遇したのは全て単眼なので、このような表現を使わせていただきました。)
そのとき...
「ゴハン...」
「しゃ、しゃべったぁぁぁ!?」
サーバルは驚きのあまり、ピンク玉を落としそうになった。
「かばんちゃん、この子しゃべるよ!」
かばんはサーバルからそのまん丸い生命体を受け取り、耳をすませてみる。ぽそぽそと聞き取りづらい声の中に、はっきりと聞こえる言葉があった。
「ゴハン、って聞こえた。もしかして、お腹がすいているんじゃないかな...」
「かばんちゃん、ジャパリまんある?」
「え?うん...」
彼女がリュックから、紙の包みを取り出した、まさにその瞬間、ピンク玉はそれを奪い取り、中身を一口でぺろりと平らげてしまった。
彼はたちまち元気になり、ぴょんぴょんと跳ねてみせる。
「おいし〜っ!おかわり、おかわり〜っ!」
やがて驚いて声も出ない二人の気配に気付き、カービィは我にかえった。
「...ねぇ、ここはどこ?きみたちはだれ?さっきの食べ物はなぁに?」
状況を飲み込めず、戸惑うかばんちゃんに代わり、サーバルが答える。
「ここは、ジャパリパーク。わたしはサーバルキャットのサーバルで、こっちはかばんちゃんだよ!あなたこそ、だぁれ?」
「ぼくはカービィ!ポップスターの、プププランドから来たんだ!」
気まずい沈黙。三人が同時に首を傾げる。
「あの...ポップスターとかプププランドって、どこですか?」
「知らないの〜?ポップスターはすごくきれいな星で、プププランドはその中のすっごく平和な国なんだよ!」
やがて、サーバルがぽんと手をたたいた。
「そっか!かばんちゃん、カービィはお空のお星さまから来たみたいだよ!でも、どうして?」
「えーと...お腹ペコペコで、わすれちゃった!」
「そう?じゃあ、ここでいっしょに遊ばない?」
「いいよ!」
こんなとぼけた出会いが、島一つと全宇宙を救うとは、誰が予想できただろうか...(アッ、読者の皆様は出来てるんでしたっけ)。