第2話 孤独の夜明け
ミズクレ「はっ」
はっと気がついたときには、朝になっていた。
まわりを見てみるが、ここはどこだか分からない。
森に囲まれた中に、ぽつんと自分が立っている。
どうやってここに来たか思い出そうとするが、まったく思い出すことができない。
最後に記憶があるのは、あの時ミラさんに言われた言葉で気力と意識が抜け落ち、無意識の内に外にでた。
それだけであった。
とりあえず、今分かることは自分は今迷子状態になっていることと、そして寒い。
今日の気温は自分のなんとなくの体感ではあるが、昨日よりもさらに冷房が効いてるような寒さだ。
ミラさんみたいに服を着ているわけではなく、帽子しかつけていないので、寒さが半端ない。
霜もあり、風も木を揺らすぐらいは吹いている。
ミズクレ「うー、さむっ…」
自分は朝日が当たるところを探し出し、そこで再び意識がなくなった。
「トゥルル…」
あの日から一夜が明け、物静かな朝を迎えた。
静かな空気に合うかのように、冷たい風も家の中に入り混んでいた。
「トゥルルルル…」
静かな空気をぶち壊す音が家全体に響く。
ミラ「うーん…」
うるさく鳴り響く電話の音のおかげで、夢の世界から連れ戻されたミラさんは、寝ぼけながら受話器を取った。
ミラ「はい、もしもし…」
公務員「もしもし、ミズクレさんのお宅でしょうか?」
ミラ「はい、そうですが… どうかされたんですか?」
公務員「あ、本日まだミズクレさんが仕事に来ていないのでお電話をさせていただいたんですが…」
どうやら、今日はまだ仕事に行ってないらしい。
ミラ「すみません、私もどうしてかは分からなくて…」
とは言ったのだが、もちろんミラさんはどうしてミズクレがいないかの事情は知っていた。
が、もちろんミズクレが家から出て行った後の事はまったく分からないが。
公務員「そうですか… ではまたご主人様が戻られましたら、電話するようにお伝えしてください」
ミラ「分かりました。 …あの」
公務員「はい、なんでしょうか?」
なんとなく、何となくだが、昨日のことについて知りたかった。 聞いたところで何も変わらないし、意味はないのだが… それでも気になった。
ミラ「昨日はミズクレさん、残業をしていたのでしょうか?」
電話越しから何かをめくっている音が聞こえたり、ほかの人に聞いてみたりして
公務員「そうですね、19時までやられておりますね。どうかしたのでしょうか?」
ミラ「いえ、なにも… ただ気になったので」
公務員「そうですか、それでは失礼します」
これで、一応ではあるのだが、昨日は本当に残業してることは分かった。
そのことは申し訳なかったかもと思いつつも、まだ疑っている部分はあった。
ミズクレが幼馴染といった女の人の真相と、ミズクレがどこに行ったかである。
前者はよくはないのだが、まぁ一応置いといて、問題は後者である。
病みの力でぎったぎたにしたいところだが、場所が分からなくてはそもそも追撃すらできない。
だが、おおよその予測はついていた。おそらくはあそこだろうという所が。
結局のところ、予測だけであって確証はないので疑ったまま、ミラさんは家にいるのであった。
ミズクレ「うーん…」
あれから時間が結構経った気がする。
今現在、極度の腹減りで体が思うように動いてはくれない
よくよく思えば、昨日は朝食以来なにも食べてはいなかった。
水も昼休みを最後に飲んでいない。
どこにいるのかもわからない。さらに日光までもが敵に回ったようで、体の水分を奪っていく。
光が当たっているところは既に乾燥していて、今にも細胞が壊死しそうである。
ねむい…
自分は起きなければと思うも、無意識の内にまぶたを閉じた。
…
……
………
ミズクレ「はっ… ?」
自分は今、とても暗いところいる。
明るいところがまったくない、真っ黒な世界。もちろんなにもない。
上下左右を見ても暗くて、方向も分からない。
このままぼっとしてもしょうがないので、とりあえず適当に歩いてみることにした。
まっくら世界は声もすぐに消え、まったく響かない。ただ静かで暗くて、そして寂しい世界で広がっていた。
歩き初めて体感で30分ぐらい経ったときである。
「…」
なにかが聞こえた気がした。
「…」
小さくて聞き取りづらいが、確かになにかの声が2時の方向から聞こえてくる。
聞こえてくる方向に向かって歩き始めた。
声は少しずつ大きくなっていく。
しばらくすると聞き取れるにもなってきた。どうやら自分を呼んでるぽい。
そして、ついに先に光っているところを見つけた。
漆黒な世界に負けじと光っている白い光。
自分はその光に一歩踏み出してみた。
すると
ミズクレ「んん…」
目を開けるとどこかの部屋のベッドにいた。
ふいっと右の方を見ると赤丹様が立っていた。
赤丹「おや、起きましたか、大事はないですか?」
ミズクレ「あ、赤丹様… はい大丈夫です あの、ここは?」
赤丹「私の部屋です、もっと広く言うなれば王宮です」
ミズクレ「…」
赤丹「何故自分を見つけれたかって聞きたいんですね」
ミズクレ「! は、はい…」
さすがは赤丹様。自分の心はもう全てお見通しのようだ。
赤丹「えっと… あなたはここらへんに倒れていたんですよ」
赤丹様は地図を取り出して、場所を手で指す。
赤丹「3時間前に人が倒れていると聞きましてね。それで言ってみればあなたがそこに倒れていたというわけです。このことを奥様に言ってもよかったんですが、なにかご事情がありそうだったので、言うのをやめて私の部屋に運んだんです」
ミズクレ「なぜ事情を… あ、心の読みか…」
赤丹「ええ、どうしてあなたがあそこで倒れてたのがどうしても分からなくて… すみません、つい心を読んで事情を見てしまいました」
赤丹様に隠し事をしてもしょうがないと思った自分は、昨日あったことと、今日の出来事について赤丹様に話した。
それを黙って聞いていた赤丹様は顔を少し暗くさせ
赤丹「なるほど、そのようなことが…」
ミズクレ「はい…」
ベッドで力弱く声を発した。
細胞などが壊死することはなかったが、まだなにも食べていないので声があまりでない。
そして、また睡魔が襲いかかってきたので、布団の中に潜りこんだ。
その様子をみた赤丹様は、邪魔してはいけないと思ったのか、なにも言わずにこっそり外に出ていった。
出ていったときの風が少し、布団の中にいる自分の足に当たった。
一方、ミラさんは自分が王宮に運ばれるちょっと前に外に出ていた。
夫の浮気による怒りなどから、気分を発散するために外にでていた。
まぁ気分転換したところで、浮気者に許す気などまったくないが。
ほつき歩いているとなにかを蹴ったような感触がした。
蹴ったそのものはコロコロと前へ転がっていった。
気づいたミラさんはそのコロコロと転がっていったものをみて手に取った。
ミラ「これは…?」
ミラさんが見つけたのは、白いぼんぼんであった。 そして、それを少しずらして見ると青色の生地が少しくっついていた。
そしてまたふと前を見ると王宮があった。
ミラさんは無言のまま、無意識の内に王宮へと入っていった。
王宮内は昼時だったこともあり、やはり人がかなりいる。1人でくる人もいれば、友人ととか、家族連れでーというのもいた。
あちこち見ながら、ミラさんはまっすぐ食堂に入っていった。
大勢の人がいる中、ミラさんは目的の人物だけをさがすべく、一人一人細かく見ていた。
本来なら浮気者なんてどうでもいいし、会いたくもなかったはずだ。
しかし、なにか心が、そう心が何かざわめくというか、もやもやというか、落ち着かない。
そんな心の複雑を持っていたミラさんに、後ろから声がかかってくる。
少し驚いて後ろを見るとさっき自室から出ていった赤丹様が立っていた。
赤丹様はしばらくミラさんを見ているとその複雑の心を読めたかのように喋り始めた。
赤丹「どうですか?過去の世界に行って真実を知るのは。全てを知れていいと思うのですが」
ミラ「…!」
確かにそうだ。
過去に行けば事実を知ることができる。浮気をしたかどうか、写真に写っている女の人は誰なのか。また事実を知ることによって心のもやもやも晴れる。
そんな好条件を、ミラさんは逃さなかった。
ミラ「お願いします」
Part2 孤独の夜明け fin part3過去の世界の真実を求め に続く…