追跡! メタナイツ!
招集時には艦長が号令をかけ、一人ひとりが名乗る決まりがある。
最後の「我ら、メタナイツ」の部分は彼らが勝手に付けただけなのだが、
船員の創意工夫に文句をつけず認めることも私の器の広さだ。
これで私を含め、戦艦の船員全員が集合したことになる。
私ことメタナイト、艦長、アックスナイト、メイスナイト、ジャベリンナイト、トライデントナイト、そしてワドルディ。
合計7名。少数精鋭の布陣だ。
現在はこれに加え、謎の侵入者が1人侵入しているらしい。
いや、可能性としては、複数人も想定しておくべきか。
念のため、全員に今日艦長から呼び止められた事がないか確認をしたが、誰も申し出る者はいなかった。
全員が信用の置ける部下たちだ。バカな所もあるが、決して狡猾ではない。
隠している可能性は低いと見ていいだろう。
「よし、艦内の探索に当たれ。通路・部屋、くまなく探すのだ」
「了解!!」
私と艦長を残し、メタナイツ達は散り散りに分かれた。
「メタナイト様はどうされるおつもりで?」艦長が尋ねる。
「私は来るべき時に備えて待つことにする」
「了解しました。では、私も探索に向かいます」
「よろしく頼む」
メタナイツに続いて、艦長も司令室を出た。
「私は私なりの方法で探すことしよう」
部下たちは虱潰しに探してくれることだろう。
だからこそ、私は独自に動けるのだ。
あちこち探し回るのは趣味ではない。まずは主要箇所の状況をこの目で確認する。
その後は部下からの報告を待つ。そう決めた私は、足早に部屋を後にした。
* * * *
「うーん、見つからないなあ。侵入者さーん、どこですかー?」
ワドルディは左右を見回し、侵入者に呼びかけながら探していた。
それに答える物は、誰もいない。
「このへんじゃないのかなー?」と言って、困り顔をする。
「次はあっちを探してみよう」
艦内探索はまだ始まったばかりだ。ワドルディは軽快に駆けて行った。
「……ここダスかっ!」
メイスナイトはばっと物置の扉を開く。が、中にはネズミ一匹いない。
「いないダスか……いやいや、隠れているかもしれないダス。探すダス!」
そこで探索を諦めず、内部探索を続行する。
この部屋は武器や艦外から持ち込んだ品がところ狭しと置いてある。
玩具類も多い。よく分からない品もある。
「いないダスなあ……」
「メイスナイトー、侵入者見つかった?」
メイスナイトに呼び掛けたのはワドルディだった。
物置の扉が開いてる事に気づき、中に入ってきたのだ。
「いいや、見つかってないダス」
「そっかー。ここならうまく隠れられそうだね」
「そうダス。身を隠すのにはうってつけの場所ダス。だから一緒に探すダス」
「了解ー」
棚の影に潜んでいないか、影になっている部分に隠れていないか、二人で一緒に探していく。
しかし、いくら探しても見つかる気配はなかった。
「ここにはいないのかなー」
「かもしれないダス……」
比較的広い部屋中を歩きまわったが、目立つ成果が挙げられなかった事で疲労感はより増した。
一旦この部屋の捜索を諦め、二人は別の場所を探すことにした。
アックスナイトは個室を探していた。だが、見つからない。
「もしかしたら、艦長のただの見間違いなのかもしれない」そう思うことは躊躇われた。
いくらなんでも、艦長の呼びかけに応じない船員がいるとは思えなかった。
「他を当たろう」
早々に見切りをつけると、アックスナイトは他の部屋に移動した。
トライデントナイトは自身が持つ三叉の槍が倒れた方向を探していた。その方向に壁しかない場合はやり直す。
「次はこっちだな!」
そこで見つからなければ、また槍を倒す。
「なるほど、あっちか!」
ひたすらそれを繰り返していた。
「ふざけとる場合かっ!」
「げふっ!」
艦長に見つかると、したたかに頭を叩かれる羽目に遭った。
ジャベリンナイトは甲板部分から飛行し、外から探索をしていた。
「熱源反応、なシ。侵入者、いなイ」
彼の持つレーダーに反応はなかった。確認できる熱源は、船員のものだけだった。
「いなイ、いなイ、どこにモいなイ」
漂いながら探索を続ける。
「見つかったか!?」
トライデントナイトが尋ねる。
メタナイツ達は、全員集合して状況を確認していた。
だが皆、船員以外は誰も見かけていないという。
「いや、見当たらない」と、アックスナイト。
「いないよね」ワドルディも同意する。
「うまく隠れてるに決まってるダス!」鼻息を荒げながらメイスナイトが言った。
「戦艦外部からの熱源反応、異常なシ」ジャベリンナイトも報告する。
「なら、どこに隠れていやがるんだ……?」
トライデントナイトは考え込んだ。
「俺たちの探し方がまずいのか?」
「少なくとも、お前の探し方は問題があっただろう」
そこに艦長が現れ、トライデントナイトに指摘する。
艦長の方も収穫はなかったらしい。見つけていれば、真っ先にそれを伝えるからだ。
「いやぁ……意外と当たったりするんですよ?」
「――ふん、だと助かるんだがな」
「そういえば、メタナイト様は?」
ワドルディが唐突に話題を切り替える。場の空気を読んでの事だった。
あまりそう思わせない所も、彼の長所である。
「来るべき時に備えて待機するそうだぞ」艦長が説明した。
「じゃあ、ボクたちが探すしかないよね」
「そういうことになるだろう。あまり、メタナイト様の手を煩わせてもな」
「そうダス。こういうことは、ワシ達が役を務める事ダス!」メイスナイトがそれに同調する。
「お、メイスナイトにしてはまともな発言」アックスナイトが驚く。
「どういう意味ダスか!」
「まぁまぁ……」トライデントナイトはなだめに回った。
「雨の降ル確率が20%ジョウショウ」
「なんでダスか!?」
既に話が逸れまくっていた。
(ふふん、そう簡単に見つかる訳ないさ。この能力の前ではね……)
何者かが、彼らの会話を聞いてほくそ笑んでいた。