極欲的孤独
どこへ行くの?
私のこの思いは
どこまで落ちて行くの?
ずっとずっと落ちて行く
壊れかけたティーカップ。最後まで私を主と見なしてくれる、優しい心。
降り曲がったスプーン。最後まで私を支えてくれた頼もしい心。
この二つの心は私の最後の魔法。どうかこの思いを闇底を超え、どこまでも。
みずみずしい青い空。汚れなき白い雲。美しき風の音色。
これらの自然に生かされる私はどこの誰よりも自分が幸福者だと思っている。幸せ者だ。そんじゃそこらの貧人よりも。絶対に。
「…あー、暇。めちゃくちゃ暇。」
ついつい暇発言をしてしまった。だが本当に暇すぎるのだ。何してもすぐ飽きる、何やっても面白くない。永遠の繰り返し。そんな事だから暇潰しに空を見上げているのだ。
「…雲はいいなー。自由に空を飛んで自由に生きている。私には一生無理なことだよ。」
ボソっと呟いてみた一言。だが運悪く、その一言はこの世で一番ウザイ奴の耳に届いてしまったようだ。
「お、お、お、お嬢様!!なんてことを言ってらっしゃるのですか!!そんなことになったら、ヘルナック家はおしまいです!!」
「(うるさいなぁ…)別に大丈夫でしょ。跡継ぎとかはお兄ちゃんがいるし。」
「よくありません!!レイシスお嬢様はヘルナック家、ゆういつの女の子です!!旦那様がどんなに大切にされているのか分かっておっしゃるのですか!?」
レイシス「あー!!うっさいうっさい!!もう黙っててよ!このゲス執事が!」
この大声は屋敷の中に響き渡っていたそうだ。
私は今イライラしている。
怒鳴り声。すごく近所迷惑。五月蝿い。
この三つが頭の中でぐるぐると走り回ってる。今私はお説教をされているのだ。もちろん執事に。うん、とにかくはこの執事の説教のせいで、ものすごーーくイラついてる。その気持ちが顔にでてないかと心配だった。まぁ、もしでてもあまり問題はないと思うけど。
そう思って目線を下に向けたらタイミングよく、中くらいの小石があるのではないか。これを思いっきり蹴って執事の顔面にぶつけたい。そして泣かせたい。するとなんだが無性に気持ちが高ぶってしまった。その勢いのまま、その石を蹴ろうとした…のだが、普通に考えたら執事に大声をだされてまた騒ぎになってしまう。それだけは回避せねばならない。
レイシス「(なにかいい作戦はないのやら…ん?」
ふと部屋の壁に掛かっている時計を見てみる。私はなにかに気が付いたように、にやぁとしながら椅子からすっと立った。
執事「あ!レイシス様!!まだお説教は終わってませんよ!?それに」
レイシス「あらあら。せっかくのありがたいお説教なんだけれども、私はこれから勉強の時間ですのよ?それをたかが変なことを言っただけのお説教に私の大事な勉強の邪魔するつもり?」
執事「え、いや、ちょ、待ってくだ」
レイシス「待たないわ。さて、こんなくだらないお説教にかまってる場合ではないわ。早く勉強をしないと。」
そう言ってそそくさにこの部屋を出て行った。その時の執事の顔はあんまり見れなかったが多分目が点になってるはず。今度からお説教の時はこの作戦で行こう。と邪の思いが頭に過ぎっていった。
こつこつと響く長い廊下。こんなくだらない物を作ってる暇があったら、もっと働けっつーの。そしてやっとのことで着いた場所がそう。
「あ、レイシス様。こんにちは!お元気ですか?お怪我はしてませ」
レイシス「長い。もっと短く言いなさい。」
ズバっと言った一言がストレートに彼の頭にクリーンヒットした。
そしていつもの場所に行き、愛用の銃を握ってみる。ずっしりと重みがあるこの銃。普通のとは違い、火縄銃を少し現代風に変えたものだ。それを構え細い的に打とうとしてた。すると突然後ろから銃声が聞こえた。そして次の瞬間あいつが…
「何事なの!?」
バッと後ろを振り返って見る。そこには何かによってうつぶせに倒れている執事がいたのだ。
「ちょ!?どうしたの?ねぇ!!返事しなさいよ!!」
執事の腕を掴みぐんぐんと振ってみる。執事は揺られる度にうっ、うっ、て顔を青ざめていく。どうやら生きているようだ。生きていることを知った私はなぜか目を細め手をぱっと離した。ドサッという音ならし、同時に地面とキスをする執事がいた。無駄な心配をした。そう思いながら部屋を出ようとした。
執事「れ…レイシスさ…ま」
その弱々しい声に呆れてゆっくりと後ろを振り返る。執事が私に向けて手を伸ばしている。その手は何かを握っておりブルブルと震えていた。
「なーに?まだなんか用なの?用件ならちゃっちゃと言っちゃってくれない?」
執事「こ…これを、旦那、様に…お願、いしま…す。オボァ」
うげ、汚い、臭い。別にリバースしたわけではないがなぜかそういう風に感じてしまう。執事を睨みつけながら手に持っている物をもらった。
執事「あと…これ吐いて…ませんから」
やめてくれ。そんなこと言われると余計リバースしたように聞こえる。あとそんなストレートに吐くなんて言わないで欲しい。気持ち悪い。
そんな執事がいる部屋を後回しにしてお父様の書斎に向かった。やっぱり長い廊下。今は慣れているけど小さい頃はよく疲れたもんだ。
書斎に着いた私はドアに手を伸ばした。
(…執事から渡すようにと言われたけど…見たいわ)
執事から渡された物は小さな手紙であった。