星のワドルディ(後編)
ワドルディとシャドーカービィは、急いで声の聞こえたほうに向かった。すると、デデデとメタナイトが何かと戦っているのが見えた。
「大王様! メタナイトさん!」
ワドルディは駆け出した。それを見たデデデは言った。
「ワドルディ! こっちに来るでない…どはぁ!」
なんと、そこには暴れまわる巨大なドラゴンがいた。
デデデはドラゴンの鋭い一撃を受け、その足元に倒れてしまった。素早い剣技が自慢のメタナイトも圧倒されている。どんなに素早い攻撃も、その巨体の前では無力に等しかった。
(このドラゴンが、遺跡に侵入した奴なのかな…)
ワドルディは考えた。
(どうしよう…このままじゃ薬草を手に入れられないばかりか、ここで仲良く全滅だよ…!)
ワドルディはドラゴンに目を向けた。幸いこちらには気付いていない。
(ん…あれは!)
ワドルディは、その怪物の後ろに何かのスイッチを見つけた。
(あのスイッチなんか怪しいぞ…? ここは罠がたくさんあるはずだ。あれも何かの罠のスイッチかもしれない…)
ワドルディは視線をドラゴンのほうに戻した。メタナイトの表情には疲れの色が見える。
(あのドラゴンはメタナイトさんもかなわないほどの相手だ。このまま僕が立ち向かったところで何も変わらない)
ワドルディは考え続けた。
(大王様を抱えて逃げるか…でもメタナイトさんを置いてはいけないし…あのボタンを押してみようか…でも罠によってはみんなに危険が及ぶし…)
そのうちにシャドーカービィがスイッチを発見した。
「なんだこれー? 押してみようっと。えいっ!」
ポチッ
「…ん? なにも起きないじゃん」
と思いきや…
ゴゴゴゴゴ…
岩がこちらへ向かってきた!
ドラゴンは岩に気付かない。岩はそのまま直進し、ドラゴンに直撃した!
「グオオォ…!」
ドラゴンは大きなダメージを受けている。
敵に隙ができたのを見て、メタナイトは剣を握り締め、ドラゴンに突進した。
キィン!
「グオォォォォ!」
ドラゴンは地面に倒れた。だが、その弾みでドラゴンの鋭く尖った牙が抜けた。
牙は、メタナイトに向かって飛んでゆく。
「危ない!!」
ワドルディはとっさにメタナイトをかばった。間一髪。メタナイトは怪我をせずに済んだ。
しかし…
「メタ…ナイト…さん……大丈…夫でした…か……?」
「ワドルディ!」
ワドルディの腕に、先ほどのドラゴンの牙が深く刺さっていた。
「…! これは…ワドルディの全身に強い麻痺が…!?」
「何だって! おい、どうしてなんだ!?」
突然の出来事に、デデデはうろたえた。
「おそらく、ドラゴンの牙に神経性の毒があったのだと…」
メタナイトは言う。
しかし、いつも冷静なメタナイトも、今度ばかりは動揺しているようだ。声が震えていた。
「うぅ…っ…」
ワドルディは声を出すのもつらいといった感じだ。このままでは冒険を続けることができない。
メタナイトは決断した。
「陛下、ワドルディをお願いします。シャドーカービィと奥へ行ってきます」
「それはならん。奥に行けばもっと危険な罠や敵が待ち構えているはずだ。二人だけでは――」
「ですが、陛下もお怪我をしています。歩くのさえ大変なことでしょう。その状態で罠をかわすことなどできないですし、敵に出会った場合確実に狙われるでしょう。どうか私どもにお任せください!」
「…分かった。ワドルディはわしにまかせい! 薬草は頼んだぞ!」
メタナイトとシャドーカービィは先へ進んだ。
やがて、二人は道が二手に分かれている地点まで来た。奥は真っ暗で何も見えず、先がどうなっているのかは判断できない。
「これも薬草に盗らせないための罠だろう。いくら罠の場所を知っているとはいえ、こんな奥があったとは知らなかったからな」
「うーん…どうする? どっちに行けば薬草の道につながってるか分からない…」
しばらく沈黙が続いた。
そこで急にメタナイトが口を開いた。
「待った!」
「…え?」
「その道はどちらも罠だ。本当に進むべき道はこっちだ」
そう言って、メタナイトは地面にあるマンホールのようなものを指さした。
「これはおそらく隠し階段だ。この遺跡で隠さなければならないものといえば…」
「伝説の薬草!!」
「そういうことだ。どうする、シャドーカービィ。進むか?」
「もちろんだ!」
シャドーカービィは力強く返事をした。
長い長い隠し階段をひたすら下りていくと…
二人が到着したのは、何もないただ空っぽの部屋だった。
「ん? 何もないじゃないか!」
「何!? そんな馬鹿な…! ならここは先ほどの道が罠だと思わせるための――」
メタナイトはそこで一旦言葉を切った。
「ん? 待てよ…」
「どうした?」
メタナイトは急に焦った顔で言った。
「まずい! 早くこの部屋から出るんだ! 浸水するぞ!」
「なんだって!?」
足元はすでに水に浸かり始めていた。
メタナイトは急いで部屋から這い出た。しかし、急な出来事にシャドーカービィは逃げ遅れてしまった。
「シャドー! 早くしろ!」
その時、部屋の出口が閉じられた!
「あっ! と、閉じ込められた…? 嫌だ、助けてくれ! メタナイト!」
しかし、出口をふさいでいる頑丈な扉は、メタナイトの剣では壊せなかった。
「何ということだ…私の愚かさで…」
シャドーカービィは自分が助からないということを悟った。
「メタナイト…」
「ん…?」
「俺をおいて行ってくれ。そして、必ず薬草を!」
「そんなことしたらお前はどうなる…? もう少し待てばここを開けられる!」
「忘れたのか? 俺はカービィの影。カービィが死なない限り俺も死ぬことはない。だがカービィが死ねばもちろん俺も死ぬ。俺のために時間を使っている暇なんてない。だから今はカービィのことを優先しろ!」
「…すまない」
メタナイトは道が二手に分かれている前まで戻った。
(隠し階段を仕掛けた奴は私のような者が入ることを想定して裏の裏を読んで仕掛けたのか…さて、右と左どちらに行くか…)
悩んでいる暇はない! メタナイトは躊躇なく右へ進んだ。
メタナイトは真っ暗な部屋に到着した。
「ここは…? なぜ暗いんだ…?」
懐中電灯を点け、あたりを見回す。しかし、見たところ部屋に変わった様子は見られない。
罠が隠されているかもしれない。メタナイトは用心して部屋を歩き始めた。
その時、メタナイトの背後で何か物音がした。
「誰だ!」
返事はない。
代わりに不気味な笑い声が聞こえてきた。
「ふっふっふっふ…」
「卑怯だぞ! 隠れていないで姿を見せろ!」
メタナイトは、声が聞こえたあたりに急いで明かりを向けた。
そこにはマルクがいた。
「お前が薬草を奪ったのか!?」
「そうさ。カービィに毒の入ったリンゴを届けたのも、入り口を破壊し罠を仕掛けたのも、全てはボクの完璧な計画なのサ! 薬草がなければカービィは復活しない。そして今度こそポップスターはボクのもの、これでいたずらし放題なのサ。まぁ許してちょーよ。ほっほっほっほっほ、おっほっほっほっほっほっほ…」
「そうはさせるか!!」
メタナイトはマルクに向かって飛んでいった。
その頃…
ワドルディは目を覚ました。
「おぅ、起きたか」
「大王様、僕に何があったのですか?」
「覚えてないのか? お前はドラゴンの歯が刺さったことで麻痺になり、ここで休んでいたんだぞい」
ワドルディの顔が青ざめた。
「どうかしたのか?」
「じゃあ、メタナイトさんとシャドーカービィだけ…」
「そうだが」
「急いで追いかけましょう!」
ワドルディは走っていった。
「お前はまだ完全に回復しておらんぞ!」
止めようとするデデデを振り切り、ワドルディは走った。そして、二手に分かれた道のメタナイトが進んだ方向とは逆――左へ進んだ。
その先は、なんとあの洞窟大作戦の舞台の一つ、神秘の楽園につながっていた!
デデデは大声でメタナイトとシャドーカービィを呼びながら歩いた。
「おーい、二人ともどこだ〜? おいワドルディ、本当にこっちで合っているのか?」
「分かりません。でも一つ分かったことが…さっき右の道には足跡がありました。たぶんメタナイトさんのものでしょう。右の道が罠だとしたら、みんなで罠にかかり時間を食ってしまいます。そしたら薬が間に合わないかもしれません」
「なるほど」
ワドルディはさらに言葉を続けた。
「あっちに薬草があるとすれば、必ずメタナイトさんは薬草を取ってきてくれるでしょう。だからこっちへ進みました」
「そうか…よし、この辺に薬草がないか探しながら奥へ進むぞ!」
「はい!」
一方メタナイトは、マルクの圧倒的な力に苦戦していた。
「くっ…強い…!」
マルクは高らかに笑った。
「ボクの作戦は大成功〜! カービィが病気になればお前らはここに薬草を取りにくる。罠をかけまくってよかったなぁ〜」
メタナイトはこちらから攻撃をしかけようと何度も攻めた。しかし、その度に防がれてしまう。マルクの攻撃を避けるのが精一杯だった。
そんなメタナイトの様子を見ながら、マルクは言葉を続けた。
「お前にはクセがある! 何も考えないですぐ行動を起こす! お前は左か右かだと右に行くタイプというのも研究しまくってわかったのサ! お前がリーダーになるであろうことも分かっていた。他の奴らもお前についていって罠にかかる! まぁ、お前しかここにいないってことは他の奴らは死んでしまったんだろうけどな〜。全てはボクの戦略勝ちなのサ!」
「だが、お前はカービィにやられたはずだ!」
「マルクソウルとなった後、ノヴァが復活するのを待ってまた願い事を叶えてもらった! そのときボクが倒されたら何度でも復活するようにお願いしたのサ! 執念がある限り、ボクは何度でも蘇る! …さて、薬草は左の道の奥の奥に隠してあるよ〜。念には念を入れて、魔人ワムバムロックに守備を任せたし、完璧完璧〜♪ そしてボクにやられてお前もここで死ぬのサ! おっほっほっほっほ!」
(こいつをここで倒してもすぐに蘇る。…ワドルディと陛下が左の道に行ってくれることを祈るしかないか…)
だが、その先には魔人ワムバムロックもいる。完全に回復してない二人が勝てるはずがない。
メタナイトは絶望した。
その時。
「少ない人数で行くからこうなるんだよ。念のため尾行してて良かった」
後ろを振り向くと、そこにはリック、クー、カイン、リボン、アドレーヌ、ナゴ、チュチュ、ピッチの総勢八人がいた。
「お前ら…なぜここへ?」
メタナイトが聞くとリックが答えた。
「俺たちはカービィの仲間だ。だから助けに来たぜ!」
マルクはカービィの仲間たちにじっとりとした視線を向けた。
「ボクは雑魚とは戦いたくないのサ。おとなしく家に帰るのサ」
「それはどうかな?」
リック、クー、カイン、ナゴは残り、リボン、アドレーヌ、チュチュ、ピッチはワドルディたちの元へと行った。
そして、ワドルディとデデデはリボン、アドレーヌ、チュチュ、ピッチと合流し、魔人ワムバムロックの部屋の前に来た。
ワドルディはパラソルを取り出し、構えた。
(カービィと冒険に行った時、このパラソルが役立ったんだ…今回もこれでカービィのために…!)
「本当にこの先にワムバムロックとやらがいるのか…?」
デデデが呟くと、ちょうど横にいたピッチが答えた。
「はい、マルク本人がそう言ってました」
「それにしてもまたポップスターを狙うとはしつこい奴だな…ところでお前らはどうしてここが分かったんだ?」
「シャドーカービィが教えてくれたの。病気のことも、ここのことも」
アドレーヌの言葉を聞き、デデデは怪訝そうな顔をした。
「…? シャドーカービィの奴帰ったのか?」
「教えてくれた時はすごくきつそうで、そのあと気を失ってしまったわ。何があったの?」
「さぁ…わしはあいつと別れてたからな。あとで聞いてみるか…」
その時、急に思い出したようにワドルディが口を開いた。
「あ、あの大王様、マルクを倒しても蘇るんだったらどうすればいいんでしょうか…?」
「それは…」
しばらく沈黙が続いた。
「だが、今はそれよりもカービィを助けることが優先だ!」
またしばらく考えたのち、デデデは言った。
「ワドルディ、わしらがワムバムロックを食い止める。お前はその隙に進め」
「ええ! でも…僕も戦います!」
「いや、お前は薬草を頼む」
「どうして!? 僕もきっと力になります!」
しかし、デデデは拒否した。
「だめだ。お前はまだ完全には回復しておらん。それに…」
デデデはしっかりとワドルディの目を見て続けた。
「ここで全員やられたら、誰がカービィを助けられる?」
「…!!」
「お前だけが頼りだ、ワドルディ」
尊敬する主君に言われてしまっては、ワドルディも反対できない。
「…分かりました。大王様も気を付けて」
「うむ」
ワドルディは一人で奥へ進んだ。
通路の一番奥まで行くと、岩陰に隠されるようにして宝箱が置いてあるのを発見した。急いで箱を開ける。
中から出てきたのは、神秘的な輝きを放つ草の束だった。
「あった! これが伝説の薬草だ!」
その時、激しい地震が起こった!
「大変だ!!」
ワドルディは薬草をしっかりと握りしめてみんなのもとへ戻った。
そこでワドルディが目にしたのは、立ちはだかるワムバムロックとマルクの姿だった。
「おっほっほっほっ…ほかの道へ行くのをみて黙ってるわけがないのサ…」
「ふふふ…残念だったなぁ〜。ここは通さねぇぜ〜」
ワドルディは、さっきまでいた仲間の姿が見えないことに驚き、思わず叫んだ。
「…! メタナイトさんは!?」
「まさか、あいつがこのボクにかなうとでも思ったのか? 時間稼ぎにはなったと思うけどね。今頃は骨にでもなってるかな? おっほっほっほっほ!」
「くっ、ワドルディ、どうする? 今のわしらが二体も相手にして勝てるはずがない。マルクを倒しても復活するらしい。運良くこの部屋を出られたとしても、わしらは落とし穴からここに来た、どうやってもこの遺跡からは出られない!」
ワドルディとデデデのやりとりを聞き、じれったそうにマルクが言った。
「さぁ、薬草を渡せ! 渡さないのならお前たちを八つ裂きにしてやろう…」
ワドルディは手元の薬草に目を向けた。
すかさずアドレーヌが叫ぶ。
「ワドルディ、絶対に渡しちゃダメ! それがなくなった時点でカービィの命がなくなるのも同じよ!」
「だが渡さなければわしらの命もなくなるかもしれない…どうにかできないものか…」
その時、デデデはひらめいた!
「アドレーヌ、シャドーカービィはどんな様子だった?」
「すごくつらそうで、しばらくしたら気を失ってしまったわ。全体的に濡れてたけど、水かなんかあったの?」
「それだ! シャドーカービィは水のあるところから遺跡を出たんだ! よし、ワドルディ、ここはわしらにまかせてお前はとにかく水のあるところを探せ!」
ワドルディはみんなをここに置いてくことを考え少し戸惑ったが、デデデの「お前だけが頼りだ」という言葉を思い出してこう答えた。
「わかりました!」
ワドルディは走り出した。しかし、敵も黙って見ているはずがない。
「逃がすか!」
マルクがワドルディに襲いかかる!
バシッ!
デデデがマルクを素手で止めた!
「邪魔はさせん!」
「ところがどうかな? まだ俺がいる!」
そう言ってワドルディを追いかけようとするワムバムロックの前に、アドレーヌ、リボン、チュチュ、ピッチが立ちはだかった!
その隙にワドルディは部屋を抜け出し、道が二手に分かれているところまで戻った。
(でも、ここに来る途中に水なんてなかったし…シャドーカービィと一緒にいたメタナイトさんなら知ってるかも…)
ワドルディは考えた。
しかし、メタナイトが今どこにいるのかは分からない。無事であるかどうかさえ…。
(メタナイトさんは、あの時どっちに進んだのだろう…)
ワドルディは必死に記憶をたどった。
(確か足跡があったのは右の道だ。メタナイトさんはあっちへ進んだ)
とすれば、出口は右の道の奥だ! ワドルディは迷わず右へ進んだ。
その先にあった隠し階段を下りる。やがて、ワドルディはあたりが水浸しになっている部屋に到着した。
部屋にあった隙間を抜けると、そこは遺跡の外だった。
(早くカービィに薬草を届けなくちゃ! 治ったらカービィを連れてみんなを助けにいくんだ!)
しかし、カービィの家は遠く離れている。空でも飛んでいかない限り行けそうになかった。
(どうしよう…僕には戦艦を操縦できないし…)
そう思ったワドルディのもとへ、助っ人が現れた!
「ワドルディ! つかまれ!」
そこにいたのはなんとメタナイトだった。
「メタナイトさん! マルクにやられたんじゃ――」
「確かにあいつには勝てる気配はしなかった。だから一度攻撃を受け、やられたふりをした。私と一緒にいた四人はさっき送り届けた。陛下たちも生きて帰ってくれることを願おう…さぁ、時間がない! 行くぞ!」
ワドルディはメタナイトにつかまってカービィの家へと急いだ。
カービィの家では、医者が薬草を今か今かと待っていた。
「いかん! 心拍数が下がってきている…! 薬草はまだなのか!」
次の瞬間、勢いよくドアが開いた。
「薬草を持ってきました! 使ってください!」
「よし!」
医者は薬草をすりつぶし、薬を作ると、カービィに飲ませた。みるみる心拍数が上がっていく…!
カービィが目を開けた!
「あれ…僕寝てたっけ…?」
「カービィ!」
一同は安心した。
「ん? ワドルディにリックにクーにカインにナゴ! それにお医者さんにメタナイトも…。シャドーカービィはそこで寝てるし…どうしたの?」
「お前、今日リンゴを食べなかったか?」
メタナイトが問う。
「うん、全部食べたよー…って、なんで知ってるの?」
「それに毒が入ってたんだよ!」
ワドルディの言葉を聞き、カービィは仰天した。
「え!? じゃあ僕寝てたんじゃないの?」
「うん、気を失ってたんだ。そしてリンゴに毒を入れたのはマルクなんだ! またポップスターを狙ってるんだ!」
「えぇっ! 今マルクはどこに!?」
六人は遺跡であったことを全て話した。
「じゃあ、みんなは無事なの!?」
「分からない…」
「マルクはメタナイトでも倒せないと思った奴だからな…」
「復活もするようだし…」
皆が口々に思ったことを言う。そこでカービィは決断した。
「こうしちゃいられない! 僕、もう一度ノヴァのところへ行ってお願いしてくるよ!」
「えええっ!?」
一同は驚いてしまった。
「でもカービィ!」
そう言ったのはワドルディだ。
「ノヴァは壊れちゃったんでしょ? それに、星の力をつなぐのにはすごく時間がかかるって聞いたけど…」
「大丈夫だよ! 一回やったことがあるんだもん、僕ならできる!」
カービィは自信満々に答える。
その様子を見て、皆はカービィに希望を託すことにした。
カービィを乗せたワープスターは、光をまといながら宇宙へと飛び出していった。
驚異的なスピードで星々を回り、カービィはあっという間にノヴァを復活させた。
カービィはノヴァに向かって大声で願いを叫んだ。
「マルクを封印して! 今すぐ!」
「わカりマシた…マるクさんヲフうインしまス…」
カービィは大急ぎで遺跡に向かった。
その頃遺跡では、何度倒しても復活するマルクにデデデ大王たちは苦戦していた。
「ワムバムロックはなんとかなったが、問題はこいつだ…何回倒しても復活しやがる…」
「もー怒ったぞ! 全員血祭りにあげてやる!! まずはその厄介なペンギン、お前からだァー!!」
マルクがデデデに迫る!
デデデは死を覚悟した。
(ここまで、か…カービィが無事だといいが…)
次の瞬間!
マルクの動きがピタリと止まった。それとほぼ同時に、あたりに不思議な光が満ちてきた。
「あ、あれ〜? 体がうごかな…この光はもしやあの時の…!! ということは…!?」
「ど、どうしたんだ…?」
急に独り言を呟き始めたマルクを、デデデがいぶかしげに眺める。しかし、マルクは周りの様子など全く目に入っていないようだ。マルクはなおも呟きつづけた。
「あいつ生きてやがったのか…こんなにすぐノヴァに会えるのはあいつぐらいしかいない…! う、うぎゃあああああぁぁぁ…!!」
悲鳴だけをその場に残し、マルクは跡形もなく消え去った。
ちょうどその時、ワープスターに乗ったカービィが遺跡に到着した。
「みんな!!」
その声に、皆は振り向いた。
「カービィ! お前、無事だったのか!」
「良かった…」
メタナイトも遺跡に到着。デデデの傍へ近寄ると言った。
「陛下もご無事でなによりです!」
「ふん、このくらいの傷なんともないわ!」
そう言ってそっぽを向いたデデデの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
カービィはしばらく仲間の様子を眺めていたが、皆のほうに向き直ると言った。
「みんな、本当にありがとう…そしてごめん…僕が用心もなしに誰から来たのかもわからないリンゴを食べるから…」
「いいんだよ! もう過ぎたことだし…カービィが無事でよかったよ!」
ワドルディは言った。
「カービィの異変に気付いたのもワドルディ、危険な遺跡に行こうと言ったのもワドルディ。ワドルディがいなかったら今のお前はないぞ!」
デデデのその言葉を聞き、カービィはワドルディを見つめた。
「ありがとう…ワドルディ」
カービィはワドルディに感謝の言葉を贈った。
「え…でも、僕はただ…」
「ワドルディ、君はすごいよ。君がいなかったら僕は…ううん、みんなだって無事じゃなかっただろう。本当にありがとう」
ワドルディは顔が真っ赤になった。そして、カービィを疑ってしまったことを深く反省した。
「ねぇ、カービィ…」
「何?」
「実は僕…ちょっとだけカービィのこと疑っちゃってたんだ。ほら、あの時…」
「あの時って?」
「前の事件が解決したあと、カービィはみんなからお祝いされたよね? 僕だってカービィと一緒に頑張ったのに、相手にされてない気がしてさ…」
話すうちに、ワドルディは自分が恥ずかしくなってきて下を向いた。
「…きっとカービィは僕のこと無視してるんだろうって…そう思っちゃって…ごめん」
カービィは驚いた。
「そんなことないよ! 無視したりなんかしてない!」
「本当に?」
「本当だよ! ワドルディは僕のヒーローだ!」
ワドルディは胸が熱くなった。
そして思った。
(僕にとってのヒーローは、やっぱりカービィだよ…。カービィ、ありがとう…!)
「なんだ、ワドルディ、お前泣いてるのか! まったく、せっかくめでたいのに…」
デデデがからかう。
「そうだ、今夜はワドルディの勇気を称えて城でパーティーをしよう!」
デデデの提案に、皆は大賛成だった。
その夜の出来事は、ワドルディにとって忘れられない一生の思い出になった。
ここはあきれかえるほど平和な国・プププランド。今、この国ではある伝説が流れていた。
「ワドルディ、英雄カービィを救う!」
最初は悩んでばかりのワドルディだったが、行動を起こしたことで何もかも変わった。
『今の自分にできることを考える』という教訓を得たのである。
マルクは封印され、この世界からはいなくなった。これで今のところ世界は平和だが…
同じく封印されていたという騎士「ギャラクティックナイト」は、自分の強さを求めるある者によって復活された。このように、誰かがマルクを復活させれば、また悪夢は始まるかもしれない。
決してこの世界に安息は訪れないだろう。
それでも、カービィたちがいる限り、この国の平和は守られる。
そんな気がする。
〜完〜