あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: 想羅/投稿日時: 2012/11/15(木) 16:58:17
投稿者コメント:
書いちゃった(
うん、こんな駄文少しでも見てくれる方がいるなんて、本当にありがとうございます。
楽しみにしてるかは分からないけどまあ二話をどぞー
黒白星娘
「なんだ、人間じゃないのか…」

ふよふよと闇に浮かびながら捕食者は愚痴をこぼす。
溜め息混じりに球体を見る捕食者の瞳はなんとも気だるそうで。

正直こんな生物を見たことが無かった彼女ではあるが美味しそうには見えないらしく。
さっきよりも大きな溜め息をつき、闇を連れてその場から去っていった。


「よ、よかった…。」


ほっと一安心して構えをとく。
いつ食べられるかひやひやしていたのだろうか、汗びっしょりである。
そんな一難を乗り越えた球体はため息をつき、地面へと寝転んだ。

空の色は綺麗な茜色だ。
彼女のせいで見えなかった空はとても綺麗だった。

それが幻かと思うぐらいに。
この世界の空は美しかった。

森の中、行き倒れみたいな状態になって。
そんなこんなで色々あったけど、それら全てを忘れる位に、その空は澄んでいた。

風が心地いい、ああ、なんだか眠くなってきた。

空に飛ぶ鴉の影を見届けて、球体は眠りについたのであった。


あれから一体何時間たったのだろうか。
鴉の声は梟の声に。
空の朱は紺の色に。
太陽の光は月光へと。

夜空には忘れ去られた星の子達がただキラキラと輝いていた。


「ん?一体これは……?」

棒か何かで体をつつかれる感じ。
うっすらと目を開けて見えるのは黒と金色。

それと同時に意識は覚醒し
女性の声がして間もなく、球体はバッと起き上がる。

ホー、ホー、と聞こえるのは梟の声。
そして目の前に居るのは、金髪で、白いリボンがアクセントの黒い帽子を被って、黒と白の服を着ている。
それはもうすでに忘れ去られた、童話の中の魔女と言うべき格好の少女で。

「おーい、お前さん、大丈夫か?」

再度女性の声。
意識が覚醒したとは言え、まだ寝起きなことには変わりはない。

まずひとつ、確かめなきゃいけないのは。

どんな状況なのか、ということ。

回らない頭をめいっぱい回転させて、地面に目を向けて、考える。
今は夜、辺りは暗いし、お腹も空いてて、目の前の人に声を掛けられて焦っている、そんな状態であることがわかった。

でも、それだけだ。

「おーい?聞こえないのかー?」

また女性の声。
下を向き、考え込んでいた球体が顔をあげる。
黒白の服、魔女帽子、長い金髪…
この条件から絞り出されるこの世界の人物と言えば……!

目が覚めた。
それはもうすごい勢いで。

だって目の前に居るのは
あの『黒白』さんなのだから。

そしてこれまたすごい勢いで

「はいっ!聞こえてます!何でしょうかッ!」

返事をしてしまう。
だってあの黒白さんだ。

今、目の前に居るのは。
普通の魔法使い様なのだ。

その突然すぎる返事に相手は少しギョっとした様子で
ずり落ちそうになった帽子を被り直した。

そして一呼吸おいて、腰に手を当てて一言。

「ところで、お前誰だ?」

それはまあ、直球で当たり前な質問。
まぁ、そりゃそうですよねー。と内心呟きながらも、自身の名前である『想羅』と答える球体。
その名前を聞くと相手はいぶかしげな顔をしてすぐに聞いてきた。

「そんな名前、聞いたことがないな、新種の妖怪か妖精とか何かか?」

これもまた直球だ。

しかし今回は返答に困る。
妖怪でも妖精でも無い自分はどう答えればいいのだろう。
これは、異世界から来た妖怪とでも答えておけばいいのだろうか。
それともこのまま黙ったまま過ごす…?いや、それは無理だろう。
ということで前者を採用した。

信じてもらえるかは、別として。

「えっと…異世界から来た妖怪、みたいな者ですー。悪さはしません!命に換えてもいいです!」

言い訳のようにも聞こえるが事実だ。
そして、この世界の住民は、球体が知る限りではこんなこと日常茶飯事である。

そして案の定、妖怪と聞いて彼女の眉がピクッと動いた。
妖怪退治を生業とするのだから警戒心を抱くのは当たり前である。
しかし悪さをしないと分かったようだ。
以外にもものわかりが良い。
とりあえず、いきなり魔砲を撃たれることは無さそうだ。

妖怪かぁ〜、と呟く彼女にはもうこちらを疑っている様子は無いようだ。
もっと尋問されるのかと思いきやそんなこともなかった。

「なんでこう、うちには妖怪が集まるんだろうか…。」

魔女の漏らした愚痴はしっかりと聞こえた。
同時に迷惑そうな視線を球体に浴びせる。
すごく居心地が悪い。

魔女はそれでもまた考える仕草を始め、
しながら、聞いてきた。

「お前、此処が何処だか分かるのか?」

異世界の者が此処の地名を知るわけがないのだから。
この質問も当たり前である…が。

生憎のこと、この球体は知ってしまっている。
だから、『魔法の森』なんて言ったら今日の寝床は頂けない。
寝床は確実に確保せねばならない。
自分がいきる為にも。
ならばここは嘘をつくしかない…。

「うーん、分かりません。」

困ったような顔をして。
ここでひと呼吸おく。

「そしてすみません、一晩泊まらせてくれないでしょうか?」

幾らなんでも突然すぎるよねうん。
しかし球体は止まらない。

「この森から出ようにも出られないし出たところで行くあても無いので…。」

こじき同然である。

「いえ!勿論ある程度はお仕事の手伝いなどはさせて頂きます!」

沈黙がその場を支配する。
哀しげに泣く梟は球体を哀れんでいる……訳などなくて。

必死に頼んでみたものの……。
返事はノーの可能性が高い。
さぁ、果たして……

少しの沈黙の後、魔女の下した判決は

「そこまで言うなら良いぜ。」

えっ良いの、と球体は内心呟く。
なんと魔女はあっさりとオッケーを出したのだ。

しかし、と魔女は続ける。

「けどここから私の家までは少しばかり歩く、それでもいいなら良いんだぜ。」

全然構いません!といいながら球体は首を(そもそも首があるのかも分からないが)縦にぶんぶん振りまくった。

それを見て魔女はあっ。と小さな声を出し。

「おっとそうだ、自己紹介をしていなかったな。」

帽子を整え、腰に手を置く。

夜空の星々が一層輝いたその瞬間。

一呼吸置いて彼女は名を言った。

「私は普通の魔法使いの魔理沙。霧雨 魔理沙だ。」

意地の悪い笑みを浮かべた魔理沙は箒にまたがった。
乗れのサインってあれ、歩くんじゃこれ飛ぶんじゃ……あ、月だー。

「飛ばして行くぜッ!」

それはまるで流れ星のように飛んでいた。
ていうか下見たら死ねるよこれ。

高速で走るバイクなんて比じゃない。
未知の速さに乗っかっている。

正直、怖い。

さてそんなこんなで球体は霧雨邸にお邪魔することになった。
その様子を見届けた1つの影は夕闇に溶けるよういなくなる。


森は少しだけ、静かになったのだった。

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