2.雨にはご用心
次の日ー。
塾が長引いたせいか、時間がかなり遅い。
それでいって雨。最悪だ。
いまにも壊れそうな折りたたみ傘をクルクルと回しながら里奈は、誰もいない帰り道をゆっくり歩いていた。
折りたたみ傘に雨の粒が落ち、軽やかな音を鳴らす。
里奈は、その音に夢中で、首輪を付けた猫がそばでこっちを見つめていることに、気がつかなかった。
しかし、人らしい足音が聞こえてくると、里奈はパッと足を止めた。
前から人影が見える。歩いている。
そして、すれ違った。
その人影は、思ったよりもぐんと小さかった。
びしょ濡れになった猫の耳のパーカーを頭からすっぽりとかぶっている。
まさか、この子、猫耳少年…?
顔は隠れていて、よくわからない。
怪しいと疑うのに、ついその少年に目がいき、声をかけようと手を伸ばした…、そのまえに少年はこちらに振り向いた。
「ご、ごめんね…」
少年は里奈の言葉を無視した。
でも、少年は確かにこちらを見つめている。
さっき里奈が見逃した猫が少年の足にすりついた。
そしてひとことにゃあ、と鳴いた。
猫耳少年は猫を抱っこしながら、いなくなった…いや、まばたきしたとたん、姿を消した。