第一話 始まりの汽笛
ピンポンパンポ〜ン!
「三番艦‘ビィチ・タッカー’が到着致しました」
アナウンスの音が流れる。
「二番艦‘ドイアラカ・エビィ’は、少々遅れています。」
「俺がのる船、遅れてるってよ。 ハァ…。」
「さあ、マイジュニアよ、準備をするのだ!」
「ハハー、マイファザー!」
陽気な喋り声で、港が騒めく。
「五月蝿いなぁ〜、全くよ〜。」
なかには、バツの悪そうに険悪な表情をする者もいる。
「行くか… 三番艦て、ここだよな〜? 」
船の横壁に大きく「T」と書いてある船の前で、立っている黒い少年がいた。
「うん、棒が三本あるから、きっとそうだ、これでアイスクリームアイランドへ行けるぞ! 」
少年は、歓喜のあまりその場で飛び跳ねた。
「三番艦、一番艦、出発いたします。」
アナウンスが船の出発を告げる。
「やべっ、乗らなきゃ。 」
黒色の少年‘カーボン’は、船に駆け込む。
電車が駆け込む乗車ならば、この行為は駆け込み乗船だろうか?
船の力強い汽笛の音が、鳴り響く。
そうして、カーボンが乗った一番艦は、大海原に向けて、出航した。
第1話 〈 非現実との 出会い 〉
船が出航してから、2時間くらいたっただろうか。
当たりの天気は、強いて言うなら最低、空には雷雲が広がっている。
--ゴローン!
響いた雷鳴に、乗客は動揺する。
ある者は「怖い」と嘆き、又ある者は、興奮している。
「雷、かぁ…。」
カーボンが、空を見上げながら呟く。
(稲妻ヨ… 我ニ力ヲ…)
不気味な声が、不意に辺りに響く。
乗客たちの顔が、更に引きつる。
「何だ! 何だ! 」
ある男が、思わず声を上げた。
(唸レ、稲妻ヨ…… 我ニ力ヲ…… 雷襲…… 斬り!)
声からして、男性だろうか--。
「まただ… 一体何だ! 」
「見ろ! あそこに人が浮かんでいるぞ! 」
ある男が指差した方向に、目線が注目する。
そこには、魔術師みたいな黒いローブで全身を包み込んだ人物が。
紛れもなく 浮かんでいた--。
「きっと何かのトリックだぁ! 」
KYな少年が、危機感が全く感じられない声で叫ぶ。
その瞬 間 に 悲 劇 が 起 こ っ た 。
黒ローブの男が、ローブの中から手を出す。
その手には、刃も 持ち手も血みたいな紅色をし、帯電している剣が握られていた。
(最初の裁き、我らが教団の繁栄のため、ターゲット『カーボン・エクリプス』)
黒ローブの男の叫び声--。
「俺ぇ! 嘘でしょ! 何かしたか? まあそりゃ少しくら…」
カーボンがそう言い終えないうちに、黒ローブの男が空からカーボンに向かって急降下する
。
「っ!」
カーボンは舌打ちをし、右方向にとっさに転がった。
つもりだった……。
横たわってる、紅色に染まった球体--。
こんな簡単に、人生って終わるのかよ……。
「こっぴどくやられちゃってる。」
うっすら、聞こえる声……
「recovery 復元!」
痛みがだんだん、収まっていく。
数分後、痛みが完全に無くなった。
カーボンは、目を開け、立ち上がった。
そこには、片手に杖を持ち、黒ローブの男と対峙している桃色の球体の姿があった。
その杖は、純白で、輝きを放っていた。
「教団、君らが動くのを待ってたよ。」
桃色の球体が、黒ローブに言い放つ。
だが、黒ローブはその一言を聞き流し、数メートル先にいる桃球に飛びかかる。
「雷… 襲… 斬り! 」
男の剣は、帯電する。
「void! 効力無効!」
桃球がそう呟き、男の剣に杖を向け、杖が発光する。
男の剣の電気が消える。
「might 効力増加!」
桃球が、また呟くと同時に、杖が淡白い光を帯びる。
そして、桃球と、剣の雷を失った男が、50cmほどの距離になった。
桃玉は、体を捻り、その反動を利用し、杖で剣を振り払う。
男の剣は粉砕し、更にもう一回、桃玉は杖で振り払う。
その杖は、黒ローブの男にあたり、その男を8m程吹き飛ばした。
乗客は、唖然としながら見つめている、最先端の科学でも、このような真似は出来ないのだ
から--。
それは、二人が、超人、特別な力を持っていることを意味する。
もちろん、カーボンも唖然としながら見つめている。
「これ以上の戦闘はきついな… クカカカカ! 」
黒ローブの男は、そう言い残し、浮上していった。
「待てっ」
桃球が、叫んだが、黒ローブの男は、すでに、視界にはいなかった。
「さあ、本題だよカーボン君、ちょっと人気がないところに来てくれないかい? 」
桃球が振り返り、不意に話しかける。
「silent 無音!」
桃球が、叫ぶ。
「これで、君と僕の会話は、誰にも聞かれない。」
「なんなんだよ、さっきからずっと喋ったら何かが起こる魔法は? 」
桃球が口を開こうとしたが、それを遮るようにカーボンが喋る。
「だ〜、僕の名前はピンクね、魔法っぽいのは能力っていうのかな?」
「ふ〜ん。」
カーボンが相槌を入れる。
「話したいことがいっぱいあるんだけど、能力、教団とか、色々。」
「まずは、能力から、、世界に住むごく一部の人類が能力に覚醒し始めている、能力には素
質があって、素質が高い者ほど、目覚めやすい。 目覚めるには、きっかけがいるんだ。
例えば、怒り、憎しみなどね。 それで、能力には系統というのがある。
僕は光系統、さっきの黒ローブは雷だね。」
「それで、何で言葉をつぶやくと何かが起こるんだ? 」
話が途切れたところで、カーボンが訊く。
「key word… 自分の力を引き出すための言葉さ。 能力の系統は、自然系五種類、火水電
土風 存在系 光闇、物理 の八系統から成り立つと考えられている。」
「考えられている?」
「ああ、まだ新しい系統が発見されるかもしれないからね。」
「次は、教団について、まだよくわかってないけど、世界をひっくり返すほどの力、
聖界のマルク や、第四世界のダークマインド 在処不明のゼロ などを手に収めようとして
いる、なぜかはわからないけどろくなことじゃないと思うよ。 」
「そして、計画を邪魔する恐れがある、素質が高い能力者を、消しているそうだ、しかも、素
質が高いヤツだけな。」
それは、カーボンには素質がある、ということだろうか?
「君は、また狙われるかもしれない、この僕に、ついてきてくれるかい?」
辺りが、沈黙する。
「それで生き延びられるんなら…。」
カーボンの返事、それは、ピンクについていくということ。
「OK! まずは、君と同じような境遇の人を、集めないとね☆!」
「silent 解除!」
船の汽笛の音が鳴り響く。
「さあ、ちょうど到着したみたいだよ、行こうか。」
ピンクがカーボンに問いかける。
「ああ、アイスクリームアイランド、楽しみにしてたぜ!」
カーボンがガッツポーズをする。
「へ…、ここ、アイランドアイスだよ、アイスクリームアイランドは、三番艦で、これは、一番艦
。」
「嘘だろ… いや、確かに船に書いてあった文字では、棒が3本あったぞ。」
カーボンのやる気が、一気に抜ける。
「ローマ数字、読めないんだね…… 」
End