そろそろ
あれからどれぐらい経っただろうか。
梅の花は綺麗に咲き、枝垂れ桜にはつぼみもあった。
あかねはいつもの様に流星を誘って遊びに行く。
今日は少し遠い公園まで行くと約束していて、2人とも心を躍らせていた。
いつの間にか3月21日までも残り日数が少なくなってきた。
時計は午前8時を指している。
青空の下、あかねと流星が出掛けに行くのを、おじいちゃんとおばあちゃんは見守っていた。
行く途中、あかねと流星は楽しそうに話していた。
遠くの公園まで着いて、2人でボールで遊んでいた時だった。
流星が突然口を開いた。
「そういえば、あかねちゃん、スーパーデラックス買えたの?」
「あぁ、まだ買えてないんだよ。あとで貯金箱の中身を確認しておこうかな。」
陽気な気分で2人は話していた。
その時、空にあのきらめきの六角形が横切った気がする。
そう。マルクだ。
「あぁ!マルク!」
あかねは思わず叫んだ。
「ん?なんなのサ〜 あ、キミか!」
マルクは言いたいことがありそうな表情だった。
「あかねだよ。ところでそろそろマルク誕生日なんだな。」
「あぁそう。」
しばらく無言の時間が続いてしまい、3人は沈黙していた。
しかし、マルクが口を開いた。
「あの時はごめんなのサ。」
「え…?」
あかねと流星は焦った様に言った。
「ボクは…スーパーデラックスが欲しかった。でも、買うのを後回しにしていた。どうせ手に入ると思ったんだぜ。」
「え…そうなのか…」
あかねは驚きのあまり、それしか言葉が出なかった。
「そのうちに、いつの間にか何十年の時が経っていた。そのせいで、現代なんか。スーパーデラックスなんて手に入れるのは難しくなっちゃったのサ。」
「そうだったよね…あかねちゃん現代から来たんだったよね」
流星もここでやっと喋った。
「結局、1人で1996年で買おうと思ったけど、マルクが現実にいるなんて思った人なんていない。つまり買いに行ったらみんなびっくりってことなのサ。」
「あぁ…そうだったのか、、だからわざわざマルクファンの自分をこの年に連れてきて、スーパーデラックスを買ってもらおうと思っていたのか。」
「そうなのサ…。ごめんな。」
流星はこの出来事を初めて知ったので、かなり驚いた表情をしていた。
しばらくして、あかねが言った。
「いや……全然良いんだ。この年に来ただけで、友達いっぱい出来たし。楽しかったことばかりだ。」
「ありがとう…。なのサ。」
「用事があるから。じゃあね」
あかねと流星はマルクに手を振って、2人で語り合って歩いて行った。
マルクはその姿から目が離せなかった。
あかねと流星は、あかねの家まで行って遊んだ。
ついでに、あかねは貯金箱の中身を確認した。
中身は、5000円。
「!?まじか!やったーー!」
あかねの声が家中に広がった。
スーパーデラックスを買えるお金があるのだ。
流星に伝えて、早速カセットを買いに行った。
「値段は4000円です。お買い上げありがとうございました。」
店員さんが言って、あかねと流星は店を出た。
「ついに買えちゃったね。」
「うん!」
2人とも嬉しさのあまりウキウキで家に帰った。
心が躍って、とても遊ぶのが楽しみだった。
スーパーファミコンは、流星の家で貸してもらえる様だった。
今日の夜のことだった。
あかねは布団に入りながら、今後のことを考えていた。
「もう帰らなきゃなのかな。スーパーデラックスも手に入れたし。」
少し悲しそうな顔だ。
そう呟いて、目を閉じた。