ノート16不公平な運命
魔法学園はかなり大きい。L字型の校舎に、複雑な寮。
「ふー……」
レイとエガは、同じ部屋で荷物を片付ける。
一方キャメルは、女子寮で、
「同室の子っていないのね…」
こちらも、持ち物を整理している。
『あれ……私、何してたっけ?』
キャメルが目を覚ますと、あのフードを被った人物が、同じ部屋にいる。
『なんでここにいるの!?』
返事はない。ただ、ゆっくりと、キャメルに接近している。
『出てってよ!』
『………』
キャメルは段々、苛立ってきた。
『私、あんたと関わって無いんだけど!何か言いなさいよ!』
『…げて…………逃……』
『え?』
フードの人物が何か言い残すと、灰のように消えた。
「え……」
とある異国の国。其処に、誰もが息を飲む程の可憐な美少女と、精悍な顔立ちの美少年が地下室に、1年間程、幽閉されていました。
「寒い……」
「…お腹、空いた…」
二人とも、鎖に繋がれ、体は痣だらけです。
その二人は、双子の様です。いつ、親が来るか、怖くて、怖くて、部屋の隅に居ました。
「お兄ちゃん、怖いよ…外に出たい…」
お兄ちゃん、と呼ばれた男の子は、妹でしょうか、女の子の頭を撫でます。
「大丈夫、お兄ちゃんがいるよ…ねぇ、外に出れる方法見付けたんだ」
男の子は、立ち上がると、部屋の中を探索します。
「あった!」
見つけたのは、双子の母親のピンで、錆びてるけれど、使えそうです。
「これでよし、と」
妹の手錠の鍵を外し、足の鎖のチェーンを壊すと、ピンも壊れてしまいました。
「いい?お母さんかお父さんが来たら、ドアをすり抜けて、家から出るんだよ、いいね?」
「分かったよ!」
念を押した兄に、にっこり頷く。
ドアが、ガチャ、と言った。
「今だっ!」
「……!!!」
女の子は、全力で、親と、ドアの隙間をかいくぐり、外に出た。
その女の子の行き先は、誰も知らない。
あの笑顔は、兄の頭に焼き付いて、取れない。
苦しくなる。
無邪気の裏が。