第15話:だいこうじょう(こうへん)
《BGM:はつでんしょけんがく》
「うぐぁっ!?」
コンピューターの管理をしていたワーカーズは、突然蹴り倒された。
「かばん!これ持っとけ」ツチノコは頭に大きなコブを作った敵のホルスターから、光線銃を取り出して手渡す。
「えっ...それって」
「奴らと戦うんなら、これくらい持ってたほうが良いだろ。さて...今度はこれをぶっ壊さないとな」
巨大なマシンが、メンテナンスルームの中央に座っている。どうやらこの装置が、工場全体のエネルギー源となっているようだ。
「よーし!行くよー!」
「待て待て!もしかしたら...」近くにあったペンが、装置に投げ込まれる。
バチっ。一瞬虹色の膜が現れたかと思うと、ペンは跡形もなくなっていた。
「あ...あんなことになってたかも...」
「気をつけてよ、サーバルちゃん...」
「でも、どうする?ふつうの攻撃ができないし、バリアをなくさないと...」
「そうだ!カービィさん、さっき光の球でスイッチを作動させましたよね?」
(バリア?スイッチ??)
「うん、そうだけど?」
「たぶん、その球って電気じゃないかなって。だから、それをもっと大きくして、ぶつければ...」
「そっか!バリアもやぶって、マシンもこわせる!」
カービィは再び、両の手を突きだした。小さな光の球が現れる。
「おっきくな〜れっ!」
更に念を送ると、球体は大きくなり、妖しく光を放ち始めた。
「わあ!すごーい!」「なんだありゃ...」
カービィが目配せをすると、三人は同時に頷く。
「“エレクトリカル...ムーブ”っ!」
巨大な光球は、バリアを突き破り、マシンに直撃した。
「やったぁ!」
しかし喜んだのも束の間...突然工場が揺れだし、非常ベルが鳴り響いた。エスパーの能力により、過剰な電流が流れ、全機能がエラーを起こしてしまったのだ。
《BGM:『タチカビSR』恐怖のマグマ火山》
「まずい!脱出だ!」
「動くな!全員手を挙げろ!」“できたて”のワーカーズ達が部屋の出口を固める。
「とーっ!」カービィはサイコキネシスで全員吹っ飛ばし、通り道を作った。しかし、それでも次々と増援はやってくる。
「カービィ!ルートは?」
「きた道をもどって、それからひだり、うえ...まっすぐ、みぎ、まっすぐ!」
四人はワーカーズ達の猛攻をかいくぐりながら、工場の出口までの道を強行突破した。
「戦うにも数が多すぎるよ!」
(何だか胸騒ぎがする...ここまであいつらしかいないが、もしかして...)
やがて、大広間に辿り着く。ここまで来ればあと少し、というその時だった。
「ひっ!」
先頭を走っていたカービィが、短く声をあげた。彼の目の前を、一条の光線が掠めたからだ。
「手こずらせやがって...あとは頼んだぞ、『セキュリティサービス』!」
と残りのワーカーズが叫ぶと、天井から3体のロボットが、サイレンを鳴らしながら降りてきた。
「なんで...メタルジェネラルが...ここに!?」「知り合い!?」
カービィの脳裏に、エッガーエンジンズでの死闘が浮かぶ。さまざまな兵器を駆使し、果ては巨大なミサイルやロボットまでも呼び出した、強敵だった。流石にHR-D3の気配はないが、限りなく近い敵が今は3体もいる。
セキュリティサービスたちは早速、ミサイルを放ってきた。四人は別々の方向にかわし、カービィがサイコキネシスで相殺する。
「うみゃ〜っ!」サーバルは1体に強烈な一撃を叩き込んだ。
「気をつけて!そいつ、剣ももってるよ!」
「えっ!?」見ると、セキュリティサービスはビームサーベルを抜こうとしていた。
光の刀による一閃の瞬間、サーバルは高く跳んだ。
当然、空中では自由が利かない。
――あれ?なんだろ、このイメージ...
警備ロボットは、虚空で身動きのとれない侵入者に無慈悲にミサイルを放つ。
――えっ...
「みぎゃあぁっ!」
――嫌だああっ!
「わああぁぁーっ!」いつの間にか、カービィはサーバルとセキュリティサービスの間にテレポートしていた。
「“預言者の...見きわめ”えぇぇーっ!」
彼の体から、強烈な念動波が放出される。セキュリティサービスの1体は跳ね返ったミサイルをまともに受け、他の2体も大きく吹っ飛ばされた。カービィはぜえぜえと息を切らしながら、3体のまん中に着地。
「カービィ...今のなに!?」
「...わかんない...ぜえぜえ...」
「所詮は量産型か......いや、まだだ」
セキュリティサービスたちが、黒煙を上げながら四人を取り囲む。赤いボタンを取りだし、叩いたかと思うと......警備ロボット3体は、爆発した。
『!!!』
とたんに、辺り一面は火の海となる。
「わあぁっ、熱いよ怖いよ!助けてかばんちゃん!」
「っ...あいつら、あんなかくし球まで...」
「...カービィさん!僕たち全員で、工場の外までテレポートできますか?」
「わかん..ない...でも...やってみる!」
カービィは呼吸を整えて、四人で手を繋ぐよう促した。
「これでいいのか?」
「うん。じゃあ...いち、にの...さぁんっ!」
炎が迫ってくる直前で、四人の姿はふっと掻き消えた。
「危なかった...」
振り返ると、あの忌まわしき工場は音を立てて崩れ落ちていた。
「あぁ...大事な遺跡が...」
「でも、無事に脱出できて良かった...ね、カービィ...さん...?」
カービィの呼吸が乱れ、苦しそうだ。両手の光も消えそうになっている。
と、カービィの青い帽子がだんだんと透け、やがて消滅してしまった。
「カービィ!大丈夫!?」
「力を使いすぎたのか...?」
不意に、そこに1体の赤いセルリアンが現れた。最悪のタイミングだ。
「こんな時に限って...!」
やがてカービィが目を開くと、そこには赤くて、半透明で、弾力のありそうな大きな物体が。彼は汗――ではなく、ヨダレを垂らした。
「巨大...イチゴ...ゼリーだ〜っ!!いただきま〜す!」
「あっ!だめだよ、カービィ!」サーバルの制止も聞かず、カービィはセルリアンへと走っていく。
「あのヴァカ...!」
しかし、次の瞬間、サーバルたちが目にしたのは...フレンズたちからは想像もできないような光景だった。
カービィが内部から、セルリアンの体を食べている。やがてセルリアンが体の形を保てなくなっても、カービィはセルリアンを食べ続けた。
「ぷはー!おいしかった!...あれ?みんなどうかした?」
「か、カービィ...お前、セルリアンに食われるどころか、食ったのか!?」
「え?さっきのがセルリアンだったの?」
「お前...一体何者だ!?」
ふと、車のエンジン音が聞こえる。誰かが乗っている訳でもないのに、ロボボがトレーラーを引いて遺跡の出口側からやって来た。
「ロボボ!どうして?」
「ぼくたちがここにいるって、どうして分かったの?」
「何だあいつ...?」
「ロボボアーマーです。カービィさんがあいつらから奪った乗り物ですよ」
「あいつ...」ツチノコはしばし考えた様子だったが、
「おい、カービィ!今パークを救えるのは多分お前と、その二人だけだ。是非そいつらに、力を貸してやってくれ!」と告げた。
「うん!」
カービィ達はロボボアーマーのエンジンを吹かし、崩れ落ちた大工場を後にした。
「ケイン所長!たった今第1大工場が崩壊したわよ!これはどういうワケ!?」
「何ですとォォ!?嘘だァァ、まさかまたヤツラがァァァ...」
「だーから警備を強化しとけって言ったの!K-1029はマザーコンピュータに任せておきなさいって言ったでしょ!!」
「ももも申し訳ござぃませんッッ!」
「...まァ、過ぎたコトを引きずっても仕方がないわ。K-1029をこちらに転送して。今夜にでも出撃させるわ」
「そ、そんなムチャなァァ...」
「つべこべ言わないの!メインラボでは、二の轍を踏まないでよね!」
「了解ィ...はァァ...」
スージーの背後で、転送装置が輝き出す。
「あのゲンジュウ民...コレを見たら、どんな顔をするでしょうね」