15話「花舞う星へ」
翌日。
「「「「 うーーーん…… 」」」」
勇者たちは、揃いも揃って悩んでいた。
「来太が見た情報によると、次は『クローンの王女』に会わないといけないんだよな……」
「そんな者おったかのう……?」
「こちらの世界の人かしら。分からないわ」
誰も、何も思いつかない。3人寄れば文殊の知恵―――とはいかない様子だ。
ふと、勇者たちから少し離れた場所にいた小沢が、何の気なしに口を開いた。
「――――花舞う星、暗き光の満つる地へ」
「……なーに、それ?」
キービィが質問を投げかける。
「分からない。でも……なんか、降りてきた」
「あっ!見てください!ファイルに反応が!」
小沢の言葉を聞いてか、ファイルが今までにない青白い光を放っている。
「じゃあ〜、きっと小沢さんが言う通りの場所なんでしょうね〜。岐部さん、どう思います〜?」
「うん、僕もそう思うよ」
「うふふ〜」
「花舞う星だと……フロリアのことか?」
「そうだ!きっとそうだよ!」
メタナイトとキービィには、場所が分かった様子だ。
「でも、あそこに行くにはワープスターが必要だよ。あれ、こんな大人数乗れないよ?」
「任せろ。出でよ、ハルバード!」
メタナイトの一声で、どこからか巨大な空飛ぶ戦艦がやって来た。
「これなら、この人数は余裕だろう。皆、身支度をして乗れ!」
「「「 わーーい!!!! 」」」
勇者たちが、身支度をしている合間。
「昌幸……ちょっといい?」
「なんですか?」
小沢が岐部を部屋の外に呼び出した。
「ねえ、まだあの女の子のこと信じてるの?」
「女の子って……綾里ちゃんですか?」
岐部は訝しそうな顔をしている。
「そう。あの子、絶対怪しいよ!昌幸、騙されてるよ!」
「怪しいって、何を根拠に……」
「昨日の夜、綾里ちゃんがこっそりファイルを見てるの、見ちゃったんだよ!普通あんな隠れて見ないよ?」
「何言ってるんですか。僕らは仲間ですよ?ファイルくらい見てもいいじゃないですか」
「でも、だったらあんな深夜に見る必要ないはずじゃん!それに手に…」
小沢はもう少し話を続ける様子だったが、岐部が遮った。
「小沢さん、いい加減にしてください。あの子に限ってそんなことある訳ないじゃないですか!折角みんなで一致団結して冒険しようって言うのに……らしくないですよ」
岐部が一喝して、部屋に戻って行く。
「…………あの子は……絶対、何かあるのに」
小沢も納得のいかない表情を浮かべつつ、部屋に戻って身支度の続きを始めた。
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湯煙に霞んだ幻想郷の景色が、白く揺らいで二人を照らす。
「……お風呂、入らないの?」
肩まで温泉に浸かってくつろぐ麻疹とは裏腹に、石の上に座って外を眺める黄桃の表情は暗い。
「ちょっと、考え事です……」
「……勇者たちのことね」
「はい……」
その面持ちを察してか、麻疹も少しトーンを落とす。
「カズミールが教えてくれたわ。彼ら彼女らは今、進むべき道に迷っている」
「ええ。導きが必要なのは分かっているんですが……この状況では夢幻魔導に限界があるので、全員に道を指し示すことは出来なくて……」
「限界?」
「今は、彼らとの次元が離れすぎているので……マルスたちはともかく、他の勇者たちに伝えられるかどうかが微妙なんです。もう少し近くの次元に行ければ大丈夫だと思うんですが……」
「……難儀なものね」
悩む二人。空に浮かぶ星々に、雲が掛かって翳りはじめていた。
「………麻疹さん、その……肩、凝りませんか?」
「別に。どうして?」
「いや…………お胸が」
「……はあ?」
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戦艦ハルバードにて。雲が超高速で流れていく。
「うわぁー!すごい景色!」
「綺麗です〜」
初めて見る空の景色に、心を躍らせる勇者たち。
しかし、小沢の表情は浮かない。デッキでぼんやりと空を眺めている。
「…………そうだ」
ふと思いついた。あの二人なら、自分の考えを理解してくれるのではないかと―――――
「諏訪子ちゃん、ナチュレさん、ちょっといい?」
「んー?何かあったケロ?」
「何じゃ?」
「……聞いてほしいことが」
そう言うと、二人をデッキへ呼び出した。
小沢は、先ほど岐部に語ったことのほとんどを話した。
綾里を怪しんでいること、綾里が夜中にファイルを見ていたこと、やましいことがなければ堂々と見られるはずだということ――――――
「なるほどな。そなたの言い分はよく分かったぞえ」
「あーうー」
「…………神様の二人なら、きっと信じてくれると思って……どう思う?」
間を置いて、直接質問をぶつけた。
「諏訪子も最初は、ちょっと怪しいと思ってたケロ」
「我もじゃ。少し普通の者とは違うようじゃな」
「本当に!」
「ただのう……そこまで素行も悪くないようじゃし…」
「ケロ。特に悪いことはしていないし、仲間として許してあげてもいいと思うケロ」
「……そっか…。ありがとう」
望んだ意見は得られなかった。二人がデッキを後にする。
「………どうしてみんな気づかないんだろう……」
ふと見上げた空に、丸い形の雲が浮かんでいた。その雲の周りを多くの雲が流れていく。
「……あの雲が、俺か。周りに取り残されてら…」
つい数時間前まで滞在していたカービィ宅は、もう見えない。フロリアへの道はまだ、遥か先――――――――――――
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深夜、泣く子も眠る丑三つ時。カービィ宅のリビングに、うごめく影があった。
「さて〜……“アレ”は、どこかしら〜…」
ごそごそ、ごそごそと辺りを物色する。
「う〜ん…あ〜、あった〜!」
その手には、勇者たちが必死に集めたファイルが握られていた。
「……あれ〜?ガードがしてある〜…魔法陣?」
ファイルはロゼッタによって、魔法の力で固く閉ざされていた。
「なるほど〜、あのお姫様、賢そうだもんね〜……でも、これくらいなら余裕なんですよ〜♪」
いとも簡単にガードを解き、ファイルを開ける。
「どれどれ〜……ふむふむ〜……」
ファイルの内容をくまなく調べ、手に持った四角い機械でスキャンをはじめた。
「ふふふ〜♪ふふふ〜……♪」
スキャンも半ばまで完了した、そのときだった。
\バタン!/
「ふわぁ……っ!?綾里ちゃん!?」
たまたま下の階に降りてきた小沢が、その影の正体を見たのだ。
「あっ……小沢さん〜、どうしたんですか〜?」
咄嗟に、ファイルと謎の機械を身体の裏に隠した。
「……今、ファイル見てたよね?」
「見てませんよ〜?」
「嘘だ!絶対見てたじゃん!」
「見てませんって〜」
のうのうとしらを切る綾里の姿に、小沢が問い詰める。
「何でファイル見てたの?こんな夜中に……見たいなら、見たいって言ってくれればいいのに」
「中身は見てませんよ〜、ファイルにかかってた魔法陣が気になって〜…いじってたら開いちゃったんです〜、ごめんなさい〜」
綾里が申し訳なさそうな表情で謝罪する。
「……しょうがないなあ…もう夜遅いから、綾里ちゃんも早く寝た方がいいよ」
「わかりました〜、ありがとうございます〜」
不思議な表情を浮かべながら、小沢は部屋を後にした。
「……危なかった〜。さて〜、続き続き〜♪」
小沢が出て行ったのを確認した綾里は,引き続きファイルのスキャンをしはじめた。
「♪〜♪〜〜♪〜」
数分も経たないうちに、スキャンが終了した。
「……よし。送信っと…これで大丈夫。これで〜、データはこっちのもの〜♪」
何事もなかったかのようにファイルを元に戻し、綾里も寝床についた。
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【あとがきのコーナー……φ(。。)】
・今回,全くストーリーが浮かばず……結構お時間をいただきました。
生みの苦しみというやつです…生まれたら生まれたでどんどん出てくるので一気に書き殴りました。←
・小沢さんにちょっと「神の転生者」っぽい要素を付けてみました〜ご参照あれ。
・ミリ知らのカービィ知識で乗り切ろうと奮闘しています。どうか知識面での補填をお願い致します……m(_ _)m
・お風呂の件は……黄桃さんごめんなさい。某メ○ファンに書かされました。←