今日からお前は『バンダナワドルディ』ゾイ
「あー…キツい……」
いつものように、沢山のワドルディがデデデ城を掃除していく。ワドルディは何も考えずに、ただひたすら、デデデという大王の命令に従っている。しかし、そんな命令がだるく感じているワドルディが1匹いる。そのワドルディは「早く終わりたい」と思いながら掃除を行う。
「…………………」
そして突然、ボーッとする。ちょっとしたことを思い出していた感じだった。それは、自分達が日々やっていることがだるいかと他のワドルディに聞いてみた出来事だった。
『ねえ、みんなは大王さまの命令に従ってきているけど『嫌だなあ』とか思ったりしないの?』
自分が思っていることを他のワドルディ3匹に口にして言ってみる。ワドルディ3匹はお互いを見てキョトンとする。
『なにいってるの?』
『ボクたち、こんなことして楽しいっておもってるよ』
『キミっておかしいね』
そして、3匹は仕事へ戻っていく。
『こんな、ボクが…おかしいの……?』
自分には理解が出来なかった。毎日毎日同じことをしてきている。それが辛いと思ったりするのがそんなにおかしいのかと思っていた。
「……る? 聞いてる!?」
「え?」
ずっとボーッとしていて、それに「おかしいこと思うね」と指摘してきた。彼は自分が思っていたことがおかしいと言われ「やっぱり、ボクはおかしいのかな?」と不安な気持ちになっていた。
*
「ワドルディ、出動ッ!」
ワドルドゥ隊長の掛け声と同時に、ワドルディ1000匹以上が、一斉に動き始める。しかし、1人きりのワドルディは動こうとしなかった。
「…………」
そのワドルディを見つめるワドルドゥ隊長は何かを考えていた。
*
「今日はここまでだ!」
訓練らしきものは終わり、ワドルドゥ隊長はワドルディに話し掛ける。
「ちょっといいか?」
「えっ? ボ、ボク?」
怒られるんじゃないかと不安になりながら焦り始める。だが、隊長は説教をする訳でもない。ひとまず、誰もいないとこへ移動する。
*
「どうしたんだ、考え事をして」
「ボクって、おかしいのかな?」
「突然なんですか」
「…ボク、この仕事をしてきてるけど、毎日がつまらなく感じてきていて…。それを、みんながおかしいって言って……」
話を聞くと隊長は「そんな事か」と思っていた。だが、ワドルディには苦しかった。同じ種族なのに1人ぼっちでいる。それがとても辛かったみたいで、涙がボロボロと溢れ出てくる。
「ひっぐ…ボクは……ボクは!」
「ひとまず、城に出たいってことか」
「どうしてそれを?」
「わたしは色んなワドルディを見てきた。その中で城から抜けていったワドルディがたくさんいる。」
「…そんなこと考えている仲間がいる!? なら、ボクもそこの仲間に……!」
こうして、ワドルディは城から抜け出すことを決意した。そして…夜になり、ワドルディは眠り始めた。それから数分が経つと、寝たふりをしたワドルディが荷物をまとめる。
「持っていくものはこれしかないけどいいかな…」
そして、窓から抜けて城から脱出することにした。
「誰もいないかな?」
辺りをキョロキョロし、いないと確認し、静かに城から抜けていこうとする。
「大王さま、今までありがとうございました……」
城から抜けるその時だった。「何してるゾイ」と聞き覚えのある声がした。振り返るとそこにはデデデ大王がいた。
「大王さまっ!?」
「お前もここから出て行くのかゾイ?」
「……ボクは決めたんです。こんな辛い日常はもう嫌なんです! だから、ボクはここを出ます! 色々とありがとうございました……!」
そして、その場から去ろうとするが「待つゾイ」と止められた。
「止めないで下さい! ボクは決めたんです!!」
「………!」
ワドルディの目は本気だった。だが、ここから離れたくないという悲しい気持ちが涙に表されてもいた。
「ボクは…決めたんです……」
デデデが一息、ため息をつき、ワドルディの頭をポンッと撫でる。
「え…?」
「お前が決めたんならワシは止めはしない。頑張ってこい……」
「……………!!」
いつもの口癖が消えていた。それは、本気の言葉だった。そんな言葉で涙が止まらなくなる。その時、気付いた。周りの人達が嫌いと思っていたが、自分がこんなことで悩んだりしていた自分が大嫌いだった。
「大王さまっ……」
「ほら泣くな。そうだ、これをやる。目を瞑れ」
「え? こ、こうですか?」
ワドルディは両手で目を隠した。デデデは「そのままにしてろよ」と言う。ワドルディの頭に何かを付けているが、ワドルディにはまだ分からない。「良いぞ」と言うと、目を開け、自分の頭を触る。
「こ、これは…!」
「なかなか似合うな!」
ワドルディに青空のような青いバンダナをプレゼントした。デデデ直々のプレゼントだったなのか、とても嬉しくなり再び泣き始める。
「ちょ、いつまで泣くんだ」
「だ、だって大王さま直々のプレゼントみたいなものですよ。嬉しくなるのは当たり前じゃないですか!!」
デデデは自分が部下を持ったことに嬉しく思いながら「喜んでもらってワシは幸せだ」と笑顔で答える。
「それで、ここから出るんじゃなかったんだ?」
「その事ですが、ボクやっぱり大王さまに憧れています。だから、ここから出ることを取り消して下さい!!」
ワドルディが頭を下げる。そして「採用ゾイ」と答えた。
「今日からバンダナワドルディとして頑張っていけ!」
「はい! 大王様っ!!」
こうして、バンワドとして励んでいくことになった。