入れかわっちゃう話13
今から数時間前…
「 ちょっと! 待ってってば! 」
メグは口に慌ててカレーをかきこむフームに振り返りつつ入り口を出た。
するといきなり視界と息を柔らかい物で遮られ、手を素早く後ろに廻し壁に押さえつけられる。
「 んぅっ! むぅ! 」
メグはその人物の腕から逃れようとしたがその腕力には差が有りすぎて逃れようにも逃れられない。
腕の中でもがいていると腰の方から菅の音がしてメグは瞬時に動きを止めた。
「 …そう、いい子だ… 」
頬に籠るような吐息と聞き覚えのある声が掛けられてメグは体を震わせた。
息が楽になったかと思えば口に菅を突っ込まれて中に気体が排出された。当然、息もできないためその得たいの知れない気体を大量に吸う。
頬が苦しみで湿ってゆくのを感じながら背中に何かをねじこまれる痛みと段々と頭の中で遠くなってゆく笑い声、光一つ無い暗闇にメグは溺れていった。
手から力が抜けてポロポロと握ることのできないコインが落ちていくのを見ながらその人物は左のほうに傷の付いた仮面を外ししまう。
メグを自分の左脇にいた心配そうな顔をした者の腕に託してその人物は一瞬にして体の色を変えた。
「 本当にこんなことを…? 」
隣にいる者が眉間にしわを寄せこちらを見ている。
「 ああ、後は隙間をみて私が始末する。」
彼は草むらを手で探りつつ出てくるフームをにんまりとした表情で見ていた。
「 姉ちゃん…早く目を開けてくれよ… 」
ブンは目の前で眠る姉の手を力強く握り、その手を自分の額に近づけた。
周りに避難してきたイローとハニーとホッヘが座っていて同じ室内ではボルン署長やヤブイ、ガスやメーベルがダークメタナイトによって怪我を負わされた人々の怪我の手当ての切り盛りをしており、タゴは食料の配給に当たっていた。
そんな慌ただしい雰囲気の室内にブンが今一番来てほしいと思っていた人物の声が響いた。
「 ブン、フーム! それに皆、無事か! 」
「 パパ!姉ちゃんが! 」
バームが額に汗を流しながらフームの寝ているベッドの脇につき、それにメームが続いた。
「 フーム、大丈夫なの? 」
メームがフームの首の痕を擦りながらブンに問いかけた。
「 わかんない… 」
ブンがその後の言葉を口にしようとした途端後ろに衝突音が響いた。
「 もう!今度はなんっ…!!? 」
うんざりとした様子で振りかえって目に映ったのは傷だらけのカービィが壁に打ち付けられ、そのままずるずると音をたてて床に落ちるところだった。
「 …くっ… 」
「 もうそこまでなのか? メタナイト? 」
突っ込んできたメタナイト( カービィ )に続き、メグ( ダークメタナイト )が剣をメタナイトに向けながら歩いてきた。
「 さて、動かないようならばどう苦しめようか。」
ダークメタナイトはにやりとしながら腰から短剣を抜き、メタナイトの頬を滑るように擦りながらその手を吊り上がっている目の横に置いた。
「 まず目からいくとでもしようか…目の周りの皮膚は薄くて刺しやすいからなぁ 」
「 ________っ! 」
メタナイトは抵抗しようとしているが傷つけられて筋肉の一部を掠られている腕では何もできない。
ダークメタナイトはメタナイトの目に短剣の先端をつきつけ、笑む。
メタナイトは目を半開きにして涙を流し、痛みを覚悟した。
ブンは見ていられなくなって手元にあったバラの入った小さな花瓶をダークに投げつけた。それをダークは簡単に避けるが割れて飛び散った破片で肌を傷付けてしまう。バラの花弁が浮かんでいる水溜まりがメタナイトの体から流れてくる血で濁ってゆく。
「 ……貴様… 」
「 ……あ…………ひぃっ! 」
ダークメタナイトの投げた短剣はブンがすれすれで避け、後ろの壁にズトッ、と音をたてて刺さった。
「 あわわわわわわわ… 」
ブンは手で口を抑え、震えながらダークを見た。後ろを振り返れば隅っこに皆が固まっている。
「 ……………ブン 」
その様子を見ていたメタナイトはゆっくりと立ち上がり音をたてずにその辺を手で探る。
ブンは沈黙の中、横目でその様子を伺っていた。
( ……カービィ!早く! )
「 貴様何を考えている? 」
「 あ…えっと…あの…今日の夕食何かな〜って… 」
「 ((一同) おいっっ!!) 」
だんだんとブンとダークの距離が縮まってゆく。
「 そうか…私はお前の血に染まった肉が食べたいのだがな? 」
( ひぃぃぃぃぃぃぃぃいいいっ!!!!!!! )
「 今日晩のメインディッシュにでもしてやろうか!! 」
ダークがブンに飛び掛かり、ブンは慌てて目を力強く瞑る。その瞬間を待っていたかのように室内にピストル音が鳴った。
↓
……………冷たい…
薄暗い部屋の中にポツリと呟いた声が何回にも渡って響く。
床にじわじわと広がる自分から溢れ止まらない赤色を視界を遮っている布の湿り気から感じる。
この部屋にいると生きている心地がないほどに拷問を受けたカービィは布の中で濁った金色の目を半開きにしてただ死を待つのみだった。
そんな時、わずかだが光の差している方向から話声が聞こえた。
( …………! )
だが声を出そうとしたら喉に血が入ってきて咳き込むが、それは布によって遮断されて何も聞こえない。するとカービィは唯一自由になっている足を力の限り動かし、トントンと音をたてた。
すると聞こえたのか奥の扉がギィと音とともに開いた。
「 …起きたの、大丈夫? 」
それは自分の声だった。
一気に視界が開き、口の布も取られた。見えたのは…
シャドーカービィだった。
シャドーは手に栄養ドリンクを持ち、此方を寂しそうな目で見ていた。
「 飲んで… 」
栄養ドリンクが目の前に置かれるが何も出来ずもう一度シャドーを見た。
シャドーは気づいたのか栄養ドリンクを口に含み、カービィに口付けた。
カービィは今まで受けた苦しみと冷たさからの暖かさに涙を溢した。
「 ごめんね…これしか僕にはできないの… 」
申し訳なさそうなシャドーにカービィは首をふるふるとふり、ニコリと微笑んだ。
「 ありがと、シャドー 」
「 ごめんねダークがあんなで… 」
カービィは回復した体を起こし、シャドーに寄せた。
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この世界の食べ物は即回復アイテムだよね
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