第9話:せんにゅう
「スト〜っぷ!」
カービィたちは建物のすぐ近く、変電所の陰に車をとめた。
「建物のそばに...誰かいるね」
「見張りかなぁ?」
小さくて強固な扉の前を、ひとつの影が往復している。
「わたし、ちょっと話をきいてみるね!」
「あっ待ってよサーバルちゃん!僕たち目をつけられてるのに...」
「かばんちゃん、こっそりついてこうよ!」
「...サーバル?」
そのフレンズ――トキは誰かの気配に気付くと、ゆっくりと振り返った。
「あれぇ、トキー!背中のそれ、どうしたの?」サーバルはいつも通り、明るく話しかけたが...
「アナタ、機械ガトリツケラレテナイノネ?カンパニーニ、素直ニ従ッタノ?」
その言葉を聞いて、サーバルの顔から笑みが消えた。トキもまた、「やつら」に改造されていたのだ。
「うそ...あなたもキカイにされちゃったの...?」
「偉大ナカンパニーハネ、私ノ仲間ヲ増ヤシテクレルト約束シテクレタノ。本当ニ、スバラシイワヨネ」
「すばらしくなんてないよ!聞いてよ、やつらはパークをメチャクチャにしてるんだよ!?ねぇったら...」
「ヤツラ?モシカシテ...サーバル、アナタハカンパニーノ敵ナノ?モシソウナラ...」トキの背中から、大きなスピーカーがいくつか展開された。
「...同ジフレンズダトシテモ、容赦ハシナイワ」
スピーカーが振動し、爆音が空気をつんざく。もはや音の兵器だ。
「うわぁっ!やめてよ、どうして...」
「偉大ナカンパニーノ敵デアル以上、アナタヲ生カシテオケナイノ!」
そのとき。見かねたカービィが、ロボボアーマーに乗って飛び出してきた。ホイールモードではなく、もとのピンクの姿で。
「?アナタハ...?」
「ぼくはカービィ、はるかぜの旅人!“せいのうスキャン”!」
「エッ...」
ロボボアーマーの口から、緑の光が放たれる。トキの姿が、ふっと消えた。
またまた、ロボボの姿が変化した。今度はボディがとても派手な色となり、腕が4つのスピーカーに変わっている。
「トキをスキャンしちゃった!カービィ、戻せるの!?」
「ぼく、いきものを吸い込んでコピーすると、あとで元にもどせるんだ。ロボボも、みたところ、戻せそうだよ!」
「ならいいんだけど...」
それから、カービィは建物の扉に目をやった。
「そうだ!ねぇ、音ってつまり、空気のうごきなんだよね?」
「そうなの、かばんちゃん?」
「うーん...僕もよく分からないけど...」
「だからさ、この『マイクモード』のロボボで、あのとびら、こわせそうじゃない?」
ロボボアーマーは扉の前に立った。カービィは黄色いパネルを叩いて、
「“デストロイアンプ”!!」
ジャカジャーン!!!
大きな音の弾丸がすっ飛び、強固な扉をぶち壊した。
「すごいすごーい!これであのたてものの中に行けるね!」
「うん。でもカービィさん、先にトキさんを元にもどしてあげて下さい」
カービィは<性能リセット>のパネルを押した。しかしその直後、
「ねぇ、今戻したら...また機械のトキのままじゃない?」
『あっ...』
確かにロボボの口から出てきたのは、改造された彼女のままだった。だがスキャンの影響か、気を失っている。
「ごめんなさい、トキさん。またあとで、助けにいきます」
「カービィ、どう?」
「んー...むりっぽい」
そこにはもうひとつの問題があった。扉が小さいため、ロボボアーマーが中に入れないのだ。
「どうしよう、ここに置いていくわけにもいかないし...」
「...?あれ、何だろう?」
かばんが何かに気づく。
奇妙な物体が、そこにあった。紺色のプレートに、曲がった空色の棒が4つついている、というような見た目だ。
「なんだか、ロボボがちょうどおさまりそうだ...あれ?」
ロボボアーマーが乗ると、
ボディに手足が収まり、ボールのようになった。そしてそれを、4つのバーがしっかりと押さえつける。
「あ!ロボボ、つかまっちゃった!?」
装置の底から、カードが出てきた。
「これをかざせば...ロボボをまた動かせるってことかな?」
「これならあんしんだね!」
「よーし!行くよー!」
三人は巨大な建物の中へ突入した。
「白いキャンピングトレーラーに、赤くて丸っこい車...?」
数十分後。1人のワーカーズが、見回りにやって来た。
「あれは...違うか。ねぇなぁ...」
不幸(?)にも彼はトレーラーを変電所のプレハブと勘違いした上、ロボボはすでにピンク色になっている。
「仕方ない、警備のゲンジュウ民が居眠りしてることだけ報告して、帰るか...」
ワーカーズはきびすを返し、どこかへ行ってしまった。