入れかわっちゃう話12
「 こっ…これは…!? 」
辺りにカランッと木の棒が落ちるおとが響きわたった。
濃い青色のバンダナが鮮やかなオレンジ色の体によく似合うワドルディは目の前の状況にただ呆然としていた。
「 はっ…早く大王様の身の置かれている状態を確認せねば! 」
半分崩れていて骨組が丸出しの城の潰れかかった入り口からバンダナワドルディは槍を持ち直し入ってゆく。
中に入れば、お見事に城の通路の天井まで潰れた勢いで低くなっていた。廊下にちらほらと散らばっていたワドルディ達が手に手に鉄の板だの、花瓶などを持ち震える身を寄せ合いながら隅っこにうずくまっている。
「 …ねぇ 」
「 ひぃっ! なななっな、何でもしますからおっお命だけはお許しをっ 」
「 違うってば… 」
「 ………へ? 」
ワドルディ達は恐る恐る手に持つ物を下ろすと、そこには呆れた顔をしたバンダナワドルディがいた。
「 うわぁぁぁ〜ん…!! バンワドさぁぁぁ〜ん…!! 」
「 まだ泣くには早いってば…あっ、大王様は!? 」
「 そっそれが…!! 」
ワドルディ達は大粒の涙を流しながら目を伏せた。その様子にバンダナワドルディの表情が凍りつく。
「 ダ、…ダークメタナイトと名乗る者が王室から血の付いた剣を持ちながら出てきて、その後ろを灰色のカービィが着いていました… 私達は…私達は…剣をつきつけられて王室の扉が潰されるのをただ見ていることしかできませんでした!! 」
ワドルディは涙でぐしょぐしょの顔あげてバンダナワドルディを見上げた。彼は表情を固くしたままだ。
「 これ持ってて。」
「 ば、バンワドさん!? 」
バンダナワドルディは槍をワドルディに押し付けるように渡し、扉の前に立つと扉に思いっきり蹴りを入れた。扉は少し隙間が空いて一人入れる程度になった。
「 バンワドさん!! 」
一人で王室に入ってゆく彼の背中を追いかけたが途端にその扉は完全に崩れてしまった。
「 大王様! 大王様!! 」
王室はカーペットだけでなく壁まで赤色が広がっててその赤色は乾きかけであることからそう時間はたっていないことを確認した。
傷と赤色に染められた壁を見ながら王座に近づくにつれて徐々に赤が湿り、生暖かくなってゆく。王座の後ろを見た途端にバンダナワドルディが悲鳴を飲み込む。
赤く生暖かい液体が円のように広がる中心に自分の探していた主人、その周りにその時護衛についていた部下達が浜に打ち上げられた豚の死骸のように横たわっていた。
「 …大王様ぁっ!! 」
赤く染まっていた主人の体に飛び付くようにしがみついた。着ている衣服の間から見える胸板に手を添えれば微かな熱を感じとった。口元に顔を寄せれば弱々しい息遣いが伝わってくる。
すると自分の頬が安心感で濡れていくのが分かったがバンダナワドルディはそれを堪えて主人の手当てをし、すでに冷たくなっていたワドルディの深い傷を擦りながらその身を抱き寄せ、込み上げてくる悲しみをひたすら外に吐き出した。
辺りには金属のぶつかり合う音が響き、メタナイトは徐々に自分達の戦っている場所がププビレッジに移っていくのを気に溜めていた。
「 ほぅ、ここがあの大王の支配下である城下町か。」
「 …貴様、何のつもりだ… 」
「 お前を倒す前に私の支配下に置く土地の下見をしようかと思ってな。こんなちっぽけな村、すぐにでも廃墟にして貴様らの墓場にでもしてやるよ。」
ダークメタナイトはメグの姿でありながらも口の端を大きく上げ、メタナイトを挑発するかのように笑みを浮かべる。一方、メタナイトは村に被害が出ないように守備に入り村を出るのをひたすら待った。
その様子を見物していたフームは何者かにちょちょんと背中をつっつかれた。
「 きゃあ! 」
「 あはは、ごめん、驚かせた? 」
振り替えれば灰色のカービィが此方をニコニコしながら見ていた。
「 はじめまして!僕シャドー!貴方が大臣さんの娘さん? 」
「 そ、そうだけど私は…きゃあっ! 」
自分が名乗ろうとした瞬間に一本の矢が頬をかすった。
「 なななっ何!?いきなり!? 」
「 ちぇー外したかぁーもう一本。」
「 ままっ待って! 私に何か用事? 」
フームは初めて見るコピーに驚きつつも目の前のシャドーに意識を集中させた。
「 貴方正式な大臣の娘だよね?あんな自称大王よりも殺す価値あると思ってさ! せっかくだし女の子なんだから綺麗に殺してあげるよ! 」
そう言うとフームの首を力強く掴んだ。
大きな紫色の目を細めて再びフームを見上げた。
「 や…めっ…てっ…ぐぁっ… 」
シャドーの腕を掴んでいた腕が力を失い重力に従って垂れ下がる。
段々と焦がされていく意識にフームは目を瞑り耐えるが、もう続きそうにない。
フームの声が弱まっていくのを見て、シャドーは薄々と笑いかけた。
ーーーーーその隙間を逃さず、何処からかブーメランが飛んできてシャドーの頭に直撃した。
「 ぶべっ!! 」
「 うっしゃっ! 」
ブンは戻ってきたブーメランを手に、坂を降りてきた。当てた人物の隣にいる姉の容態に顔が強ばった。
「 姉ちゃん!? 」
フームに寄り添い首に手を掛けて半身を起こさせるが、フームは目を開けない。
「 たたたたたたた大変だぁ!! 」
辺りを見回すとシャドーのワープスターがあった。何も考えずにブンはフームを抱えて乗った。
「 お願いお願いお願いお願い動いて!姉ちゃんが!! 」
ブンがフームをしっかりとワープスターに固定させた途端に動き始めた。
その様子にブンは胸を撫で下ろした。
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何故か皆さん殺られそうになりまくった謎の場面。
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