闇の化身の興味
カービィが復帰し、みながミラクルマターの弱点を知った。
「どうして...どうしてこのピンク玉がいると、いっつも調子がくるうんだよっ!もういい、みんなみんなカラダを粉々にして、取りこんでやるっ!」
感情的になった敵は、色とりどりの形態を再び収束させようとした。
「...おやめなさい、ミラクル」
「......え?つーさま?」
声のした先にはもう一人、見知らぬ少女が。
しかしカービィはそれが何者か一瞬で察した−−全身白い服、片方が長い前髪で隠れた赤い瞳、多角形を組み合わせたような奇妙な羽、そして頭上の天使の輪。
「ミラクル...この辺りで暴れていただけでなく、何人か善良な住人にも危害を加えたようね」
「だって...侵略するんじゃなかったの!?さきに反逆因子をつぶしたほうが、楽できない?」
「私は万が一のための護衛だけを命令したはず。かえって警戒されたら、私の目的も達成しづらくなるわ。......この人格の発生も、あの物質の影響かしら」
「むぅ〜...わかったよ、ごめんってば...
ゼロツー様!」
『ゼロツー...!?』
「そーだよ!こちらがわれわれの『次期』親玉様、02(ゼロツー)さまだよ」
ゼロツーは無表情のまま、視線をカービィとグーイへと動かした。
「...!?」
「『なんで!?あのときファイナルスターと一緒に、バクハツしたはずなのに...』そんな顔をしているわね。
...私たちは、銀河にあまねく闇の物質。もし倒されても、宇宙のサイクルに乗って、銀河の闇を集め復活する」
「これでも復活はすごくはやい方なんだよ!」
「じゃあなんでここに...パークをしんりゃくするんだったら、そうはさせないぞ!」
「いいえ、その目的ではないわ」
続く言葉に、グーイは大きく目を見開いた。
「...私は、愛について知る為にここに来た」
『あ、い...!?』
「私たちダークマター族は、特段他の何者かに興味を持つことはない。でも、現にそこにいるグーイはカービィと仲を深め、そして元々の親玉であったゼロを倒した。私もまた、あのリップルスターの妖精と秘宝の力を借りたカービィに倒された。
それで私は考えた、そうして誰かを深く知ろうとし、守ろうとする...というつながりこそ、これまでの敗因であり、一族を栄えさせる鍵ではないかと」
「あい、かなぁ...だれかを守りたい、もっとおはなししたいっておもうのが、あい?かんがえたこともないや」ない首を傾げるカービィ。
「...私はそうは思わない。見ただけで、或いは聞いただけで、それが何かわかるものはごく僅かだと思うの」
ゼロツーはかばんとサーバルの姿を一瞥し、それから自身の手を凝視める。
「幸運なことに、この身体を手に入れることも出来た。だから...この島で、命の“つながり”を見つけ、調べたいと思う。
......ひとつ忠告しておくわ、星の戦士。私達は、今は暗黒の侵略者ではない。それでも、貴方達が理由に関わらず一方的な攻撃をしようものなら......容赦はしない」
カービィは身を強張らせ、後ずさりしたが、不安そうなグーイの顔を見て、
「...しんようするよ。でも......何かタイヘンなことおこしたら、こっちもようしゃしないから!」
と言い放った。
「なんだか、今日のカービィ...いつものカービィらしくないね」
「......」カービィはうつむいて黙っている。サーバルの呟きも、聞こえないようだ。
「...カービィは、ときどき無理に感情を抑えようとすることがあって。今度のことも、オイラ以外のダークマターが、それもゼロツーさまが、感情を理解しようとしているのが信じられないんだと思う。
さ、カービィ。今日は帰ろ、たぶんまた来れるだろうから」
「でも...」
「一応、あの大王にこの事は報告しとくよ。何かしらの対処は、どうにかしてくれると思う」
「そっか...うん」
カービィがグーイにおぶさると、藍色の体からオレンジ色のヒレが現れ、揚力を生み出して浮かんでいった。
「あれ、この前襲ってきたダークマターとそっくり...」
「...それで、貴方達にもお願いがあるのだけれど」
「僕達、ですか?」
「私達に、ここの事を色々と教えてほしい。そして...愛、あるいは『つながり』について知る、その手がかりを掴むのを手伝ってもらえるかしら」
ふたりは一度顔を見合わせ、それから、
「すみません...僕も、愛って何なのか、はっきりとはわかりません...力になれるかどうか...
わっ」
言葉を淀ませるかばんの肩に、サーバルがぎゅっと手を乗せた。
「大丈夫だってば!これから一緒に、見つけに行こうよ!よろしくね、ゼロツー、ミラクルマター!」
「わーい!さっきはケガさせちゃってごめんね、仲良くしようね!」ミラクルマターがぱあっと顔を輝かせる。
「そっか...じゃあ、色々なちほーのフレンズさんたちに会って、話を聞いていきましょう!ゼロツーさん、よろしくお願いします」
「...こちらこそ。では、行きましょう」
「話がわかってもらえてよかったね、つーさま!」
「......ミラクル、その呼び名はやめてもらえないかしら」