EP.1-10 Trigger 10
「1年間だけだ。1年間だけ、人間にしてやる」
1年間……長いのか、短いのか、あまりピンと来なかった。
でも、畑で過ごす1年間は、長過ぎるくらいに、長かった。
空を眺めているぐらいしかやることがなかったから、
退屈で退屈で……
……人間の1年間は、どんな風なんだろう。
きっともっと楽しいんだろうな。
「……分かりました」
僕の言葉を聞いた悪魔はへへへ、と笑い、
背中から大きくて真っ黒い翼を広げた。
体が包み込まれるほどの、大きな翼を。
「今日から1年間、契約だ。契約終了の合図は、鐘の音。
鐘の音が聞こえたら―――――――」
何かの説明をしながら、悪魔はその手のひらに、
真っ赤な炎を立ち昇らせた。
ゆらゆらと揺れる、奇麗な炎―――――――
気がつけば、悪魔の声はほとんど聞こえなくなっていた。
無心で、ただひたすら、炎を見つめていた。
……だんだん、目の前の、炎……
……いや、景色が、ぼんやりと、してきた…………
炎、に、…………吸い込まれる……
……ような…………気が……………………