第7話:きゃんぴんぐとれーらー
「この先、バスか何かあったほうがいいよね?」
「うん、でもあれはもう壊れちゃったから...どうしよう?」
一行はロボボにつかまり、やっとジャングルに到着した。だがすでに日が傾きかけているので、今日は作戦会議がてらここで少し立ち止まることにした。
「ラッキーさん?...聞こえますか?」
かばんが腕につけた時計のようなものに話しかけるが、返事はない。
「かばんちゃん、だれにはなしてるの?」
「『ボス』だよ。もともとカービィくらいの大きさだったんだけど...あいつらに何かされたのかなぁ?」
やがてかばんはうしろの二人に振り返り、首を横に振った。
「だめだ...ラッキーさん、全然応えてくれないよ...」
「代わりのバス、どこにあるかわからないってこと?」
あのバスに乗り、通る他の車に混じって道路を行けば怪しまれないだろう、とサーバルたちは考えた。しかし、そのバスが今はないのだ。
「ねぇ、ふたりとも!あれ、『ばす』じゃないの?」カービィが突然、電柱の森の奥へ駆け出した。
「か、カービィさん、待ってください!」
《BGM:『ロボプラ』プログラリズム 以下『ロボプラ』は基本略しますね》
そこにあったのは...白いキャンピングトレーラーだった。あいにく、牽引するための車は見あたらなかったが。
「これにのれば、怪しいっておもわれないよ!」
「でも...運転席がありませんよ?どうやって動かすんですか?」
「...ロボボに押してもらう!」
「もぉっ、それだと余計目立っちゃうよ!」
「うーん......ロボボ...車...それだ!カービィさん、ちょっとロボボを連れてきてもらえますか?」
「いいよ〜!」
しばらくして、カービィはロボボアーマーに乗って戻ってきた。
「これ、スキャンしてもらえますか?」かばんが、積み上げられていたタイヤを指差した。
「んー、まだ『ストーンモード』だけど、できるかなぁ?」
スキャン対象をとらえ、ふたたび桃色のパネルを押す。ロボボの大きな拳が、一瞬かき消えた。
と、ロボボアーマーのボディが変形し、赤いレーシングカーのようになった。
「『ホイールモード』だぁ!」
「すっごーい!でも、あれと繋げるのはどうするの?」
「それなら...このヒモを使えばいいよ!サーバルちゃん、試しにこれ、引っ掻いてみて!」
サーバルは黒いワイヤーを差し出され、戸惑いながらもそれをひっかいた。
「みゃ!みゃっ!うみゃー!」何度もひっかいたが、ワイヤーには傷ひとつ付いていない。
「なにそれ!それなら、ロボボと繋げても大丈夫だね!」
かばんがロボボをキャンピングトレーラーに、ワイヤーでしっかりと括りつけた。
「じゃあ、試しにはしってみるよ!」トレーラーの中に乗った二人に、カービィが合図を送る。
「えーい!」
カービィがアクセルを踏む。大きな力で、やがてトレーラーが動きだした。
「わーい!これならバス代わりに乗っていけるね!」
「うん!でも今日はもう遅いから...ご飯食べて、寝よう?」
カービィは1人、キャンピングトレーラーの屋根に座っていた。街灯の光の切れ間に輝く、星を見ていたのだ。
(お昼寝しすぎちゃったかな......でもこんなときに眠りこけちゃうなんて、ぼくもうかつだったかな...)
「...カービィ?」ふいに、声が聞こえた。
「サーバル?ごめん、ぼくちょっとねむれなくて...」
「となり、いい?」
サーバルは彼のとなりに座った。
《BGM:『wii 』雲の夢》
「どの星が...ポップスターなんだろう」カービィが呟く。
「ねぇ、そのポップスターって、どんな所なの?」
「あの星はね...宇宙いちのきれいなわくせいなんだ。一面に草原がひろがってて、さばくにひょうざんもあって...」
「へ〜っ。ジャパリパークみたいなとこなんだね!」
「ぼく、昔はいろんな星をふらついてたんだ。でもね、あるとき、お腹すいたなーって思って、とある星でなにかたべようとしてね...」カービィは落ち着いた口調で、懐かしむように続けた。
「そしたらなんと、その星のひとがね、王様がたべものをぜんぶ一人占めしちゃったよーってかなしんでたんだよ」
「ええっ!それで、カービィはどうしたの?」
「その王様をね、こらしめてやったんだ!そしたらね、みんなに感謝されて、すてきなおうちまでくれたから...そこにすむことに決めた、って...かんじ...かな...」
「そこがポップスターだった、ってこと?すごーい!わたし、カービィのこともっと知りたいな!そうだ、カービィってどこで生まれたの?」
サーバルは聞いたが――返ってきたのは、とても穏やかな寝息だった。
「...おやすみ、カービィ」
サーバルはそう言って、それからしばらく空に瞬く光の中から「宇宙いちのきれいな」星を探していた。