T.神狩り
それは数カ月前の事だった。
ある狂気に満ちた一人の輩が、この世界の神の一人を殺した。
他の神々はその輩を死の刑に至らせようとし、捕まえたが、神の一人が、
「何故神を殺した?」
と訊くと
「俺はやっていない!冤罪だ!!」
としか答えない。
何度も訊いたが同じ台詞を繰り返すばかり。
神々は諦め、その輩を死に至らしめようとした。・・・が。
その輩は神々の隙を見て、逃亡したのだった――。
*
星の輝く夜。
海辺に、一人の少年が座っていた。
「・・・やっぱり此処の海は最高だ」
呟きながら海の中に手を入れてみる。
透き通るような水色の海。
そこに、人影が映った――。
振り返ってみると、一人の男が居た。
・・・誰だコイツ。
此処は僕が見つけた穴場なのにっ!
何か良く解んないけど頭キタッッ!!
「・・・ちょっと」
男はこちらを見たが、返答は無し。
んだよコイツ・・・礼儀ってモンを知れっつーの・・・ってアレ?
コイツ・・・どこかで・・・
あ!
「神狩り!!!!」
男の表情が、少し変化した。
無表情から、驚きへ。
「・・・お前、俺が神狩りだからってどうするつもりだ?」
「え、だって、『神を殺した輩』でしょ?」
――あの事件以来、皆コイツをこう呼び始めた。
【神狩り】と。