紫電
???:「はぁ…はぁ…」
青年は暗闇の中を走る。どこに向かっているのか、そんなことは分からない。ただ、休んでいたら奴等が追ってくる。
???:『紫電が逃げたぞ…!』
(シデン…?)
青年は一瞬立ち止まった。
(僕の名前、かな…)
と、その時、地面が沈みこむような感じがした。
紫電:「うわぁっ!!」
紫電は気を失ってしまった。
(う〜ん…ここはどこなんだろう…)
目を開けると、灰色の雲が空を覆っていた。おまけにどしゃ降りの雨が降っている。どうやら森の中らしい。すると、背後に誰かの気配を感じた。
紫電:「っ…!!」
背後にいたのは紅い犬のような魔獣だった。警戒しているように見える。紫電はその場から逃げ出したが、魔獣は後を追ってくる。とうとう崖に追い詰められてしまった。
(もう、戦うしかないのか……ん?)
紫電の左手が青く輝いていた。
(これが僕の力なのか…やってみるしかない…!!)
その左手には青白く光る刀が握られていた。
紫電:「うわあああああっ!!」
紫電は魔獣に向かって走った。
一瞬何があったのかが全く分からなくなった。
気がつくと魔獣は倒れていた。しかし、こちらも平気ではなかった。相打ちだったのだろうか、片目に激痛がはしる。
紫電:「やっぱり僕はここに来るべきではなかったのかな…」
意識は遠のいていった。
???:「ハカセ!誰かガ倒レテまス!」
ハカセ:「…これはひどい傷だ。フェリカ君、至急、包帯と消毒液をもってきてくれ。」
フェリカ:「わかりマシタ。」
(ん…?)
紫電:「いたたたt…」
ハカセ:「おっと、この消毒液がしみたのかな?大丈夫かい?」
目の前にいたのは白い帽子をかぶった青年だった。とても科学者のようには見えないが…
ハカセ:「キミの片目、残念だけどもう使い物にはならないね…」
紫電:「え…!?」
包帯をほどき、鏡を見る。
虚ろな目がこちらを覗いていた…
ハカセ:「さっき、君が気絶してる時に調べておいたんだよ。」
とても親切な科学者だがなかなか真実を受け入れることができなかった。
何故自分の名前を最初から知らなかったのか?…何故自分はあんな暗闇の世界にいたのか?…
ただでさえ、分からないことだらけなのに…
ハカセ:「で、これからどうするんだい?まあ、今日はもう外も真っ暗だし、休んでいったほうがいいよ。」
紫電:「え…あ、はい…。ん?あの、この本読んでもいいですか?」
ハカセ:「え?ああ、おkおk!じゃんじゃん読んでってよ!」
あまり読まれてないのか、もの凄いホコリだ。紫電はそのホコリをはらい、ページをめくった。
**〜黒幕の書〜**
【ダークマター】
様々なものに憑依することができる。
カービィという星の戦士によって倒された。
生存している確率:やや低い
(絵も描かれているが小説なので見せられない。)
【ドロシア】
魔法の絵筆を使い、すべてのものを絵画に変える力をもつ。
カービィと虹の絵筆によって倒された。
生存している確率:低い
【ギャラクティック・ナイト】
凄まじい力を持ち、永久に封印された銀河最強の戦士。
生存している確率:不明
以下省略m(-‐)m
・・そして真夜中・・
紫電:「何だか…眠れないな…」
ぽつんとつぶやく紫電。
ハカセはパソコンがブルースクリーンになっているのも気にせずに熟睡。
フェリカというロボットはもちろんスリープモード。
何もやることが無い彼はふと窓を見た。
鍵はかかってない。
紫電:(少しくらい、外にでても大丈夫だよな…)
ハカセ達をもう一度確認した後、窓から外に抜け出した。
月は無い、新月の夜だった。夜空の星だけが虚しく光っている。普段ならもっと輝いていると思うが…
???:「ようやく見つけたぞ…紫電…」
振り返ると、そこには黒いマントを着た者が立っていた。
紫電:「…ダークマター…?」
あの本で見たものと同じだった。
ダークマター:「…来い」
紫電:「僕は…お前なんかについて行かない!」
青白い刀をだして警戒をする。
ダークマター:「フフッ…まあいい。どちらにせよ、再び我々は貴様の前に現れるからな…」
紫電:「っ…!?」
目の前が急に真っ白になった。
ハカセ:「どうしたんだい?こんなところで…」
紫電は研究所から少し離れたところに倒れていたらしい。
ハカセ:「まあ、無事でなによりだよ。それよりも、コレ、ちょっと着てみてくれないかな?」
ハカセから手渡されたのは紫色のマントだった。とりあえず着てみる。
ハカセ:「おお!似合う似合う!!やっぱりキミってメタナイトそっくり!」
紫電:「?」
フェリカ:「メタナイトというのハ、カービィと共に数々の魔獣を倒シタ銀河戦士の一人デス。」
紫電:「へ〜…」
ハカセ:「そのマント、あげるよ。」
科学者は優しく微笑んだ。
紫電:「あ、ありがとうございます…」
こうして、紫電は目的のない旅に出た。
いづれ、長い旅路のなかで、彼の目的は定められるだろう。