あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: かぷちそん/投稿日時: 2015/11/29(日) 23:52:53
投稿者コメント:
かぷちそんです。ついにらいぶらりぃにも手を出しました。内容はタイトルの通りです。まあおとぎ話のようなものとして読んでいただければ。
一応原作世界ですが、ストーリー、キャラクターはオリジナルがメインです。オリジナルの登場キャラについては自分のプロフの方に短い説明と画像を置いてますのでそちらを見てから読むのをおすすめします。
かなり長編になると思うのでそのつもりでw
ではどうぞごゆっくり。
プロローグ〜小さな管理人
 メックアイ―――
 惑星にして、一つの巨大な機械。どのようにしてこの惑星がつくられたのか、それは永遠の謎である。
 その表面は巨大な工場群に覆われており、地表は見えない。存在しないのだから当然である。木々や草花は一つもなく、ただ鉄と蒸気の臭いに満ちている。
 しかし、そんなお世辞にも快適とはいえない環境とは裏腹に、宇宙から見るメックアイはとても美しい。人はその金色に輝く巨体の前に、それが惑星であることを忘れてしまい、つかの間その鉄の塊に、命≠も感じてしまうという―――

        ****

 ここはメックアイの辺境。居住区から離れ、稼働している工場もまばらな土地。あたりにはただ物言わぬ鉄屑が、厚い空気を通した日光を反射し鈍く光っている。
 ―――そしてそこは、どこか他の場所より時間が遅れているように見えた。
 向こうになにか大きな建造物が見える。工場だろうか。城にも見える。濁った空気のせいでぼんやりとしか見えないが、近づくにつれて、それが思ったよりずっと大きく、工場であり、また城でもあることがわかった。
 入り口と思わしき大きな扉の前に立つ。すさまじい機械の稼働音と蒸気が吹き出す音のせいで、いくら叫んでも誰にも声が届きそうにない。
 その城に人が一人しかいないとなるとなおさらだ。

 突然、扉がガコンと音をたてて開いた。そこには大きなロボットが立っていた。どうやら案内役らしい。内心少し不安を感じながらも、ロボットに促されるがまま工場――いや、やはり城と呼ぶことにしよう――に入っていった。
 城の中は外から見たよりずっと広く思えた。そしてやはりそこは工場でもあった。何を作っているのかはわからないが、とにかくそこら中でせわしなくピストンが上下し、歯車が回り、蒸気が不規則な間隔で絶えず吹き出している。
 まわりの光景に圧倒されながらも、案内されるがまま、ひたすら長い迷路のような通路を歩いていく。同じ場所をぐるぐる回っているのではないかと思い始めたところで、ようやく案内ロボットが立ち止まった。
 目の前の扉がひとりでに開いた。ロボットは戸口で黙って立っている。その部屋に入ると、またもやひとりでに扉が閉まり、その瞬間機械の稼働音も蒸気の音も何一つ聞こえなくなった。

 その部屋には人がいた。ベージュの丸い体にベルトをさげ、ひときは大きな変わったシルクハットを被っている。顔の左側は鉄のプレートに覆われており、本来左目がある場所にはエメラルドに光る凸状の目≠ェあった。
 彼はしばらくの間こちらを見つめ、それからやっと口を開いた。

「客人とは珍しいね。知ってるんだろうけど、ぼくはギアラ。君は誰かな?」

 その声は幼かった。が、その落ち着いた物腰からは、幼さからくる愚かさのようなものはみじんも感じられなかった。
 私は答えた。

「私はメタナイト。ポップスターからそなたに会いに来た」

 すると彼はふふっと笑い、こう言った。

「ああ、知ってるよ。きみは前にも一度この星に来たことがあるね?」

 そうだ。私は一度、たしかにここメックアイを訪れた。あれは修行の旅の途中だった。ギャラクティック・ノヴァを召喚する目的で星々を転々としていたのだ。だがあの時訪れたのはこことはほぼ星の反対側だ。

「ぼくはこの星で起きていることは全部知ってるんだ」

 続きを待ったが、彼はそれ以上何も言わなかった。

「それで?ぼくに何の用だったかな?」

「メックアイに伝わる伝説の戦士の話を聞かせてほしい」

「へえ…そのためにはるばる…きみは変わってるね」

 彼はそう言ったものの、少しも不思議そうではなかった。

「ちょっと待っててね、お茶をいれるから」

 そう言うと彼は部屋の奥にある扉の向こうに消えていった。
 ひとり残された私は改めて部屋を見回した。そこは窓のない、静かな書斎のような部屋だった。せわしなく機械音がする工場の部屋とはうってかわって、音といえば、ただ時計の針が時間を刻む音がコッツコッツと響くのみ。
 彼はここでたった独りで暮らしているのだろうか。聞いた話によると、彼は――比喩的な意味かもしれないが――機械に命を吹き込むことができるという。そのため魔術師とされ、人々はあまりこの城に近づきたがらないらしい。だとすると、もうずっと人には会っていないのだろう。
 私はつかの間彼を気の毒に思う気持ちにとらわれたが、すぐに改めた。人にとってなにが幸せかは、えてして他人には理解できないものだ。彼は案外孤独な生活を楽しんでいるのかもしれない。

 ふと目の前の机に目をやると、そこには埃を被った分厚い本が積まれていた。他人の部屋の物を勝手に触るのははばかられたが、なぜだか私は興味に駆られ、その一つを手に取った。

 ―――くろさびのものがたり―――

 表紙にはそう書かれていた。
 私はページをめくると、本のなかに引き込まれていった―――

        ****

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