吼える理由
初めてそう言い渡されたのは、そう、それがはじまって少し経った後のこと。
最初は全く信じられなかった、こんな自分が、ついに前線に出れるなんて。
その割に初陣はしょっぱかったが…
でも、兎にも角にも。
嬉しくて、楽しくて、誰よりも真っ先に、伝えたいと思った。
同じ場所に立てる、同じ景色を見れる。
同じようになれる、同じように正義を……とはいかないかもしれないが。
でも、たったそれだけでも十分、嬉しかった。
何よりも軍人として、頑張ってきた甲斐があると感じた。
嬉々としてその報告をして……けれど相手の反応は思ったよりもいいものではなかった。
挙げ句の果てには鼻で笑われて……少し、悔しかった。
でもどうしてだろうか、あの時俺は、あんなにも楽しくて、嬉しいと感じていたんだ……前もって言っておくが、そういう趣味はないぞ。
ジリジリと窓から差し込む光もすっかり薄くなり。
求愛行為に勤しむ、蝉たちの声に眠れない夜に、ふと思い出すのは、あの日のこと。
従わせる側と従う側、駒と仲間。
その会話で、幾らあいつの言葉でも、少し同意出来ないところがあった。
だからこそ、なのだろうか?
次の質問が、とても難しいと感じたんだ。
_____俺には、その時答えが出せなかった。
学んだことを活用して、でも、それが正しいかは全然分からなくて。
そしてそれが正しいか、そう聞く勇気も出なくて。
だから、今もまだ、分からない。
何れ分かる頃には、きっと、終わっている筈だ。
……ただ、ふとして思うのは、看取るよりも、誰かの代わりに死ねたら、ということ。
だってそうだろう?知らないところで、いつの間にか死んでました、目の前で仲間が死にました。なんて、そんなことあってはいけない。
戦争なんてしていれば当たり前……そんなことは分かっている。
けど、もし、自分の命と引き換えに他人を生かせるなら……そう考えれば、こんな人生にも切り捨てる価値はある。そう思わないか?
軍人としてこの答えは不適切……不適切で、狂ってるかもしれない。
勿論自分が常識人では無い事なんて、百も承知……いや、あの集団の中ではマシな部類であって欲しいが。
兎に角。
黒も白もつけられないこの世の中で、生きるのはそう簡単なことではない。
だからこそ足掻く、だからこそ駄々をこねて。
そして……だからこそ、"愛したい"んだ。