プロローグか? 『 …と見せかけて! 』
「 ん…重い… 」
フームはホコリの被った大きな箱を少し持ち上げたかと思えば、ズトンッと音を立てて落とした。
額に汗を垂らし、視線を下に向け、ぼんやりと自分の倍の位大きい箱を眺めていると横から足音が聴こえてくる。
「 これはこれはフーム殿! 何かお困りで? 」
「 …ワドルドゥ隊長…こんにちは 」
何時変わらぬハキハキとした彼の声が逆に聞いてて辛い…
ドゥ「 あぁ、御荷物でしたら私がお持ち致しましょう! 」
フム「 …え、あっ!大丈夫!悪いし… 」
ドゥ「 いえいえ、貴女のような御方にこんな重い物を持たせるわけにはなりませし。」
フム「 …はぁ… 」
フームが見ている前でワドルドゥは軽々とその箱を持ち上げた。
フム「 まぁ!貴方って力持ちなのね! 」
ドゥ「 えぇ、この隊長たるワドルドゥ、主人のご満足頂くまで全力を尽くしておりますし! 」
目の前で自慢気に笑みを浮かべている隊長はとんとんっと小さな足取りで階段を上がり、その背中をフームが追った。
「 もぅ、まったく!隊長は女優先でゲスか!! 」
そんな楽しそうな二人の会話が聞こえる後方で腰に手首の関節を押し当てて顔をしかめているエスカルゴン閣下がいた。
「 これだから女は嫌なんでゲスよ! 」
先日、彼には彼の従える王、デデデ大王がローナ王女に求婚を申し出る時のサポートにまわることを命じられたが、どんなにド派手にしても結局は金を溝に捨てたも同然の結果で終わった。
「 これだから女女女女女女女……………あ そうでゲス 」
落ち込んでいる大王の励みになる1つ2つが沸々と沸いてくる。
「 まぁ、これはいいでゲス。そうと決まれば陛下に報告するでゲス。」
赤文字で『 借金返済時ご利用の保険の御案内 』と書かれた紙を無造作に床に捨てて閣下は王室に足を進めた。
ーー___________________....
「 ぽよぃ! ぽよぽよぅ! 」
城の中庭でカービィは夢中になって蝶を追いかけている。
「 一人でも遊べるような単純な思考があるのはいいのだがな… 」
メタナイトはカービィが遊んでいるのを見下ろそうと噴水に腰掛けると、カービィが喜んで寄ってくる。
「 これでは本当にパパナイトだな… 」
晴れた笑顔で此方を向いているカービィの頭を撫でながら変な妄想に浸り始める。
…………パパ…か………思ってもみなかった事だ。
するとメタナイトは本能で我にかえりカービィを自身にくっつけた。
カ「 ぽよ? 」
メタ「 静かにしろ。」
メタナイトはカービィの口を撫でながら塞いだ。
「 いいところに二人いたゾイ… 」
メタ「 陛下…私らに何の御用で? 」
「 いや、ちょっとしたことでゲスよ。すぐ済むでゲス。」
車からひょこっと出てきたエスカルゴンが咄嗟にピンク色の銃を出しカービィに向けて引き金を引いた。
メタ「 カービィ!! 」
あの弾の速さでは間に合わないと判断したメタナイトはギャラクシアをカービィの隣に投げた。
エス「 …と見せかけて! 」
メタ「 なっ!? 」
ピンク色の銃を青色に切り換えて今度はメタナイトに撃った。カービィのは空気砲だったらしい。
近い距離で弾を撃ち込まれ、メタナイトは勢いで城壁に体を打ち、そのままズルズルと下に落ちた。
カ「 ぽよぅ! 」
慌てて駆け寄ると仮面に貫通して穴が空き、そこから赤い液体が垂れ流れている。その鉄の錆びた匂いに眉間に皺を寄せる。
エス「 次は貴様でゲス!! 」
カービィも同じようにに撃たれ悲鳴を上げずにその場に倒れた。
エス「 …上手くいったでゲス 」
デ「 奴等の困る顔が楽しみだゾイ 」
二人は大きな笑い声を上げて王室に帰っていった。
中庭は血の生臭い臭いと煙の臭いに包まれた。