その@ ロウさんとシロカさんで”ワールドイズマイン”
世界で一番お姫様、そういう扱い――
シロカ「心得てよね!(びしっ」
ベッドに腰掛けて、人差し指を突き出すようにしてそういってみる。
しーん、という擬音がつきそうな静寂がむなしい。
ため息をついて、私は立ち上がった。そろそろ時間だから。
すでにしたくは整えてある。最後に鏡で確認して、私はロウさんとの待ち合わせ場所に向かった。
その@!
いつもと違う髪型に気がつくこと!
私は昨日、少し髪を気って短くした。
長さ的に言うと1〜2センチだけど、けっこうな違いだと思う。
短くしたぶんで髪型もハーフアップだ、違いに気づいてくれるとは思うけれど――…。
ロウ「あれ、シロカさん、髪切ったんですか?やっぱりどんなシロカさんも可愛いですね」
真顔で言われて、照れました。
そのA!
ちゃんと靴まで見ること!いいね?
ついでに、私は買ってもらった新しいヒールの靴を履いている。
ヒールは少しなれないけれど、少しだけ大人になった気分でうれしい。
それに、前からほしかったやつだからもっとうれしい。
ロウ「あ、それ新しいヒールですか?いいですね、シロカさんに似合ってます。…あ、ほしかったヒールでなんですか?」
気づいてくれた上に褒めてくれたのがすごくうれしい。
微笑んでほしかったんだというとロウさんは笑ってくれた。
なれないヒールなせいで転びそうになったとき、とっさに支えてくれたロウさんにキュンと来たなんて恥ずかしくていえない。
そのB!
私の一言には、三つの言葉で返事すること!
…なんて、これはわがまま、かな?
そう思うとちょっとだけ苦笑をこぼしてしまいそうになる。
ロウさんの横を歩きながらちらっと視線を向ければ、返事してくれるか気になって。
シロカ「ロウさん」
ロウ「?どうしたんですか?」
シロカ「大好きですよ!」
ロウ「僕もですよ。シロカさんが大好きです。愛していますよ(にこっ」
見事三つの言葉で返事をしてもらった。
実は三つも返してくれないかもと思ってたから、すごくうれしかった。
ふいにロウさんが足を止めたので、私は一歩先で振り返った。
ロウ「でも、シロカさんの言葉に余計な言葉なんて要らないですよね」
それはそれで、照れくさそうに笑うロウさんにノックアウト。
全部わかったら、右手がお留守なのを何とかしてほしいな!
少し寂しい右手をチラッとだけ見たら、手が伸びてきた。
顔を上げればロウさんが私の右手をとって笑っていた。
多分いま、私の顔赤いよね。恥ずかしいな。
べ、別に、わがままなんて、いってないですよね?
ただ、ロウさんに心から「可愛い」って思ってほしいだけだもの。
だから、これくらいは全部”OK!”
世界で一番お姫様!
気がついてくださいよ、ねぇ。
待たせるなんて、論外ですからね!!
…アイスを選ぶのくらいで、待たせたりしたらすねちゃうんだから!
もう、私を誰だと思ってるの?
シロカ「あぁー、なんだか…、甘いものが食べたいです!…今すぐですよ!(びしっ」
ロウ「プリンが冷蔵庫にありますよ」
今すぐ食べたいのに…(笑)
え、欠点?ないよ、可愛いの間違いでしょう?
…文句は聞きませんからね!
シロカ「あの、私の話聞いてますか?…ちょっとぉ…(しょぼん」
わがまま、言っちゃいますよ?
難しいこと、要求するんだから!
かなえてくれなきゃ泣いて見せるもん!
シロカ「白いお馬さんが見たいです。決まってるじゃないですか、白いお馬さんで迎えに来てくれる王子様!」
ロウ「…仕方ないですね。困ったお姫様」
困ったように笑ったロウさんは、傅いた。
そして私の手をとっていったんだ。
ロウ「メリーゴーランド。今だけはコレで我慢して下さい、プリンセス?」
うれしいのと恥ずかしいので爆発しそう。
ロウさんもしちゃうって言われるからしないけど!
別に、わがままなんて、いってないですよ!
…でも、ね?
少しくらい、叱ってくれたっていいよ。…なんてね!
口に出すのはちょっと恥ずかしいから、秘密!
世界で私だけの王子様(ロウさん)
気がついてくださいよ、ほらほら。おててが空いてます!
なんて思ってたら、ロウさんは黙って私の手を握ってくれた。
やっぱりうれしいのと恥ずかしいので爆発しそう。
無口で無愛想な王子様?
ロウさんは無口でも無愛想でもないです!
私だけの王子様なんだから!!
…でも、どうして?
気がついてよ、早く!
シロカ「…絶対わかってない。…わかってないですよ…」
背を向けてるロウさんに向けて、小さくいってやった。
気がついてくださいよ、待ってるんだから…。
イチゴの乗ったショートケーキもこだわりたまごのとろけるプリンも…。
シロカ「みんなみんな、我慢します…わがままな子だと思わないでください」
ロウ「……」
シロカ「わ、私だって、やればできます!後で、後悔しますよ!!」
だって私は、世界で一番お姫さまだもの!
ちゃんと見てないと、どこかに行っちゃいますよ?
…こっちを振り返ってくれないロウさんなんて知らない。
帰っちゃおうかな…。
私はため息をついて踵を返した。
歩き出してすぐ、不意に腕を引かれた。
振り返るまもなく抱きしめられた。
急にそんな…え!?ええ!?どういうこと?
ロウ「轢かれる。危ないですよ」
そういってから、ロウさんは私を離すとそっぽを向いた。
その顔がほのかに赤い。
――こっちのほうが、危ないです。
ロウさんにもっともっと惚れちゃった。