1.噂って怖いモノだね
「ねえ、猫耳少年って知ってるーう?」
「知ってる知ってる〜、あたしの友達も見たんだってえーっ」
近頃の中学生はグループで集まって、噂の交換をし合うことが常識なのだろう。
はっきり言って、自分はグループで固まってきゃあきゃあするのは嫌いである。
クラスのみんなと平等に仲良くしたいのだ。
だからプリクラは大勢で撮る。
カラオケは大勢で行く。
「いつメン」ってのも特にいない。
それが、私にとって常識である。
噂ってコソコソしてて、好きじゃない。
どうせ他の人に噂するなら、みんなの前で言ってしまえば楽ではないか。
「本当、里奈ってグループとか、苦手よね」
近所付き合いなだけなのに、何の意味もなくよく一緒に帰ってしまう立石穂歌…ニックネームは「ほのか」。
「里奈なんて呼ばないで、桃山さんって呼んで。特定の人だけから、みんなと違う名前で呼ばれるのは、嫌」
私、桃山里奈…もちろんニックネームは無い。
中2の、グループ大嫌い一人狼。
「猫耳少年の話さ、幽霊とかいう噂だってよ、桃山さん…ああ、慣れない」
穂歌が頭を抱え込んで言った。
「やめてよ。噂は嫌いなこと、わかってるでしょ?」
「うん、噂だといいんだけどね…」
この時は単なる作り話だと信じていた。
なのに、まさか私が猫耳少年に巡り会うなんて…。