プロローグ「仮面」
二人の逃亡者が隠れ家を探し逃げ惑い続け五年という年月が経った。
警察の方は他にまわり、この逃亡者を忘れていたはずだった。
しかしある警官が逃亡者たちを見つけて、警察は逮捕に向かった。
「もう無理かもしれない」
剣を隠した仮面男は、たくさんのすり傷に目をやると、そうつぶやいた。
「先生…そんなこと言わないでください」
まだ若そうな方がうつむきながら言った。
「カービィ」
久しぶりに本名で呼ばれたからか、それともとてもいつもは考えられないあたたかな声だったからか、若そうな方はすぐに顔を上げた。
「私はもう体力が尽きている。しかし、お前は違う。こんな仕事などやめるのだ」
若そうな方はすぐ答えた。
「僕を拾ってくれて、修行にも付き合ってくれたのに、まだ先生のために何もできていない。そんな自分が許せません。僕は命をかけても否定します」
長い沈黙のあと、仮面男は微笑んだ。
「見なさい、私のこの傷を。これで逃げるよりは、牢でじっとしていた方が良い。この仮面ならお前だとばれない。さあ、ゆけ」
パトカーはもうすぐここにやって来る。
今が運命の分かれ道だ。
「また、勝負してくださいよ。今度会ったら勝ちますから」
そうカービィは言うと、仮面を手にして、先生をあとにした。
先生は気づいていた。
カービィの頬にたくさんの涙が流れていたことを。