短編集*『のー ぽよぶれむ!!』
『携帯通信機』
生まれてこの方、機械なんてろくに経験がない俺が、携帯通信機を持つことになった。
無論、買ったわけではない。
いつもどおり、そこら辺の奴らから掻っ攫ってきた物だ。
元の持ち主が分からないようにドクに改造もしてもらった。
これで仲間とも連絡がとりやすくなるし、我等ドロッチェ団も一層の利益を得られるというわけなんだな、これが。
しかしまあ、本当に携帯通信機は便利なこと極まりない。
地図や検索はもちろん、音楽もゲームもこれ一台で済んでしまう。
俺は当初の目的を忘れて、毎日ヘッドフォンを耳にあて、大音量で音楽を聴きまくっている。
ある朝、目覚めると、知らない間に音楽が止まっていた。
何度ボタンを押しても、音楽は一向に流れない。それどころか、ゲームのBGMも電話の発信音さえ鳴らない。
故障だな。ドクに直してもらうとするか。
重い腰を持ち上げたとき、ふいに携帯を落としてしまったが、下にクッションがあったためか、壊れた音はしなかった。
それにしても、今日は静かだな。
普段ならチューリンがそこらじゅうを走り回ったり、ストロンとスピンが喧嘩をしていたりもして騒がしいのだが。
しばらくして、俺は大変なことに気づいてしまった。
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