君と僕。
「ったく、何で俺がこんなこと…」
何故か俺は、カービィの家の片付けをしていた。
「僕との勝負に負けたからじゃないか、シャドーカービィさん」
カービィは一人でゲームをしている。
「つーかトマト早食いで勝てるわけないだろ…」
まぁでも、勝負しかけてきたのは俺だけど…。
「じゃぁそこはいいから、地下もよろしくー」
俺は手の動きを止めた。
「ちょっとまて!地下なんて知らないぞ!」
これだけじゃなかったのか。
まさかの出来事に、俺は絶叫した。
「うん。ホコリっぽいけど頑張って」
応援はしているが、目線はゲームの方だった。
しょうがない。
「あ、階段はそこね。」
ピンクの丸い手はタンスを指した。
「…は??」
カービィは「どっこいしょ」とおばあさん風に立ち上がると、
いろんな引き出しを開け閉めし始めた。
「…何してんだ??」
その瞬間、
カチッ。
「うおおお!!!?」
タンスが自動で動き、隠し階段的なものが出てきた。
「…はい。掃除してきて」
階段を降りると、本当にホコリっぽい。
何に使う部屋だろうか。
「ゲホゲホ…。何だここは…うおッ!」
何か平べったいものにつまずき、思わず転んでしまった。
「何だよこれ…」
手に取ったのは、ホコリかぶった一冊の本。
「写真…」
開いてみると、カービィが小さかった頃の写真があった。
「懐かしいなぁ…。そういえば、このころはカービィの街と対立してたっけ…。」
そう、このころ、プププランドとウィングシティの戦いが…。
何でこんなことをしているんだ。
何でこんな風になったんだ。
何で…何で…。
あんなに仲のよかった街たちが、何で対立してしまたんだろう。
大人の事情?
そんなもの、クソクラエだろ。
俺たちの街、ウィングシティの住民は、プププランドに行くこと前提に、
プププランドの住民に会うことさえ許されなくなった。
そのため、違う街同士の友達も、夫婦も、恋人同士も、みんな離されてしまった。
俺とカービィも…。
どうやら、男はみんな戦に行かなくてはならない。
そして、俺も…。
「頑張ってね、シャドー…」
「シャドーくん、絶対勝って!!」
お前らおかしいだろ。
おかしくて笑っちゃうよ。
そんな簡単に、敵になったからって理由で、友達を倒すだと?
昔からの友を?
でも仕方がない。
行くだけ行って、話をつけてくるだけにしよう。
絶対に殺したりなんかはしない。
戦場についた。
懐かしいピンクの丸いアイツがいた。
「…カービィ!」
その瞬間、カービィは右手に持っている剣を、
いきおいよく振り下ろした。
「!?」
かろうじて避けた俺は、驚きを隠せずにいた。
目付きが…違う。
「カービィ!何やってるんだ!俺たちは友達だろ?」
「…ソンナモノ、シラナイ」
カービィは剣を俺に向かって振りまわすのを止めない。
その様子を、周りの者は見ていた。
後ずさりをしていたらバランスを崩し、転んでしまった。
「これで最後…」
カービィは剣を大きく振りかぶる。
(殺されるッ!)
目をギュッと閉じた。
(ああ、走馬灯が…)
ポタッ。
「…え」
目を開けると、カービィの目から涙がポタポタと落ちた。
「カービィ、お前…」
「シャドー…ごめっ…」
これがきっかけ(?)で、争いは無くなったらしい。
「あったなぁ…あんなこと」
カービィはコンクリートの階段をコツコツと下りてきた。
「シャドー、掃除…わっ、まだ全然やってないじゃん!!」
「なぁ、カービィ…」
返事はしなかったが、カービィはこっちを振り向いた。
「俺たちは友、だよな?」
カービィはちょっと顔が赤くなった。
「今さら、何言ってるの」
そっけなくふいっと向こうを向かれたが、照れ隠しだろう。
「これからもよろしくな、カービィ!」