第一巻
「暇だ…。」
赤髪の青年は机に肘を突き、足で適当なリズムを取っていた。
青年は目線を自分の前にいる少女に向けた。
少女は水色の髪をたまに触り、本を読んでるのでめったに話すことは無い。
「暇だ…。」
あいにく自分には趣味という趣味は無い。
仕事も今は無い。
「暇だし、散歩でも行くとするか。」
青年は椅子から立ち上がると、
「ちょっと出てくる。まぁすぐ戻ると思うがな。」
と少女に言った。
少女は本から目線を青年に向け「わかりました。」というとまた本へと戻した。
ここは魔獣撲滅部隊・天空基地。
この基地にはたくさんの戦士がいる。
魔獣撲滅部隊(通称BEF)は世界中各地にある。
その中でも天空基地はここしかない。
天空基地、つまりは基地が空にあるということである。
空には普通に町がありそこに住む人もいる。
そこに住む民族には共通して背中に鳥のような翼がついている。
その起源は、神が翼を与えたという神話が残っており、どこの民族もその神を祀っている。
それがこの世界である。
「結構あいつと二人でミッションに出たりしてたが、未だによくわからねぇなぁ…。」
青年は独り言を言いながらエントランスを歩いていた。
「おい、ロイス!!」
団長の声だ。
この基地の団長は自分に向けて手招きしている。
ロイスは団長のほうへと歩いた。
「何か用か?団長。」
団長は、ロイスを見ると、クスッと笑った。
「お前、最近順調らしいな。」
「な、なんだよ、急に…。」
「いやっ、あの時と比べてずいぶん変わったなと思ってな。」
「…。」
ロイスは何とも言えなかった。
「それよりロイス、エータのことなんだが…。」
ロイスは唾を飲み込んだ。
「あまり心配かけさせるなよ。」
ロイスは体制が崩れた。
「それだけ…?」
「あぁ、それだけだ。それよりロイス、今から何する気だ?」
「何するって…暇だから散歩でもしようかと思ってたところだが…。」
団長はロイスの話を聞くと考え込んだ。
「う〜ん、ロイス達2人に頼みたい仕事があるのだがなぁ…。」
その言葉を聞いたロイスは目を輝かせた。
「仕事あるのか!!是非させてくれ!!頼む!!」
団長は「それを待っていた」というかのように笑顔を見せた。
「エータを呼んでくる。じゃっ入って来る!!」
団長は「行って来い」と言った後、しばらく考え込み
「これで良かったのかな…。」と言った。
ロイスは急いで自分達の部屋に戻った。
「エータ!!仕事だ!!」
水色髪の少女、エータは本にしおりをさし込むと、立ち上がった。
「どういった仕事なんですか?」
「確か南の森林地域に現れた竜が邪魔でそこを通れなく、遠回りしないといけない人がいるらしい。」
「つまり竜退治ってことですか。」
「そういうことだ!!じゃあ行くぞ!!」
武装を終えた2人は外に出て、折りたたんでいた翼を広げ、空へと飛んでいった。
「ここが南の森林地帯だな。」
ロイスとエータは目的地に着くと、そのまま羽を閉じ、地面へと下りた。
ロイスの後ろをエータは何も言わずついて来る。
そのとき、大きな咆哮が聞こえた。
「くっ、この先だ!!行くぞっ!!」
「は、はいっ。」
2人は咆哮がおさまると、その声の元へと走って行った。
「いたぞ!!」
竜は既に飛んでいた。
おそらく2人が来るのを察知していたらしくだから吼えたらしい。
ロイスは銃槍を持ちながら
「ミッション、スタートだ!!」と言った。
続