夢の中の自分
…ここはどこなんだろう。
そう考えながらも、僕は動かなかった。
…いや、正確には「動けなかった」と言うべきなのだろうか。
目が覚めたのは、ずっと、1時間ぐらい前に遡る…
「カービィ、また明日ねー!!」
「うん、また明日!!」
僕はいつものように、友達のワドルディと遊んでいた。
でも、不思議に思ったのはその後、家に帰ったときだった。
「…? あれ…?」
いつもは家に帰ったら、グーイが迎えてくれていた。
だけど、今回は違った。
「グーイー? どこー?」
グーイはどこを探してもいない。隠れるなんてグーイらしくない。
これだけでも不思議に思ったのに、すぐに不思議なことが起きた。
お腹が空かない。
僕がお腹が空かなくなることなど無い。
しかも、少しずつ眠くなってきた。
…いつもは、お腹がすいて、全然眠いなんて思わなかった。
だけれど、今日は不思議に眠い。
僕はベットに入って、目をつぶった。
時間が経過して、今に至る。
「…ここは…?」
周りには、ただ真っ白の世界が広がっていた。
周りを見渡すのが精一杯で、動くことは出来なかった。
「…僕、ベットで寝たはずなのに…」
ただ迷うことしか出来なかった。
そのとき、カービィの目の前に黒い陰が現れた。
「あれ…? あれは… シャドー…?」
一瞬カービィは自分の陰、シャドーのことだと思った。
しかし、その考えは一瞬で消え去った。
「え…!? あれは… 僕…!?」
なんと、黒い陰は少しずつカービィの形、色を持っていった。
カービィ本人も、「自分」だと思うほどの。
【カービィ。】
「…!? 君は…!?」
陰のカービィがカービィを呼んだ。
【ココがどこだかわからない…?】
「…」
【ココはカービィの夢の中。
つまり、カービィは今、夢の中にいるんだよ。】
「夢の… 中…」
【そう。 …そして、僕が君。
つまり、夢のカービィ。】
「夢のカービィ…!?」
陰のカービィは自分を「夢のカービィ」だと名乗った。
【もう一人の自分…
そう言ったらわかるかな?】
「もう一人の僕…!?」
【そう。僕は君、君は僕。
僕は夢の中で、君は現実の世界で過ごしてきた。】
そう言い、夢のカービィはカービィに近づいて来た。
【僕はずっと一人で、君の夢の中に居た。
夢の中に居る、『物』として。】
「ずっと… 一人で…」
【…でも、僕はもう『終わり』なんだ。】
「え…!?」
【この夢は、壊れ始めている。
君の周りで起きた不思議な事、それが『夢』の齎した影 響なんだ。】
「あの不思議な事が…『夢』の影響…!?」
【そうだよ。
ただ、君にこの事を伝えられてよかった。
大丈夫、新しい『夢』はちゃんと君の元に来るから。
君の周りで起きた、不思議なことはもう起きなくなる よ。だから、安心していいよ。】
「じゃあ、君は…」
【もうすぐ消えるよ。
この『夢』自体が僕だから…
この『夢』が消えれば僕も消える、それが運命なんだ。
ずっと前に、この事は覚悟してた。
ただ、この『現実』から逃れたくて、君に何もお知らせ しなかった。
君に前から教えていれば、不思議なことは起きなかった
かも知れない。
ただ、誤りたかった。】
「……」
【おっと、もう時間だ。
君を元の現実に世界に戻すね。
それと同時に、僕も消える。
それが本当に残念だ…】
「そんな…!?
せっかく会えたのに…!?」
【これが運命なんだ。
君に会えて本当に良かった、有難う、カービィ…
僕の名前はウェイト、名前は違っても元は一つ、
僕のこと、出来れば忘れてほしくなかった…
でも… もう終わりなんだ…
さ よ な ら …
そ し て 、 有 難 う 、 カ ー ビ ィ …】
「ウェイト…
有難う、今までずっと、一緒に居てくれて…
でも、サヨナラは言わないよ…
きっと、また会う事が出来るから…!!」
気がつくと僕はベットの上に居た。
目の前にはグーイが居て、料理を作っていた。
お腹も空いていた。
「ウェイト、君の事は忘れない。
ずっと、永遠に…!!」
END